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変化には気付くけれども何が変わったかは指摘できない
Airplane.jpg

視界の中で例えば信号の色が変わったとする。何かが変わった、ということには気付くのだが、視界の中の何が変わったかを指摘するのは難しい作業らしい。

「変化に気付かない現象」(Change Blindness)という現象がある。間違い探しのような2枚のほとんど同じ画像を交互に何回も見せられても、2枚の画像の何が違うのかを探すのには何十秒も掛かってしまう現象だ。

この研究者は、この現象を研究して、車の運転手が信号の変化などをより受け止めやすいように考えていたらしい。しかし、その実験の中で奇妙な別の現象を発見したという。

その奇妙なこととは、2枚の画像に違いがある、と分かっても、その違いがどこなのかを指摘するのには更に数秒間を要したという。つまり、2枚の画像の異なる点を意識的に理解する数秒前に、何かが違うということだけは理解できるらしい。

この研究者が取った実験方法は、2枚の画像を交互に見せ、違いがあると感じた時点でスペース・キーを1回押す。ちなみに2枚の画像が違う可能性は50%だった。残りの50%は2枚とも同じ画像なので、その場合はスペース・キーを押さずにじっと待つ。違いがあると感じた後に、画像のどの部分が2枚の画像で違うのかが分かったらスペース・キーをもう一度押す。

被験者の7割がたは1回目と2回目のキーを押すタイミングがほぼ同じだったことから、彼らは違いを発見すると同時にどこが違うのかも発見していたらしい。しかし、残りの3割の人は、その差が5秒ほどあった。これは2つの課題に違いがあることを示している。

まぁ、試してみよう。
まずは「変化に気付かない現象」を経験してみる。この実験ページに行き、2枚の画像が交互に表示されるので、違いを探してみる。条件が難しいほど、気付かない可能性が高いので設定を難しくしてみよう。画像を右クリックして「gap」を「250 msec gap」に。飛行機の画像で違いを見つけたら、右クリックで他の画像も試してみよう。

一度、違いに気付くとその違いの大きさになんでさっきまで気付かなかったのか馬鹿らしくなる。それが、この実験のポイントで、注意を払わない点というのは、人は本当に気付かないものなんだな。

次に、違いを感じてから違いを指摘するまでの時間的な隔たりを意識してみる。僕にとってはこの画像(ドル札)が最も顕著だった。何かが変わっているというのは分かるんだけど、何が変わっているのかを分かるには更に20秒くらい掛かってしまったよ。

この実験は日常ではまず起こらない現象なだけに、日常の生活に直接的に応用することは難しいだろう。でも人の認知能力を測るのにはとても応用性があって面白い分野だと思う。注意能力も測れるし、視覚的な短期記憶の容量も測れるかもしれない。この分野はまた追って別の研究を紹介するよ。

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元のニュース:University of British Columbia: Mapping the Sixth Sense: Psychology's Ron Rensink discovers visual sensing without seeing.

ニュースのタイトルになっている「第6感」という言い方は無いよな。明らかに視覚(5感に含まれる)からの情報じゃん。
更に英語の「without seeing」という表現も日本人には分からないよな。英和辞典によると「seeは映像を受身的に目で捉えることと、意図的に認知することの両義がある」(小学館プログレッシプ英和中辞典)とある。この第2義の意味なんだろうけれど、こんな用法は今まで知らなかったよ。だから英語話者にとってはこれは第6感になるのかな?

検索キーワード:心理学、認知心理学、attention, inhibition, vision, cognition, 知覚心理学、
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コメント
この記事へのコメント
いいですねー、これ、すごくおもしろいです。雑誌の間違い探しパズルをやるときにも、ときたまこの感覚を味わえますね。
僕は食卓の写真がいちばん顕著でした。なにかが違うのは分かるけど指摘できない。違和感という言葉がこの上なくぴったりくる感覚でした。
人間が進化するうえで、こういう変化に特に敏感である必要はなかった、ということなんですかねえ。
2005/10/26(水) 00:50:29 | URL | riverplus #wr80fq92[ 編集]
進化で身に付かなかった技術
僕もディナーにはてこずりました。こういう単純に楽しめる心理学の実験は大好きです。しかもそれが人間の心の働きを知るのに役立つというのには、良くできた実験だなぁと思います。
このチェンジ・ブラインドネスは現実の世界にはまず起こらないことなので、現実に人間に起こす影響とか進化の影響というのは関連付けが難しそうな気がします。それでも進化を語ってみると、これは高度な技術過ぎてどんな生物にも身に付かなかった技術なんだと思います。
例えば、狩をする時に草原を右に見渡していく。そして今度は左に視線を戻していく。その間にウサギが顔を出していても、動く瞬間を見ない限り、その変化には気付かない。ここで変化に気付くには膨大な量の映像の記憶を比較できるだけの能力が必要になります。生物の中で最も記憶が良い人間ですらできないことなので、他の生物でもできる種はいないでしょう。
この実験には、人間の限界を解明するのに役立つという点ですごく心理学らしい研究だと思いました。
2005/10/28(金) 12:50:21 | URL | 綺麗山 #-[ 編集]
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