短期記憶のこの限界のために、人は無関係の物事を無視する能力が必要になる。逆に言えば、関係ある情報を選択する能力(注意を向ける対象を見極める能力)だ。自分にとって大事な情報を選択するというこの能力には個人差がある。そしてこの能力は、記憶の能力の中でも特定のものの容量によってかなり予測できた、というのがこの論文の内容。
これは是非とも読んでみたい論文。今は学期末で忙しくて読む時間が無いけど。
学校の成績が良いとか悪いとか言うのは、何に集中して聞くべきかが分かる能力なのかもしれない。この研究を元に将来は、然るべき物に注意を向けやすいように教育を変えていくことで人がより学びやすい環境なんてできると嬉しいな。
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関連する本:

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元のニュース:
Nature 438, 500-503 (24 November 2005) | doi:10.1038/nature04171Neural measures reveal individual differences in controlling access to working memory
Edward K. Vogel, Andrew W. McCollough and Maro G. Machizawa
3人目の研究者の名前はこの分野で偶に見るけど、日本の人なんだな。
彼のウェブ:
Maro G. Machizawa
雑誌ネイチャーに論文が掲載されるなんてすごい実績。臨床心理学から認知心理学に移った人なのかな。今後も追ってチェックさせてもらいます。
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過去の関連する記事;
心理学の実験。集中力を測る。(しんりの手)
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検索キーワード:インパクト・ファクター、impact factor, 認知心理学、作動記憶、working memory, attention, inattention, inhibition, 教育心理学、知覚心理学、注意、注意抑制、

子供にテレビを見せることの悪影響は今までもニュースを紹介してきているけれど、3歳を過ぎるとテレビは好影響を与えるかもしれない。
この研究者は約2000人の子供を数年に渡り追跡調査し、テレビを見ることが6歳時の能力にどう影響するかを調べた。3歳より前の子供では、テレビを見ることと6歳のときの認知能力の低下の関係が見られた。反対に、3歳から5歳の子では、テレビを見ることと6歳の時の認知能力の発達の関係が見られた。特に3歳から5歳の子の認知能力でテレビを見ることとの関連が見られたのは、読書認識(reading recognition, これは文を読んだ時に以前に見たかを認識できることかな)と短期記憶(short-term memory)だった。算数や読解力に差は見られなかった。
これは納得できるね。言葉を一番最初に覚える時には少数の人から集中して教わった方が覚えやすい。なので3歳くらいまでは特に両親から集中的に言葉を聞かされた方が言葉を早く覚えるのだろう。
似たようなことで、バイリンガルというか父親と母親で別の言葉を教えると子供は言葉を話し始めるのが遅いという。これは刺激が多様すぎて覚えるのに手間取ってしまうのだろう。
言語の基礎を3歳くらいで覚えてしまえば、あとは刺激(言葉)にさらされる時間が多いほど覚えていくのだろう。
学習には3歳以降のテレビの視聴は良いのかもしれないけれど、それでもテレビの弊害は多数報告されているので、僕個人としては3歳を過ぎても子供にテレビは見せたくない。下記に関連記事のリンクを張ったけれど、テレビを見るほど、性格や体に悪影響があると言われている:いじめっ子になりやすい、近視になりやすい、肥満になりやすい、成人病になりやすい、など。
子供って接する人やテレビにどんどん影響されていくんだよね。それを考えると、僕に子供がいたら僕だけに影響されて狭い考え方になってしまったりするのは怖いな。かと言ってテレビを野放しに見せるのも嫌だし。子供にまねして欲しいような僕の親しい友人と近所に住むっていうのが僕の今の理想かな。今、そんな友人が何人いるか真剣に数えちゃったよ。
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関連する過去の記事:
この研究者(Frederick Zimmerman)のほかの研究の紹介。テレビを見るといじめっ子に。(しんりの手)
近視は生活習慣から(しんりの手)
テレビは年間2万人を殺す-ドイツ(しんりの手)
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元のニュース:
Children’s Television Viewing and Cognitive Outcomes
検索キーワード:心理学、発達心理学、児童心理学、性格心理学、認知心理学、知覚心理学、社会心理学、教育心理学、

瞑想している人は灰色の脳細胞(灰白質、grey matter)が多かったという。
瞑想はいままで、脳の休め方を変えると思われてきていたが、活動時の脳にも影響を与えているようだ。瞑想は脳皮質を厚くするようなので思考回路に良い影響を与えると思われる。
これは仏教の瞑想を毎日40分やる人20人を一般人と比べた結果。彼らは普通に仕事も家庭もあるが、長い年月の瞑想経験がある。僧侶ではない。
MRI(磁気共鳴影像法)の結果、彼らの脳皮質のうち、知覚、聴覚、視覚を司る部分が厚かった。特に右半球に違いが見られた。また、瞑想は加齢による脳皮質の減少を遅くする可能性もあるという。
へー、面白いね。脳の長年の使い方によって脳の構成が変わるなんて。いままでも学歴が高いと脳の衰えが遅いとかは言われてきたけれど、瞑想でも違いが出るなんて興味深いね。
ちょっと疑わしいのは、瞑想を日課にする人を使った研究というのは混同要素が多いということ。彼らは瞑想するだけでなく、食生活も節制しているし、喫煙もしなさそうだしな。僧、僧侶(monk)、女僧(nun)の研究は心理学では妥当性に欠けるというのが一般的な見方だ。今回は僧ではないのでもう少し一般的な人の結果に近いのかもしれないけれど、それでも同じ疑問にさらされるだろう。でも実際の論文を読んでみたくなるニュースだな。
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元のニュース:Meditation associated with increased grey matter in the brain
関連する過去の記事:
男は灰色、女は白色の脳細胞が多い(しんりの手アメブロ)

精子の提供者が2000年以降減っている。これは法律が変わって、精子提供者が匿名ではなくなってしまったせいだという。
精子提供者の横顔が書かれている。あれ?日本語でも横顔って言うよね?英語のprofileにはプロフィールの他に横顔って意味もあるんだけど、これじゃ英語の直訳じゃん。
88%は36歳以下
過半数は恋人のいない学生
85%は未婚で4分の3は子無し。
3分の1は提供センターに来る途中で引き返してしまう。
3分の2は拒否される。うち85%は精子の質が合格点に達しないため。
こういった厳密な関門をくぐり、精子提供者となれるのはたったの4%以下だ。
検査厳しいんだな。こういう低い確率を見ると闘志がメラメラと湧いてくるよ。金にも困っているし条件はばっちり。今度試してみようかな。僕は精子提供には賛成。僕の遺伝子を継ぐものがどこかで生きてくれるなんて素晴らしい案だ。でも生物学的な親になるよりも育ての部分にも関わりたいから普通に家庭を持ちたいね。
それにしてもこの統計は驚き。既婚でも精子を提供すんのかよ。金のためか?そんなことしてないで嫁さんを孕ましておけよ。あと、大学生は貧乏だから精子で金を手に入れるのは常套。僕の友達もやっている。
傾向としては、精子提供者の数は激減している。今回アンケートに答えた1994年から2003年に精子を提供した1100人の中で、1994年に提供したのは175人だったのに2003年に提供したのは25人にとどまった。あーそうなの。困ったら僕にも声を掛けてくれていいよ。身元の特定も気にしないよ。でも養育費は払えないけどね。
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元のニュース:Sperm donor crisis in the UK
関連するブログ:
15歳、匿名精子提供者の「父」を探し出す(旬のイギリスさん)
もともと匿名性なんて怪しいもんなんだな。今回の匿名性を取っ払う方は現実に即しているとも言えるか。

人間の知覚というのはいい加減なもんで絶対的な量を比べるのには向いていない。人間はどちらかというと相対的な比較を常にしている。
例えば200グラムと250グラムのアイスクリームがあれば250グラムの方が多いというのは明瞭だ。しかしこれが見せ方によって、人の知覚を狂わせてしまう。一方は150グラム用のコーンから溢れ出ている200グラムのアイスクリーム。もう一方は300グラム用のコーンに余裕を持って収まっている250グラムのアイスクリーム。
こういう見せ方をすると、人間は溢れ出ているほうが多いと知覚してしまう。まぁ2者を並べて見せればばれてしまうらしいけれど。
この心理的な錯覚は飲食店とかでも使っている店が多いよね。大きい皿によそうよりも、普通の皿に溢れてよそわれている方が客としては幸せになる。そういや昔は日吉駅の近くの超大盛りカレー(500円)をよく食いに行ったな。量は僕としては大したこと無いんだけど、あのビジュアルをみると幸せになるんだよ。溢れそう(というか実際にこぼれている)ルウと、その下にうずたかく詰まっているご飯。あー書いているだけで腹減ってきた。
ビジネスなどに応用の広い心理学だ。あとニュースには詳しいことは書いていないけれど、実際の論文の方にはサラリーと満足度の関係なんかも書かれている。
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元のニュース:More is not always better
検索キーワード:心理学、知覚心理学、認知心理学、decision making, Christopher hsee, business, 商業心理学、ビジネス心理学、意思決定、東急東横線、

睡眠時間が8時間以下の児童は、教師から見て授業に集中していないと評価された。
6歳から12歳の児童74人を対象に、睡眠時間と授業での態度の関係が調べられた。児童の授業態度は教師によって評価され、そのとき教師は児童の睡眠時間を知らなかった。つまりブラインド・テスト形式で行われた。
この研究の間、それぞれの児童は3週間の異なった睡眠時間を経験した(多分、順不同で)。睡眠不足の一週間(1年生,2年生は8時間以下、3年生以上は6時間半以下)、睡眠がちょうど良い長さの一週間、睡眠過多の一週間(10時間以上)。
その結果、睡眠時間が8時間以下の児童は概して学習能力の低下が見られた。問題があった点は、習ったことを思い出すこと、新しいことを覚える作業、集中力を要する作業などだった。
概略は面白い研究だね。確かに睡眠時間が減ると児童の学習能力は落ちると思う。この分野の研究にありがちな相関関係だけの研究で終わっていないところが良い。相関関係だけだと、睡眠時間が少ないから学習能力が低いのか、学習能力の低い子が睡眠時間を少なくしか取れないのかが分からないから。この研究は、ちゃんと条件を制御(コントロール)しているので、因果関係ははっきりしている。
難点を挙げれば、睡眠時間を一週間という短い期間で次の条件に変えていったことだな。睡眠時間は慣れの問題というところが大きいので、大変なのは最初の5日間くらいだけ。それが癖になれば、6日目ぐらいからは、その短い睡眠時間に対応できるようになる人が多い。なので、この実験のように睡眠時間を減らされれば最初の一週間はそれが成績に現れるのは当然。むしろ2週間目のデータだけを調べた方が良かっただろう。
それと児童の学習能力の測り方も客観的ではない。教師は児童の睡眠時間を知らなかったのでブラインド・テストではあるのだが、それでも教師が正確に学習能力を測れている訳ではない。欠伸をする生徒はたとえ成績が良くても駄目な生徒だと見られがちだ。なので、客観的に学習能力を測りたいのなら別の測定方法が良いだろう。
その点を差し引いても面白い研究なので、次回の研究にとても期待しているよ。って言うか研究ってこんなもんだよな。人の研究の批判は簡単にできるけど、自分の研究を隙の無いものにするのは大変なんだよ。ほんとに。
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元のニュース:Less sleep impacts directly of children's performance at school
検索キーワード:心理学、教育心理学、認知心理学、注意、Gahan Fallone, attention, blind test,

猫は甘い味を知覚できないことが以前から知られていたが、それは遺伝子のせい。炭水化物(糖質、carbohydrates)を知覚する遺伝子が働いていないので、甘さを感じられないのだという。
甘さが分からないなんて可哀想だな。実家にいた頃は飼っていた猫や犬にビールや日本酒をあげてみたりしてたけど、甘さが分からないんなら、猫にとっては味もまた別物だったんだろうな。ねこまんまとかも炭水化物の味が分からないんじゃ美味しくないだろうなぁ。
ていうか根本的に、進化の過程で炭水化物を知覚できない種が生き延びてきてあれだけの運動能力を維持できているんなら、人間も炭水化物無しで健康に生きられるのかなぁ。まぁ、僕は白米を諦める気なんてさらさら無いけどね。
元のニュース:Genetic Studies Make Purrfect Sense: No Sweet Treats For Kitty

恋人との性行為中にコンドームを使わない、または使う頻度が低いほど、女性は幸せだったという。
この研究者(Gordon Gallup at the State University of New York)は293人の女性の生徒にアンケートを実施した。パートナーとのセックスでコンドームを使う頻度や、いまどのくらい幸せかなどが質問内容だった。
その結果、自己申告での幸せ度が一番高かったのは、パートナーとのセックスでコンドームを使わない群(ゴム無し群)だった。2番は時々使う群で、いつも使う群(避妊群)は幸せ度が最も低かった。
このニュースでは考えうる理由の一つが挙げられている。精子にはテスタストロン(testosterone)やエストロゲン(oestrogen)などのホルモンが含まれていて、それらのホルモンがは気分は幸せにすると言われている。それが膣から吸収される、と。
え?ゴム無しで中出しまでしてんの?そりゃー違うんじゃないの?コンドーム無しの群みんなが中で出すわけじゃないでしょ。ま、確かにアメリカの女の子たちは避妊パッチとかしてるコも多いけどね。男はこういうのを言い訳に使うよな。中で出していい?その方が女の子は幸せになるんだよ。とかね。
でも僕はこれはそういう因果関係は無いと思うよ。逆の方向の因果関係でしょう。幸せというかあまり心配しないたちだからコンドームを使わない。心配だからコンドームを使う。つまり、コンドームの使用が性格(や幸せ度)を決めるのではなく、性格がコンドームの使用頻度を決めているのだと考えるのが妥当でしょう。相関関係を使った心理学の罠だな。
もしこの研究者がこれを踏まえたうえで、それでもコンドームの使用が性格や幸せ度を変えているんだ、と言うんならそれは面白いな。
研究の続き。ゴム無し群はセックスをしない時期が長くなるほど、鬱になったが、避妊群ではセックスの期間は鬱の発生に影響を与えなかった。ただし避妊群は常時から鬱や自殺未遂が頻繁に見られた。
この研究者はコンドームの使用が性格や幸せ度を変えると信じているようだが、それでもセーフ・セックスは大事だと言っている。避妊は必要ならするべきだし、性感染症の予防にもコンドームは大切だ。
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関連する過去の記事:
エイズになる危険性(The Whole Earth Catalogより)(しんりの手アメブロ)
元のニュース:BBC: Semen 'makes women happy'
テレビ番組中では人相学の専門家としてナオミ・ティックル(Naomi Tickle)という人が出ていた。人相学を学術的な英語で言うと読顔学(face reading、または一言でpersonologyとかPhysiognomy)というらしい。テレビ番組の中ではあまり面白いことを言わなかったのだが、ネットで調べると興味をそそることが書かれている。
寛容さ(tolerance)は両目の間の距離に現れる。両目が近いと我慢が短くすぐに反応してしまう。両目が離れていると寛容があり、ゆったりと寛ぐタイプだと言う。彼女のウェブのこの項目。
彼女の本にはこんなことが目の幅、口の位置、などに付いて延々と書いてあるらしい。
- Naomi R. Tickle
- You Can Read a Face Like a Book: How Reading Faces Helps You Succeed in Business and Relationships
信憑性には欠けるけど、僕はある程度信じるよ。両目が近いってのは肉食獣が持っている傾向だ。眼前に集中できる。両目が離れているのは草食動物の特徴だ。周囲を見渡して警戒できる。ここからは科学的根拠がまだ示されていない説明なんだけど、体育会系の人はある程度は骨格や目の位置が肉食獣的になるのではないかと僕は個人的に考えている。または逆の関係で、目の位置が寄っているので、ボールを追ったりする動きに長けている。更にここに別の(想像上の)相関関係を加えてみる。肉食系の動物の方がせっかちで、激情系の性格な気が僕個人としてはする。草食動物はおっとり。なんで、目が寄っている人はせっかちで、目が離れている人はおっとり。ただし、科学的な説明はなく僕の想像の域を出ない上に、相関関係を2つ足したらほとんど相関しなくなるのが普通だ。
まぁ面白い話なんでこの話は見かけたらまた報告するよ。
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関連する過去の記事:
時間が無いんであとで更新。
ついでに甘えてもう一つ。関連する外部記事があれば参考リンクを貼らせていただきます。自薦、他薦でメールください。
新しい記憶を覚えられなくなる症状(amnesia)の患者2人を使い、二つの図形のうちの特定の一方の図形を覚えるという作業を数週間繰り返した。数週間繰り返しても、記憶を形成できないので2人ともこの試験をやるのは初めてだと毎回思っていた。しかし結果は違った。数週間後に正答率は2人それぞれ95%と100%にまで上がってしまった。なので新しい記憶を覚えられないというのは一概に言えることではなく、記憶の種類によって覚えられるものと覚えられないものがあるようだ。

この研究と似たことは前から示されているね。鏡に映した絵をなぞる練習(上の画像)で、記憶障害者は練習した事実を毎回忘れていたけれど、技だけは進歩していった。その時は、技能の記憶というのは事実の記憶とは別の回路を使っているので、事実を記憶できなくても技術は新たに記憶できていた、という説明がされていた。
今回は技術の記憶よりもよっぽど事実の記憶に近いものだ。図形を覚えていたのだから。このニュースから僕が勝手に理由付けをしてみる。
僕の解釈では、覚えられた経験というのは単純な画像の情報だ。覚えられなかった経験というのは2つあって、この画像を見たという記憶と、この練習をしたという記憶だ。なので新しい記憶を覚えられるというのは、新しく入ってきた情報にタグ付けをして整理する技術なのではないだろうか。図形の情報は単純なのでタグを付けなくても繰り返し経験すれば記憶に残るだろう。画像を見たという記憶や練習したという記憶は複雑なのでタグを付けないと記憶に残らない。ま、論文を読んだわけでもないんで、かなり適当に語ってるんだけどね。
記憶なんて普段は全く意識しないけど、記憶の種類によって事象に差があるのってすごく不思議だよ。
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過去に書いた関連する記事:
「加齢と記憶」ラーズ・バックマン(2001年)
記憶の種類とその衰え方の差について。
海馬を切除しててんかんも直って、学習もできる
この辺は僕が読んでいた教科書の何年も先を行っている。脳の理解の進み具合って速いんだなぁ。
19年間の昏睡から目覚め、話し始める
ここにも新しいことを覚えられない患者が一人。
元のニュース:Habit Leads To Learning, New VA/UCSD Study Shows
作業負荷はコンピューターのCPU使用量とほぼ同じ案と言える。ウィンドウズXPであれば、CTR + ALT + DELを押して、パフォーマンスのタブを開くとCPU使用量がリアルタイムで見れる。
今回の研究は人の作業負荷をリアルタイムで見ようと試みたもの。
この研究者は12個の様々なリアルタイム測定値が作業負荷をどのくらい予測できるかを調べた。下のグラフのX軸が12の測定項目で、Y軸の高さが高いほどその測定項目が作業負荷を予測できる。3人の被験者、1,2,3、を使った実験だったが、この実験では個人差が大きく、3人とも一致した項目(例えば項目3)もあれば、3人ばらばらの項目(例えば項目7)などもあった。

X軸の項目1は心拍数だ。被験者1の場合は心拍数が非常に高い確率(0.9)で作業負荷を予想していた。しかし被験者2と被験者3では心拍数は低い確率(0.25程度)でしか作業負荷を予想しなかった。
面白い結果としては、測定項目3のマウスを握る時の指の力の入れ具合が作業負荷を如実に予測しており、3人の被験者とも0.85以上の予測関係を示した。
個人差が大きいものの一般的な結果として、作業負荷が高くなるほど、まばたきが減り(項目5)、頭を動かす回数が減り(項目11)、口を開ける回数が減り(項目10)、心拍数が上がった(項目1)。
応用性が高く、即実用できそうな面白い研究だな。例えば車を運転してる時にハンドルにセンサーを仕込んだりして上記の幾つかの項目を測る。で作業負荷が高いと判断されたら運転者はそれ以上の物事を処理できない状態だと思われるので、車は自動的に速度を落として安全を確保する。とか、教育の現場なら生徒の反応をリアルタイムで見て、作業負荷が高くなれば、教師は授業の速度を落として生徒が付いて来られるようにする。とか、人と打ち合わせをしてる時に、口の開け方や目の反応を見て相手の作業負荷具合を見極める、とかね。
この研究を見ると、ポリグラフ(嘘発見器)の研究を思い出すな。原理は似たもので、体の反応から人の脳の活動を見るもの。ただし嘘発見は正確性が低い。その話はまたの機会に。
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元の論文:Markus Guhe et al. (2005) Non-intrusive measurement of workload in real-time. Proceedings of the human factors and ergonomics society.
検索キーワード:心理学、認知心理学、2-BACK TASK, nasa-tlx, multiple resource theory, c. wickens 1992. cognitive workload, task load, ACT-R, Bayesian Network modeling,