
ビデオゲームをすることにより、手術の腕前が上がるかもしれないという実験報告。
腹腔鏡手術というのがあって、これは患者の腹に穴を開けてカメラと手術機器を腹の中に入れて、手術はカメラ映像を見ながら行う(上の画像)。つまりこの手術はテレビゲームに似通っている。
テレビゲームとこの手術の類似点を見つけたこの研究者は、テレビゲームをする事が手術の腕前を上げるのではないかと考えた。10人の大学生を集めた。彼らは腹腔鏡手術の経験は無く、テレビゲームの経験も少ない。5人ずつ2つの群であるAとBに分ける。2つの群とも腹腔鏡擬似手術(シミュレーター)を一週間の間隔を開けて2回行う。ただ一つの違いは群Bだけはその一週間の間、一日1時間テレビゲームをする。ゲームはジェームス・ボンド007:ゴールデン・アイだ。銃を向けたりする仕草は腹腔鏡手術に近いとも言えるね?

結果、ゲームをした群Bの方が2回目の手術でより進歩が見られた。更に、群Bの中でもゲームでうまくプレーした者の方が2回目の手術でもよりうまく手術ができ、その相関指数rは0.72と高かった。
ただし引き続き行われた実験で医学研修生を使った実験では必ずしもゲームが手術技術の向上には繋がらなかった。この研究者は今後、ビデオゲームの種類の違いで手術の腕前の上達に違いが出るかを見ていくという。
心理学って、こうやって人の訓練とかにも役立ってるんだよな。で、結果はある程度当然かなとも思うよ。どちらも目で見たものを手で表現するんだから似た作業だし。僕は基本的にはテレビゲームは人間を悪い方向に導く影響の方が強いと思っているけれど、こういう役立つ方法もあることをゲーム業界の人はもっと宣伝すればゲームへの非難が少なくて済むかもね。
あと患者との人付き合いとかの関係とかも興味あるな。手術担当医に「任せてください。ビデオゲームで鍛えてますから。」なんて言われたら固まるよ。
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元の論文:Sara L. Waxberg , Steven D. Schwaitzberg *, Caroline G.L. Cao. (2005) EFFECTS OF VIDEOGAME EXPERIENCE ON LAPAROSCOPIC SKILL ACQUISITION. HFES.
この論文は書き慣れてない人が書いているらしく、ところどころに幼稚な英語が滲み出ている(といってもネイティブの英語だと思うが)。しかしそれが逆に文を平易にして読みやすくしている。英語で論文を書く身としては、こういう例にも学ぶことがあるな、と思ったよ。
検索キーワード:心理学、訓練移行、認知心理学、hand-eye coordination, 視覚と手の協調運動、 training transfer,
画像の引用元:http://www.gfmer.ch/Medical_education_En/project_laparoscopy.htm
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