
話を聞く時、男は右半球のみを使い、女は両半球とも使っていた。
男女の被験者それぞれ20人を使い、小説(ジョン・グリシャムのザ・パートナー)の朗読を聞いている時の脳の活動の様子をfMRI(機能的磁気共鳴映像法)で調べた。その結果、過半数の男性は専ら側頭葉(temporal lobe)の左半分のみを使っていた。この部分は言語理解と関わりの強い部分だ。これに対し、大多数の女性は側頭葉の右も左も使っていた。側頭葉の右は言語以外の音に関する部位だ。
この研究者は、これは男女差を表しているが、どちらが優れているかを示すものではない、と語っている。
ふーん、論文は読んでないけどニュースを読む限りでは男女差がはっきり現れているみたいだな。男は言語脳を専ら使っていたということは、言葉の意味だけを理解しようとしているのかな。女は他の音分析の部分の脳も使っていたということは、言葉の意味の他にも声の調子とか話者の感情とかいろんな付随情報も理解しようとしているのかな。
将来、こういった研究が男女の会話を助けるものになると良いね。例えば上の僕の解釈が本当だとしたら、男は皮肉とかを理解せずに言葉のままに受け止める傾向がある、その事実を女も理解して会話の方法を変えてみる、とかね。ていうか、研究でまだ証明されていなくても、男は皮肉とかを理解するのが大変なんだよ。その辺を女は考えてくれ。これはアメリカ女も日本女も。
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元のニュース:インディアナ大学:NEWS FLASH: Men Do Hear -- But Differently Than Women, Brain Images Show (2000年)
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追記(2006年1月29日)
男女差について、もうひとつ別の記事を書こうと思ってたんだけど、書く暇がなさそうなので、自分用のメモに記事のリンクを貼っておきます。
内容:男女差を調べた項目は、記憶(memory tasks)、言語(verbal tasks)、視覚空間(visual spatial tasks)、動作(motor tasks)。これをfMRIにより、同じ課題をするときの男女の違いを調べた。
元のニュース:Men and women differ in brain use during same tasks
検索キーワード:心理学、男女差、言語認知、言語理解、John Grisham, The partner, 機能的磁気共鳴画像法、

カフェインを摂取すると短期記憶の成績が良く、反応速度が早かったというニュース。
15人の健康な成人の被験者を使い、カフェインの作用を調べた。被験者はカフェイン100mg(コーヒー2杯分)かプラシーボかを飲んだ。ただしどちらを飲んでいるのかは知らなかった。その前にはカフェインを12時間は摂取せず、ニコチンは4時間摂取しなかった。
記憶テスト(短期記憶)のやり方はこうだ。アルファベットが一つずつ順番に見せられる。そして時折、2つ前のアルファベットはこれですか?という質問にイエスかノーのキーを押して答える。例えばアルファベットが「E,K,B,L」と示された時に2つ前が「K」かと聞かれれば答えはイエスとなる。
カフェインを摂取した群は記憶テストの成績が良く、反応時間も早かった。
更にfMRIにより、脳の活動を調べた。するとカフェインを摂取した群は前帯状領域(anterior cingulate)という脳の注意(attention)を制御する部分が活性化していた。プラシーボの群には変化が見られなかった。
カフェインは世界で最も摂取されている興奮物(stimulant)で、世界平均で76mg(コーヒー1.5杯)、アメリカでは238mg(コーヒー4.5杯)が一日に飲まれている。
ということなんですが。どうですか、コーヒー。効果は確かにあるみたい。でも僕は薬物を異常に警戒する性質なんでコーヒーは滅多に飲みません。年に10杯くらいかな。ビタミン剤も違法ドラッグも煙草もやらないよ。なんでも食うし、食う量は人の3倍なんでビタミン剤はもともと要らないけどね。唯一、摂取するのはアルコールだけだな。これは毎週末には欠かしません。
カフェインの短期的な利点があるのは認めるけど、長期的には害は無いんだろうか。それと短期的な効果も、摂取後の何分から何分まで続くんだろう。その辺の文献を読みたいなぁ。
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関連する過去の記事:
【コーヒーの影響1】覚醒作用(しんりの手)
元のニュース:Coffee Jump-starts Short-term Memory
検索キーワード:心理学、放射線診断部、radiology, psychology, physiology, 生理学、興奮剤、刺激物、興奮誘発剤、覚醒剤、タバコ、たばこ、マリファナ、marijuana, 大麻、

以前から創造性(creativity)と精神病気質(psychopathology)は関係があると言われてきた。実際に多くの芸術の分野で、その関連性が調べられてきていて、創造性と精神病の関係が示されてきている。今回の論文では、ジャズ音楽家40人を調べた結果でもその関連性が示されたという。
ジャズ辞典(the encyclopaedia of jazz, by Feather 1960)などを使い1945年から1960年に活躍したジャズ音楽家40人を調べた。調べた時点(2003年)で既にこの40人(下表)はすべて死去しており、調べる方法としては、彼らについての叙伝、伝記を参考にした。その結果、一般人に比べて、ジャズ音楽家は精神病気質が多く、刺激追求性の性格(sensation seeking)も多かった。
統合失調症(schizophrenia)
40人中の3人が統合失調症だった。バド・パウエルは統合失調症か統合失調性感情障害(schizoaffective disorder)だったと見られる。彼はありもしない恐怖(誇大妄想)に怯え、幻聴を聞き、奇妙な表情を作ったりし、てんかんの症状があった。
セロニアス・モンクは数日間眠らずに歩き回ったり、知人の顔を認識できなかったりした。これは中毒性精神錯乱(substance intoxication delirium)の症状だ。
マイルス・デイビスは誇大妄想の恐怖に怯え、幻聴があった。
気分障害(mood disorders)
40人中の11人が気分障害だった。ポール・デズモンドとビル・エバンスは気分変調性障害(dysthymic disorder)だった。彼らは自尊心が病的に低く(low self-esteem)、悲観的な展望を抱いていた。
他に気分障害があったと見られるのはマイルス・デービス、ギル・エバンス、スタン・ゲッツ、チャールズ・ミングス、ジェリー・マリガン、チャーリー・パーカー、アート・ペッパー、オスカーペティフォード、フランク・ロソリーノ。
不安障害(anxiety disorders)
アート・ペッパーとジョン・コルトレーンは不安障害があった。アート・ペッパーは皿洗いを何度も何度も繰り返し(obsessive compulsive)、血を病的に怖がった。ジョーン・コルトレーンは強迫神経症(obsessive compulsive)の症状があり、病的に練習をし続け、甘いものを病的に食べまくり、完璧なマウスピースを病的に求め続けた。
薬物
40人中の21人がヘロインにより精神的な異常性が見られ、11人はアルコール問題があり、3人(マイルス・デービス、アート・ペッパー、ビル・エバンス)はコカイン問題があった。
刺激追求(Sensation seeking)
40人中の9人は刺激追及の性格が見られた(チェット・ベイカー、チャーリー・パーカー、アート・ペッパー、スタン・ゲッツ、サージ・チャロフ、デクスター・ゴードン、ポール・チャンパーズ、フィリー・ジョー・ジョーンズ、スコット・ラ・ファロ)。刺激追求の傾向はDSM(精神疾患の分類と診断の手引書)のクラスターBパーソナリティー障害(ドラマティック・タイプ人格障害)とだぶる。刺激追求はつまり「抑制からの開放」(disinhibition)を示す。彼らはパーティー好きで、社交的な飲みが好きで、複数のパートナーとセックスし、新しく(しばしば違法な)経験や薬物が好きだ。
具体的に言えば、複数の薬物を混ぜて使用したり、ウイスキーなどの強いアルコールをボトル数本開けたり、何人もの女と短期間に寝まくったり、時に同時に複数の女と寝たり、速いスポーツ・カーに乗ったりする。
ふーん、確かに一般人に比べると、この40人のジャズ軍団では精神病や刺激追求傾向の人の発生率が高いな。ジャズのように創造性の高い仕事の人たちにこういう精神病的なものが見られるのは何かの必然的な関連があるんだろうね。
それとこの論文の結論はあくまでも特定の群によく見られる特定の症例、というだけ。原因と結果を示してはいない。つまり精神的にちょっとおかしい人がよいジャズ音楽家になるとは限らない。そして逆でもない。ジャズ音楽家だからといって精神的におかしいという訳でもない。この辺の原因と結果(cause and relation, cause and effect)は調べるのはとても難しい。それでもいくつか試みている論文があるんで、それはそのうちに紹介したい。
いや、しかしこの論文は、ジャズの一番おいしい時期をさらっとなぞっていて読み物として面白いね。だれかロック・ギタリストとかでもやってくれ。
僕はジャズは趣味程度に聴くだけなんで間違いなどあったらご指摘ください。
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関連する過去の記事:
ブライアン・ウィルソン(ザ・ビーチ・ボーイズ)の精神病
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今回の研究に使われたジャズ・ミュージシャン、40人
トランペット
Dizzy gillespie, Fats navarro, Clifford Brown,
Miles Davis (マイルス・デイビス Kind of Blue)
テナー・サックス
Wardell Gray,
ベース
Ray Brown, Oscar Pettiford, Charles Mingus, Paul Chambers, Scott la Faro,
トロンボーン
J.J. Johnson, Frank Rosolino, Bill Harris,
バリトン・サックス
Serge Chaloff, Gerry Mulligan, Pepper Adams,
ドラム
Kenny Clarke, Art Blakey, Philly Joe Jones, Shelly Manne,
アルト・サックス
Charlie Parker 映画「バード」
Art Pepper, Paul Desmond, Eric Dolphy,
アルト/テナー・サックス
sonny Stitt
ピアノ
Bud Powell バド・パウエルThe Genius of Bud Powell, Vol. 1 Thelonious Monk, Erroll Garner, Lennie Tristano,
ギター
Charlie Christian,
ビブラフォン
Milt Jackson
アレンジャー
John Lewis, Gil Evans
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元の論文:Geoffrey I. Wills. Forty lives in the bebop business: mental health in a group of eminent jazz musicians. British jouranl of psychiatry. 2003. v.183. 255-259.
検索キーワード:心理学、臨床心理学、病因、sensation seeking, personality psychology, clinical psychology,

アメリカではまだ人種差別が根強く残っている。今回、500人の黒人(アフリカ系アメリカ人)にアンケートをとったところ、34%は「白人は黒人の数を減らしたいと思っている」にYesと答え、14%は「政府はコンドームの使用を勧めることで黒人の数を抑えようとしている」と思っている、と答えた。
日本人の僕から観ると、そんなのはかなり現実から逸脱した妄想だと思ってしまうんだけれど、根拠があるらしい。この記事によると、政府による黒人の断種政策は1970年代まで続いたそうだ。つい最近じゃないか。アメリカも怖い国だな。
うーん、これは難しい問題だ。アメリカに住む者として、黒人が多い地域は犯罪が多い、というのは生活から来る実感だ。なのでアンケートの結果は実情を示しているとも言えるだろう。かと言って、黒人を減らすことが犯罪を減らしたり、世の中を平和にするとは思わない。それとも、近年の黒人の白人に対する比率が増えていることに対しての危惧を表しているアンケート結果なのかな。
まぁなんにしろ、こういう入り乱れた社会感情の誤解(または理解の仕方)がコンドームの使用状況にも影響を与えて、それがエイズなどの蔓延に繋がるのかと思うと、こういう問題に取り組む社会心理学とかの今後の課題は大きいなぁと感じるよ。
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元の記事の一つ:Conspiracy Theories Affect Birth Control Use by Black Men and Women
検索キーワード:社会心理学、偏見、人種差別、アフリカン・アメリカン、african american, race, racism, bias, prejudice, Sheryl Thorburn, Oregon State University, Laura m. Bogart, Rand corporation, 避妊、政府の陰謀、

統合失調症の症状を抑えるのに現在最も使われている手段は薬だ。1955年以前は電気ショック療法しかなかったが、その後、いろいろな薬が開発されている。
1990年代の初頭に開発された新薬「ジプレキサ Zyprexa」、「セロクエル Seroquel」などが登場する。新薬は値段が以前の統合失調症の薬に比べて10倍と高価ながら、副作用が少ないという売れこみのために人気がある。
しかし薬の効果というのは薬を開発した会社の実験によるもののみが根拠で、当然それは公平性に欠ける。そこでアメリカ政府は約43億円($43M)を出資し、これらの薬を含む新薬の試験をした。
5種類の薬を試験した。4つは新薬で、1つは旧薬(トリラフォン, Trilafon)。1460人の慢性的な患者を18ヶ月に渡り調査した。5つの薬はどれも同じくらい効果的だった。適度な処方量の場合は旧薬も新薬も同じ(症状を低減する)効果を発揮した。
ただし副作用では新薬と旧薬で差があった。旧薬では、震え、筋肉の硬化や痙攣など。新薬ではこれらの症状は目立たないものの、体重の増加、血糖値の上昇、コレステロールの上昇などが見られた。
そして5つの薬とも(新薬も旧薬も)患者を満足させなかった。75%の患者は治療を止めてしまった。その理由は症状が改善されない、または副作用のため。
ふーん、新薬はそれなりに旧薬よりは副作用が許容されやすいものになってるんだな。これは論文を読んで数値の差をはっきりと比べてみたいね。ちなみに引用元はこの雑誌。Scientific American Mind:
一部をネットで読める。Schizophrenia Drugs Questioned
ところで薬の効果を開発した会社が試験するというのは確かに信頼できないよな。そのへんはこの本に詳しく書いてある。この本はそのうちに詳しく紹介したい。
- Elliot S., Ph.D. Valenstein
- Blaming the Brain: The Truth About Drugs and Mental Health
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検索キーワード:心理学、臨床心理、clinical psychology, Donald F Klein, Columbia university, zyprexa, seroquel, 精神分裂病、schizophrenia drugs, Jeffrey A Lieberman, prozac,
今年は、昨年に築いたものを基盤として交友関係を更に深くしていければ良いな、と思っています。
折角の機会なんで、新年の抱負なんかを書いておきます。今年の第一の目標は論文を4つ書くこと。そしてその全てが科学雑誌に出版されますように。その為にはブログの長期休載も厭わないよ(この点は既に問題なしだな)。
あとは小さな目標として、今年は日本に遊びに行きたいなぁ。まぁ、今年もちんたらとやっていきますので応援よろしくお願いします。