
抗うつ剤(antidepressant)は服用し始めてから2週間ほどしないと効果が現れ始めない。なぜこんなに日数が掛かるのかは未だメカニズムが解明されておらず、不明だ。しかし今回の研究を見ると、それは軸索などの神経組織が形成される日数なのかもしれない。
抗うつ剤で有名なものにはプロザック(prozac)、ゾロフト(Zoloft)、パクシル(paxil)などがある。しかしこれらの薬がなぜ効くのかは分かっていない。効くから使っている、というのが現状だ。今回の研究はそのメカニズムの解明に一歩迫るものだ。
不可解なことの一つに、効用の表れる時間差というのがある。抗うつ剤は一般に、セロトニン(serotonin)などの神経伝達物質(neurotransmitter)の数を増減することで鬱の症状を制御すると言われてきていた。しかし薬を服用し始めれば神経伝達物質は即日で変化が見られる。なので鬱の症状も即日で制御できそうなものなのに実際は鬱を抑えるのには2週間から4週間を要する。
今回ラットの脳の発達を観察したところ、抗うつ剤が前頭葉(frontal lobe)の軸索(axon)の発達に関わっていたようだ。なので抗うつ剤の効用が最低でも数週間を必要とするのは、薬が軸索などの形成を促し、その形成に数週間掛かっているのかもしれない、というのがこのニュースの内容。
面白いニュースだ。つい2週間ほど前に院生の同僚とこの話をしたばかり。プロザックの悪い噂(これはそのうちに改めて書きます)とか、なんで効果が数日で現れないのか、とか。神経科学は日進月歩で、ついこの前まで疑問だったことが今日にはもう解明への道を開いちゃってるんだもんな。神経科学ってすごいなぁ。
元のニュース:Johns Hopkins Medicine: POPULAR ANTIDEPRESSANTS BOOST BRAIN GROWTH, HOPKINS SCIENTISTS REPORT
検索キーワード:心理学、神経科学、認知心理学、クリニカル心理学、臨床心理学、アンチ・ディプレッサント、ジョンズ・ホプキンズ、Vassilis Koliatsos,
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)