
遺伝子は人が生きていく中で変わっていっている。生まれた時のままではない。そしてこの変化には個人差がある。例え一卵性双生児同士であったとしても。
一卵性の双子40組を調べた。3歳から74歳までの双子同士で比べると、年齢が低いほどその組のゲノム(遺伝子情報)が同じで、年齢が高くなるほどその双子の組の中でのゲノムの違いが大きかった。更にこの研究者は生活習慣(喫煙、飲酒、食生活、運動など)のアンケートも同時に行っており、どの生活習慣が違いを生むのかを調べているらしい。でもニュースには詳しいことが書いてない。
この違いは、生まれた後でのゲノムの違いなので「後成的遺伝」、またはエピ・ゲノムとかエピ・ジェネティックスと呼ばれる。この変化は、DNAの塩基配列は変化せずに、遺伝子情報だけが変化するという考え方だ。
他の研究者で、もっと過激な考え方をしている人もいる。生活環境や行動が与える影響はもっと大きいとする考え方で、生物の行動はゲノムだけではなくDNA配列までも変えてしまう、という案だ。この論文はそのうちに紹介。
どちらにしても最近の説では、遺伝子とその生物の行動は双方向で影響を与えてあっているというのが一般的だ。この分野は心理学の中でも急成長している分野で、遺伝子だけが人の性格を決めるのではなく、特定の環境や行動と遺伝子が相互作用して人の性格を決める、などの研究がされている。
あとこのニュースでは一卵性双生児の二人は生まれた時は同じ遺伝子を持っている、と書いているけれど、双子二人の後成的遺伝の違いは受精後すぐに始まるという研究もある。
ネイチャー(生まれ持った性質)とナーチャー(育ち)の両方が人の育成に関わってくるというのは大多数の研究者の一致した意見であった。しかしそれは2つの独立した要因だと考えられてきていた。今回のニュースをこの言葉に当てはめると、育ちは生まれ持った性質をも変える可能性があるというすごく面白いニュースだ。今後のこの分野のニュースに注目したいね。
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素のニュース:Ohio State Unviersity: IDENTICAL TWINS MAY HAVE MORE DIFFERENCES THAN MEET THE EYE
元の論文(PDF)
検索キーワード:心理学 生物心理学 神経科学 神経心理学 後成的遺伝学 エピゲノム エピジェネティックス epigenetics epigenome neuroscience neuropsychology biological psychology 表現型 遺伝子型 Christoph Plass, Ohio State University, Manel Esteller, methylation メチル化、Epigenetic differences arise during the lifetime
of monozygotic twins, www.pnas.orgcgidoi10.1073pnas.0500398102
それと遺伝子の分野にはとても興味があります。小枝さんのブログを小マメにチェックさせてもらいます。
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