新しい記憶を覚えられなくなる症状(amnesia)の患者2人を使い、二つの図形のうちの特定の一方の図形を覚えるという作業を数週間繰り返した。数週間繰り返しても、記憶を形成できないので2人ともこの試験をやるのは初めてだと毎回思っていた。しかし結果は違った。数週間後に正答率は2人それぞれ95%と100%にまで上がってしまった。なので新しい記憶を覚えられないというのは一概に言えることではなく、記憶の種類によって覚えられるものと覚えられないものがあるようだ。

この研究と似たことは前から示されているね。鏡に映した絵をなぞる練習(上の画像)で、記憶障害者は練習した事実を毎回忘れていたけれど、技だけは進歩していった。その時は、技能の記憶というのは事実の記憶とは別の回路を使っているので、事実を記憶できなくても技術は新たに記憶できていた、という説明がされていた。
今回は技術の記憶よりもよっぽど事実の記憶に近いものだ。図形を覚えていたのだから。このニュースから僕が勝手に理由付けをしてみる。
僕の解釈では、覚えられた経験というのは単純な画像の情報だ。覚えられなかった経験というのは2つあって、この画像を見たという記憶と、この練習をしたという記憶だ。なので新しい記憶を覚えられるというのは、新しく入ってきた情報にタグ付けをして整理する技術なのではないだろうか。図形の情報は単純なのでタグを付けなくても繰り返し経験すれば記憶に残るだろう。画像を見たという記憶や練習したという記憶は複雑なのでタグを付けないと記憶に残らない。ま、論文を読んだわけでもないんで、かなり適当に語ってるんだけどね。
記憶なんて普段は全く意識しないけど、記憶の種類によって事象に差があるのってすごく不思議だよ。
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過去に書いた関連する記事:
「加齢と記憶」ラーズ・バックマン(2001年)
記憶の種類とその衰え方の差について。
海馬を切除しててんかんも直って、学習もできる
この辺は僕が読んでいた教科書の何年も先を行っている。脳の理解の進み具合って速いんだなぁ。
19年間の昏睡から目覚め、話し始める
ここにも新しいことを覚えられない患者が一人。
元のニュース:Habit Leads To Learning, New VA/UCSD Study Shows
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