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短期記憶の容量は(7±2)の3倍
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ミラーは1956年に短期記憶の容量は7個程度だとした。例えば無意味なアルファベットを短期記憶で覚えるのなら7文字くらいが限度。最近はその案が否定されてきていて、容量は4個程度ではないかと言う論文が数多く発表されている。(過去の記事参照「人は魔法の数7±2ほど短期記憶できない」)

今日、紹介する論文は逆の話。短期記憶は7±2どころではなく、その3倍に当る20個程度までの情報を保持できたと言う。

ミラーが一つのモーダル(感覚器官)だけを使ったのに対し、今回の研究者は複合モーダルを使った。しかも6個のモーダルを同時にだ。あー、気が狂いそうな実験だな。よくIRB(倫理委員会査定)通ったな。こんなのの被験者になったら、僕はその日一日、ストレスに苛まされるよ。

6個のモーダルは、言葉の記憶(アルファベット)、視覚記憶(アラビア文字を目で覚える)、位置記憶(光る枡の順番を記憶していく)、動作記憶(人の体の動きの動画を記憶)、触覚記憶(体のどこを触られるかを記憶)、音程記憶(ピッチの高さ構えの音と同じか記憶)だった。

この実験はすごいよ。なんと言うか有無を言わせぬ強引な推し進め方。こんな6つのモーダルを同時に与えて、どの刺激を記憶できたかを測ったんだって。一つの刺激につき、6個のアイテムが連続で提示されるので、可能な得点は36点だ(6アイテムx6モーダル)。

その結果、12人の被験者の平均得点は19.75点だった。36点満点だから、こんなストレスフルな環境で半分以上の刺激を覚えていたことになる。みんな頑張ったっちゃったね。まぁそういう訳で、ミラーの短期記憶容量7個説を大幅に上回る約20個の刺激を記憶できたということになるな。

これは目の付けどころがシャープだよ。ミラーのモデルは確かに単体モーダルの試験だった。で、その記憶容量の限界がモーダルの限界なのか、記憶メカニズムの容量の限界なのかは知られていなかった。でもっ今回の研究によると、記憶メカニズムの容量は7よりもずっと大きくて、モーダルごとの限界が一般的に言われる記憶容量の限界だったと言うことだな。

穴の多い研究で、正直言ってこの研究者はあまり最近の文献を読んでいないと僕は思う。引用している文献もたったの9つだ。しかも最も新しい引用文献が90年代のもので3件だけ。なのでつつこうと思えばいくらでも埃の出てくる論文なんだけれど、アイディアが最高に面白いよ。

応用例が広いところも良いね。例えば電話番号とかを覚えるんなら、最初の4桁を言葉で覚えて、後の4桁を目で覚えるとかね。また楽しみな研究が世に出てきたよ。心理学って本当に果てしなく研究されていくんだろうなぁ。

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元の論文:Shatha Samman et al. (2004) Multimodal interaction: multi-capacity processing beyond 7 +/- 2. Proceedings of the human factors and ergonomics society 48th annual meeting 2004. p.386.

検索キーワード:Baddeley, A. D. & Hitch, G. J. 1974. working memory. Miller, G. A. 1956. The magical number seven plus or minus two.
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オタク市場で欲されるものの傾向
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「オタク層を5タイプに分類」(野村総研)
というニュースを見かけた。面白い研究だけど一点気になる点が。

「オタク」の定義でちょっと引っかかったんだけど、彼らはマニアックな趣味を持ってるだけじゃなく、社交的な技術に欠けているよな。この言葉の起源でもあるけれど、だいたい人を「オタク」って呼ぶ人間は性格的に何か間違ってるよ。最初にオタクって命名した人は良い点を見ていたと思うよ。

同じ理由で最近よく見る「おまいら」とか「おいら」という表現も僕は危険の予兆だと思っている。場面によって使い分けて、実生活では使っていないんなら大丈夫だろうけど。

言葉使いと性格や行動との関係ってのも心理学では一応研究されてはいる。人を知るのには言葉使いを見るのが手っ取り早いんだから、当然研究されてしかるべき分野だ。でも正直言ってあまりまともな研究は見たことが無い。言葉遣いという比較的曖昧なものを客観的な基準に置き換えることが難しいのが理由だと思う。日本では研究されているんだろうか。

野村総研のニュースに戻って、興味深い点。良くも悪しくもこの研究は企業寄りの研究だと思う。オタクの定義で消費や欲求に主眼を置いて、社交性に目を向けていないのは、それは企業戦略への繋がり具合によるのだろう。当然、消費や欲求の方が企業としては知りたいデータだ。5つのオタク型についてどの欲求が高いかを研究するのは、企業にとっては購入者ターゲット別にどの点を売りにしていくのかが分かって実用度があると思う。

でもこの点においては、マニアな一般人の分析の方が僕は好きだ。例えばここ「ハーレムアニメ」(ウィキペディア)。
野村総研の6つの欲求因子はより大きな枠組みの説明なのだろうけれど、それを特定の点に絞り込んだという点で、上のウィキペディアの例の方が即効の応用性が高いと思う。つまり男は複数の女に愛される話を読みたい。
どちらも、人が何を求めるかを見抜くことにより、今後の売れ線の傾向を掴むのの助けとなる。または製作者が何を作ったら売れるのかを知る助けとなる。ウィキペディアのこの項目を書いた人はそんなことを考えちゃいないのかもしれないけれど。

うん、適度に話が拡散してまとまりが無くなった辺りでこの記事を終えておこう。

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検索キーワード、心理学、消費心理学、社会心理学、臨床心理学、カウンセラー、因子分析、factor analysis,
19年間の昏睡から目覚め、話し始める
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夕べはシェルビーが夕食に招待してくれた。手伝わせてくれなかったんでテレビを見ていた。最近のテレビって面白いんだね。僕はテレビを所有していないんで見るのは友達の家に遊びに行った時だけなんだけど、ディスカバリー・ヘルス・チャンネルというのに釘付けだったよ。

この番組で取り上げられていたテリー・ウォリス(terry wallis)という人は、自動車事故で19年間も昏睡状態だったのに、そこから目覚めて、今は何とか話もできる。

彼は1984年(19歳の時)に自動車事故に遭い、昏睡状態(coma)に陥った。昏睡状態は4週間が一つの判断時期らしい。その時点での状態がその後の人生もずっと続くことが多いらしい。3種類の状態があって、目覚める人(emergence)、植物状態の人(vegetativeつまり昏睡状態が続く人)、そして死ぬ人。この時点で植物人間状態だと、その後に目覚める確率は2%しかないそうだ。

彼は昏睡状態が続いた。それでも母親はいつかは彼が起きることを信じて、2週間毎に養護施設を訪れ、自宅に連れ帰って話し掛けてあげたりしていた。そして2003年のある日、彼は話し始める。
養護士が「誰が訪問したの?」と彼に聞いてみると、彼は声を発したのだ。「ママ」と。母親は「私はその場に崩れ落ちそうになった」(I like to fell over.)と語ったが、これは文法が間違ってますよ、奥さん。アメリカ人のくせに。ぷぷっ。

夕べのテレビでは語られていなかったんだけど、今こうしてCNNの当時のニュースを読むと、彼は単語をほとんど忘れかけていたみたいだな。「ペプシ」とか「ダッド(dad)」などの単語を覚えていったと書いてある。19年も使ってなかった言葉なら当然、記憶の関連付けも薄れてしまってるだろうから当然だろうなぁ。でも昔覚えていたことならそこからの言葉の回復は早いのだろう。

回復しないものもある。重大な自動車事故のほとんどに見られるように、彼も前頭葉(frontal lobe)が壊れている。その為に、体を動かせない、唇も巧く操れないので言葉も巧く話せていない。それに新しい記憶を長期記憶に入れられないので、彼の記憶は19年前のままだ。19年前に生まれた娘のことを何度話しても、覚えて置けない。更に人格も変わってしまっていて、若い女には「ヤらせろ」などと言っている、養護士にも、実の娘にも(彼は認識できていないのだろうが)。

このテレビ番組を見て、心理学がどう貢献できるかを考えてみたよ。

まず、大きな自動車事故の負傷者がほぼ前頭葉に障害を負うことに付いて。これは頭が前方に揺すられてフロントガラスかシートベルトに動きを止められるから、頭の内部にある脳の前方が潰れちゃうんだよな。ならいっそのこと、頭が前方に揺すられたその慣性の動きを無理に止めなければ脳は無事だろう。事故で車が止まる瞬間に乗っている人はバンジーみたいにびよーんと車外に排出されれば脳は事無きを得るのではないだろうか。

あと、昏睡状態に陥ったら、脳のダメージを見ることでその患者が最大限どこまで回復できるかをある程度予測ができるんだろうな。現代では否定的な応用例を思い付いてしまうけれど、将来的には、短期記憶が働けば、それを長期記憶に移行させる代替器官というのは実現可能な科学になると僕は思っている。この辺の科学的な話はまた別の機会に。

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引用したニュース:CNN:Man speaks after 19-year silence 2003年

検索キーワード:心理学、生物心理学、神経科学、神経認知心理学、認知心理学、知覚心理学、コーマ、テリー・ウォリス、discovery health channel, STM short term memory, LTM, long term memroy, momento,
脳の一部をオフにする
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この研究者は脳の一部を働かなくする方法(経頭蓋磁気刺激,
transcranial magnetic stimulation )を使って、視覚認知に必要な脳の部位を新たに見つけた。それは頭頂葉皮質(parietal cortex)だ。

このニュースによると、今まで視覚に必要な部位は視覚野だけだといわれていた。しかし今回の実験で、頭頂葉皮質の機能を働かなくした時に視覚機能も働かなかったため、この頭頂葉皮質も視覚に関わっているのだという。ちなみにこの研究ではチェンジ・ブラインドネス(変化に気付かない現象:この実験の説明は過去記事を参照)を使った。

ふーん、そういう解釈か。視覚にはいろいろな機能が関わるからいろいろな部位の脳が必要なのは昔から言われている。例えば中脳(midbrain)も視覚などの情報処理と作動記憶に関わるし、頭頂葉(parietal lobe)も作動記憶に関わる。

特に今回の研究はチェンジ・ブラインドネスを使った実験だったので、映像を短期間覚えておいて比べないとできない課題だ。作動記憶が大いに関わる課題だ。なので視覚に必要な機能の中でも特に作動記憶にも関わった脳の部位を測ったのだろうと僕は思う。

それよりも驚きなのは、脳の一部の機能だけを働かなくする方法があるんだな。僕は知らなかったよ。外部からの刺激で脳をコントロールするなんてすごいね。以前、プレイステーション9の話を書いたけれど、未来には実現しそうな流れだな。

PS9では映像を目ではなく直接的に脳に認識させるという設定だけれど、映像を目を使わずに見せるのはかなり先の話だろう。現実的にその前段階を考えると、PS7くらいでは目で映像を見るものの、脳の活動を制御して、より視覚と指の反応に集中させて一般人の3倍の速さで視覚情報を処理させたり、または脳を故意に遅く働かせることで楽しみを増したり、などそういう脳をいじるゲームというのは実現可能なまでに科学は発達すると思う。将来は、ゲームを作るための心理学なんかが授業になるかもね。

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元のニュース:Right Parietal Cortex Plays a Critical Role in Change Blindness

検索キーワード:心理学、生物心理学、認知心理学、知覚心理学、savant, rain man, kim peek, autism, 自閉症、UCL (University College London, Nilli Lavie,
試験の呼び名で成績が変わる
一般に女は数学に弱いと言われている。しかしそれは数学の能力に劣っているためではなく、女は数学が得意ではないという暗示から来る精神的な原因のせいかもしれない。

この研究者は100人ほどの学生に難しい数学の問題(GRE:アメリカの大学入試の共通試験)を解かせて、男女の差を比べた。3つの群に分けた。3つの群とも同じ問題を解いたものの、群Aは問題を「問題解決」(プロブレム・ソルビング)と呼び、群Bは「数学の試験」と呼び、群Cはやはり「数学の試験」と呼んだ上で「女は数学に弱いと言われている」と教えた。この群Cをもう少し詳しく言うと「重要なことなので覚えておいてください。もし試験中に不安になったとしても、それはあなたの能力からではなく、社会的に女は数学に弱いという思い込みからかもしれないのです」と教えた。

johns2005math.jpg

結果は上の図。群Aの問題を「問題解決」と呼んで解かせた場合には男女の差はほとんど無かった。群Bの問題を「数学の試験」と呼んだ時には女の成績が極端に悪かった。群Cで問題を「数学の試験」と呼んだものの説明を加えた時には男女の差はほとんど無かった。

結果がはっきり出ていて面白い研究だな。心理的な持ちようでこんなに試験の結果って変わっちゃうんだな。びっくり。しかも群Bでは「数学の試験」と聞いただけで男の方は点数が伸びてるし。男は数学の試験という言葉でやる気になっちゃうのかな。群Dを作ったら面白いかもね、群Cの逆で。男に「男は数学が弱いと言われてますがそれはあなたの能力とは全く関係ありません。社会がそう思わせているだけです」って言ったら男は更に能力を発揮したりしないのかな。

あと今回使ったGREは、大学院の共通入試試験ではあるけれど、日本人にとってはすごく簡単で、日本人のアメリカ大学院受験者の多くは満点近くを取ると言われている。被験者は白人だけだったとのことなんで、白人にとって難しい試験を使ったんならこの研究の正当性はあるんだけれど、日本人の僕から見るとあんな簡単な問題で本当にこの研究に適してんのか疑問が残ってしまうよ。

ともあれ、これを生かして将来は男も女も能力をより発揮できるようになると良いね。

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元の論文:michael Johns, Toni Schmader ,and Andy Martens. (2005) Knowing is half the battle. Psychological Science. vol.16(3). p.175.

検索キーワード:心理学、社会心理学、教育心理学、stereotype threat, math performance, 固定観念の脅威、motivation, graduate record examination, ステレオタイプ脅威
心理学の実験。集中力を測る。
illinoisvisualcoglab1.jpg


今日はちょっと指向を変えて、心理学の実験を紹介するよ。

集中力を測る実験です。まずはここでビデオをダウンロード(7MB)します。
イリノイ大学の視覚認知ラボ

やり方を読むまで再生ボタンは押さないでください。
ビデオでは、バスケット・ボールで遊ぶ人が何人かいますが、あなたの課題は白いTシャツを着た人たちがパスをする回数を数えることです。これはきちんと数えられる人があまりいないと言われています。数えるのは白いシャツのパスの回数で、黒いシャツのパスは関係ありません。ビデオは緑の再生ボタンを押すと始まります。
では再生してください。

さぁ、数えましたか?

この実験の主旨は下記。(ネタバレあり)

10

9

8

7

6

5

4

3

2

1


パスの回数の数は13回?はっきり言ってこれは関係なし。白いものに集中すると黒いものが見えなくなるんだけれど、ビデオの途中で全く関係ないものが出てくるのには気付いたかな?心理学の実験の結果を見ると半数くらいが気付かないようだ。気付かなかった人はもう一度ビデオを見てみると、白に集中しなければ明らかに気付くはずの事象に驚くはず。僕も気付かなかった人の一人です。

ちなみに表題にある、集中力を測る実験というのはあながち全くの嘘ではなく、集中力の高い人のほうがある課題に集中している時に他の物が見えなくなる傾向が強い。反対に、ADHD(多動性障害)など注意力散漫な人はある課題に集中するように言われていても、周り物への注意力が高く、いろいろな物が目に見えている傾向が強い。ただし、これは一般論で、このビデオの結果と個人の集中力の関係はまだ示されていない。

人は条件次第でいろんなものが見えなくなってしまうんだよね。今回はある一つの色に集中した時に別の色の物が見えにくくなる現象。この研究では色だけが原因ではないことも示されている。
他の実験では、瞬きのような一瞬の画像情報の戸切れを境に映像が変わっても人はそれを認知しにくいというのもある。これはこちらの記事を参照。
変化には気付くけれども何が変わったかは指摘できない(しんりの手 fc2)

こういう心理学の実験てテレビCMや映画やアトラクションに活用されたら面白そうだな。昨日も似たことを書いたけれど。

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関連ウェブ:目の前にゴリラ(医学都市伝説さん)
この実験についてより詳しく説明されている。

検索キーワード:心理学、知覚心理学、認知心理学、注意、attention, inhibition, inattentional blindness, Daniel Simons, Christopher Chabris, Harvard University, cognition, perception, gorillas, ゴリラ、錯覚、illusion, 非注意性盲目、
ホーンティド・ハウスで絶叫してきたよ。
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アメリカはハロウィーンの季節なんでホラーものが流行っている。そんな時節に乗り、夕べは友達とホーンティド・ハウスに行って来たよ。要するにお化け屋敷だね。

僕はホラー映画とか遊園地のアトラクションを人の5倍は楽しむ人間だ。別の言い方をすれば、驚きやすく、絶叫する頻度が人の5倍。絶叫する声の大きさも5倍。ホラー映画なんかで、ドン!なんて大きな効果音を聞く度に椅子から飛び上がる。ジェットコースターなんかで取られる写真を見ると、両手を上げて目をひん剥いて絶叫している僕と、僕の叫び声に失笑している周りの客、というのがデフォルトだ。

まぁ、そんな驚きのスペシャリストであり、更に心理学も学んでいる俺様が、怖いとは何かを語ってみたいと思いますよ。

お化け屋敷とかでの恐怖というのは一般的な恐怖感(fear)で、これは恐怖症(phobia)などの病的なものとは区別される。恐怖感は基本的には身の危険に迫るものの察知から起きる。

感覚器官的なものだと、突然の大きい音というのは人間は生まれたときからずっと嫌いなままだ。眼前に急激に迫ってくるものと同様、突然の大きな音というのも自身への危険を示す場合がほとんどで、それが恐怖につながる。

未知の生物、奇妙な生物(人間)というのも行動の予測ができないので身への危険がある。それが恐怖につながる。

こういった恐怖は、安全だと予想できるだけの時間を与えてしまうと、それは恐怖ではなくなってしまう。なので、これらの心理学的な要素を考慮すると、お化け屋敷で恐怖を感じさせるには、①正体を掴めない物が急に身に近づいてくる。②感覚器官への急激な刺激。というのが基本だろう。

これに別の心理学的な理論を応用してみる。例えば、安全だと思っていた明らかに作り物に見えた死骸が突然動く。人は感情などを相対的に感じる傾向があるので、安全から恐怖へのギャップが大きいほど恐怖感は増大する。

または、安全だと判断するのに使う脳を別のことで占有してしまうと、安全かどうかの判断ができなくなり恐怖が増大する。例えば音と映像の刺激が同時に起こると、人間は処理速度が遅くなる。また、ある特定の刺激の後は、考えが一瞬ストップしてしまったりする、というのもある。

心理学を応用するとお化け屋敷なんかはもっと怖くなるはず。

夕べのホーンティド・ハウスは十分怖く、これ以上怖くならないことを望むけどね。一緒に行ったコの手を引いてあげるよ、という名目で彼女を何が後ろから迫るか分からない最後尾に配置して、僕は自らの安全を確保。それでも僕の叫び声で、別の客である8歳児くらいは笑いまくってたけどね。更に僕の絶叫で、お化けを5匹くらい逆に怖がらせ返しました。以上、報告。

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検索キーワード:心理学、知覚心理学、認知心理学、社会心理学、性格心理学、多重課題、multiple task, dual task, fear, phobia, haunted house, ghost, haloween,

恋人選びは遺伝の影響が34%
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双子を使って、結婚相手や友達を選ぶ時に、遺伝や環境がどのくらい影響したかを調べた。その結果、恋人選びや友達選びの理由は100%中で34%が双子の遺伝子によるもので、12%が双子が共有した環境によるもので、54%が双子が共有しない個々の環境によるものだった。

単純にこの結果を受け入れるとすると、好きな人とかっていうのは遺伝で34%も決まっちゃうんだな。僕はこういう双子の研究から遺伝の率を調べる研究を信じていない。でもこういう文献はある程度は正当性もあるし、勉強になるので読むのは好きだ。特にこの論文の表が面白い。
20051023001703.jpg

データの最初の4列は相関関係で、5列目が遺伝の影響する率。
データの一行目を見ると、身長は一卵性双生児で相関指数89%。双子のペアの身長はほとんど同じという訳だ。それが二卵性双生児になると52%にまでがくんと落ちる。一卵と二卵の差が大きいことから、遺伝率は74%と大きいと計算される。ちなみにある双子のうちの一人とその友達の身長の相関指数は4%とほとんどゼロに近いので、関係がほとんど無いというのが分かる。

面白い点を見ると、双子間で似ているのは身長89%。体重はそこまで似ないで80%。つまり環境によるところがよりある。収入は11%とほとんど似ない。

結婚相手との類似度(これはおそらく双子でも一般人でも同等でしょう)で高いのは教育55%、職業74%、収入43%、政治観60%など。つまり、教育程度が同じ程度の人と結婚し、結婚相手は職場で見つけやすく、自分の収入が高ければそれに見合った収入を得る結婚相手を見つけられやすい。ま、これは一解釈で、相関関数というのは因果関係の方向を示さないので、どちらが原因かは分からない。なので。僕の解釈は一例だということを付け加えておこう。

この表で最も興味深い点は一番右の列の遺伝率だ。これは一卵性双生児の類似度と二卵性双生児の類似度の差から計算されるものだが、身長で74%と高いのは納得できる。性格もかなり遺伝率が高い。神経質傾向は90%!。嘘つきは74%。高っ!。逆に低いのは利他主義度で16%。確かにボランティアとかの心は育ちの環境によるものが大きそうだもんな。

納得できないのが政治観の遺伝率が48%と比較的高いこと。普通に考えると政治でどの政党が良いとかの思想は遺伝なんかしないよな。だってそれは思想なんだから。思想は教育により作られるものだから。この辺が、僕が双子を使った研究を昔から信じていない理由のひとつ。

逆にこれが正しいと考えると、政治的な好みは遺伝で半分近く決まってしまうので演説の内容とかはあまり関係なく、もっと生物的な化学反応のようなことが影響しているとも取れる。それなら政治家は政策よりも生物学的に好かれることをした方が、有権者からの票を得られるのかもしれない。そういえばヒトラーのクローンとかいう映画(ブラジルから来た少年)があったな。うーん、我ながら、論理の飛躍した文だ。機会があったら改めて説明したい。

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元の論文:J. Philippe Rushton and Trudy Ann Bons. (2005) Mate Choice and FGriendship in Twins. Psychological Science. Vol.16(7).p.555.


検索キーワード:心理学、発達心理学、双子、structural equation models, SEM, AMOS, 統計、
変化には気付くけれども何が変わったかは指摘できない
Airplane.jpg

視界の中で例えば信号の色が変わったとする。何かが変わった、ということには気付くのだが、視界の中の何が変わったかを指摘するのは難しい作業らしい。

「変化に気付かない現象」(Change Blindness)という現象がある。間違い探しのような2枚のほとんど同じ画像を交互に何回も見せられても、2枚の画像の何が違うのかを探すのには何十秒も掛かってしまう現象だ。

この研究者は、この現象を研究して、車の運転手が信号の変化などをより受け止めやすいように考えていたらしい。しかし、その実験の中で奇妙な別の現象を発見したという。

その奇妙なこととは、2枚の画像に違いがある、と分かっても、その違いがどこなのかを指摘するのには更に数秒間を要したという。つまり、2枚の画像の異なる点を意識的に理解する数秒前に、何かが違うということだけは理解できるらしい。

この研究者が取った実験方法は、2枚の画像を交互に見せ、違いがあると感じた時点でスペース・キーを1回押す。ちなみに2枚の画像が違う可能性は50%だった。残りの50%は2枚とも同じ画像なので、その場合はスペース・キーを押さずにじっと待つ。違いがあると感じた後に、画像のどの部分が2枚の画像で違うのかが分かったらスペース・キーをもう一度押す。

被験者の7割がたは1回目と2回目のキーを押すタイミングがほぼ同じだったことから、彼らは違いを発見すると同時にどこが違うのかも発見していたらしい。しかし、残りの3割の人は、その差が5秒ほどあった。これは2つの課題に違いがあることを示している。

まぁ、試してみよう。
まずは「変化に気付かない現象」を経験してみる。この実験ページに行き、2枚の画像が交互に表示されるので、違いを探してみる。条件が難しいほど、気付かない可能性が高いので設定を難しくしてみよう。画像を右クリックして「gap」を「250 msec gap」に。飛行機の画像で違いを見つけたら、右クリックで他の画像も試してみよう。

一度、違いに気付くとその違いの大きさになんでさっきまで気付かなかったのか馬鹿らしくなる。それが、この実験のポイントで、注意を払わない点というのは、人は本当に気付かないものなんだな。

次に、違いを感じてから違いを指摘するまでの時間的な隔たりを意識してみる。僕にとってはこの画像(ドル札)が最も顕著だった。何かが変わっているというのは分かるんだけど、何が変わっているのかを分かるには更に20秒くらい掛かってしまったよ。

この実験は日常ではまず起こらない現象なだけに、日常の生活に直接的に応用することは難しいだろう。でも人の認知能力を測るのにはとても応用性があって面白い分野だと思う。注意能力も測れるし、視覚的な短期記憶の容量も測れるかもしれない。この分野はまた追って別の研究を紹介するよ。

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元のニュース:University of British Columbia: Mapping the Sixth Sense: Psychology's Ron Rensink discovers visual sensing without seeing.

ニュースのタイトルになっている「第6感」という言い方は無いよな。明らかに視覚(5感に含まれる)からの情報じゃん。
更に英語の「without seeing」という表現も日本人には分からないよな。英和辞典によると「seeは映像を受身的に目で捉えることと、意図的に認知することの両義がある」(小学館プログレッシプ英和中辞典)とある。この第2義の意味なんだろうけれど、こんな用法は今まで知らなかったよ。だから英語話者にとってはこれは第6感になるのかな?

検索キーワード:心理学、認知心理学、attention, inhibition, vision, cognition, 知覚心理学、
人は魔法の数7±2ほど短期記憶できない
50年前には人が短期記憶できるチャンクの数は5~9個だと言われた。これをミラー(1956年)は魔法の数7プラスマイナス2と呼んだ。これが近年、4±1に減り、いま新たに、この研究者は1~4に減らそうとしている。

人が短期記憶できるチャンクは4つ以下だ、と聞くとすごく衰えた気分になってしまう。自分も学部では7±2と習っていたので、そこから能力が落ちたように感じてしまうが、人は元からこんな能力だったのだろう。

この研究者が言うにはチャンクの数だけが問題ではなく、情報負荷との兼ね合いだという。例えばアメリカ人にとってはアルファベットは情報負荷が軽い(簡単に覚えられる)ので、平均で3.7文字ほど短期記憶で処理できる。しかし彼らにとって中国の文字は情報負荷が重い(覚えにくい)ので平均2.8文字しか短期記憶で処理できない。
alvarez.jpg


この研究者が使った図形は上の6群で36図だった。一番、情報負荷が大きかったのは陰付きの立方体で、短期記憶に一度に貯蔵できたのはたったの1.6個だった。情報負荷が軽かったのは色のついた四角で4.4個だった。

今回は最大でも0.85秒しか図形を表示しなかったので、狭義の意味での短期記憶を測ったといえるだろう。この辺がミラーの実験(1956年)とは違うのかな。読み返してみよう。
表示時間が短いと、視野も狭くなる。なので短期記憶以前に物体を認識したのかも怪しい。その辺は実験の改良の余地がありそうだ。

ちなみに今回計ったのは視覚的な短期記憶。音声的な短期記憶は違うのかもしれない。

あと、チャンクというのは情報をまとめた時の一単位。例えばアルファベットを覚えるのに、Q,M,W、と一つ筒覚えればこれは3文字なので3チャンク。これが、FBI,CIA,USA,WHO,と覚えやすい塊にまとめて覚えれば、4単語なので4チャンク。ただし、この例では、FBIとCIAが意味的に似た単語なので、提示時間を長めれば長期記憶を使ってまとめて覚える人も出てきてしまうし、人によっては1チャンクとしてFBI、CIAを括ってしまう人もいるだろう。

兎にも角にも、短期記憶のチャンクが考えられていたより少ないということは、文を書く時とか絵を配置する時には、読者は少ない情報しか結び付けて考えていけない、ということを書き手は常に考えるべきだろう。具体的に言えば、文を短くすることが分かり易い文として理解される場合が多い。

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元の論文:G.A. Alvarez and P. Cavanagh. Harvard University. (2004) The capacity of visual short term memory is set both by visual information load and by number of objects. Psychological Science. vol.15(2). p.106.

検索キーワード:心理学、記憶、長期記憶、短期記憶、認知心理学、George Armitage miller, TOTE system, shrt term memory, long term memory, working memory, rehearsal, The magical number seven, plus or minus two, some limits on our capacity for processing information, psychological review, v.63, p.81.
正義は白い服、悪者は黒い服。
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リベリオン -反逆者-

映画の多くは至るところに心理学の応用が使われている。例えばこの映画「反逆者」(原題 Equilibrium)では白い服を着たり、黒い服を着たりしている。白い服は善玉の象徴で、黒い服は悪玉の象徴だ、という一般的な心理を使うことにより、観客は意識しなくてもストーリーに引き込まれていってしまう。

白は一般的に善玉の象徴、と書いたが、これは本当だろうか?というのをこの研究者は調べた。その結果、白や明るさというのは良い意味の言葉との繋がりが強く、黒や暗さというのは悪い意味の言葉との繋がりが強かった。

50の良い意味の言葉(例えばgentle優しい)と、50の悪い意味の言葉(例えばdevil悪魔)を一つ一つ順番に、白か黒で表示した。169人の被験者はその単語の意味を判断し2つのうちの1つのキーを押した:悪い意味は「1」キー、良い意味は「9」キー。そしてその反応速度と正確さを調べた。実験的にはこの記事の「潜在的な連想の試験」と同じだな。

その結果、良い意味の言葉と白の関連が強く、また悪い意味の言葉と黒の関連が強かった。

これは当然の結果だよな。聖書とか映画で繰り返し明るさや白を正義の印として聞かされてくれば、そういう認識が脳に作られるよな。この論文によると、スター・ウォーズ、オズの魔法使いなどがこの隠喩法を使っているそうだ。

僕の興味は、それが聖書などの文化から来るものなのか、それとも西欧文化以外でも通じる人間の生来の反応なのか、という点だ。だれか未開のアフリカとかに行って実験してくれないかな。

ところでこの論文ではヴェイランス(valence)という単語が使われている。よく見る単語なんだけど未だに意味がよく分からないんだよね、恥ずかしながら。こんな風に使われてます。
Valence (positive or negative) x Color (white or black). とか
The Valence of the words and the brightness of the letters were varied orthogonally.
この「valence」は「意味」とかって覚えておけば良いですか?辞書(英日、英英)にはこの訳は載ってないけど。

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元の論文:Brian P. Meier, Michael D. Robinson, and Gerald l. Clore. (2004) Why good guys wear white. Psychological Science. vol.15(2). p.82.

検索キーワード:心理学、認知心理学、感情、affect, ストループ効果、stroop effect,
金持ちの国でも平均気温だと不幸せ
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気温と収入がその国の人の幸福感に影響するかを調べたところ、収入の高い国では、暖かい又は寒い国の幸福度が高かった。逆に、収入の低い国では、暖かい又は寒い国の幸福度は低かった(上の図を参照)。

この研究者は国の気温(気温標準偏差値)、国の豊かさ(national wealth)、個人主義の度合い(過去の別の研究者の値を使用)、幸福度(幸福標準偏差値、過去の別の研究者の値を使用)、公民権、利他主義の度合い、などの相関関係を調べた。その結果、2次方程式のような2本のカーブ(上の図)を見出した。

裕福な国でみてみる。寒いアイスランドと暖かいシンガポールは幸福だ。しかし普通の気温のイタリアは幸福ではない。

貧乏な国でみてみる。同じくらいの中程度の貧乏でも、寒い東ドイツと暖かいパナマは不幸せだ。しかし普通の気温のメキシコは不幸せではない。

うん、まぁ面白い研究だよね。ただ国単位で比較するというのは混同要素が多過ぎるんで、こういう研究はいくらやっても心理学ではあまり重要な研究とはみなされない場合が多いんだよね。かわいそうだが。

この場合の混同要素とは、国が違えば文化も言葉も宗教も違うので幸福度だけを単純に抽出するのが難しいということ。例えば日本人が日本語で「私は幸せです」なんて言うと、この人宗教の人かな、なんて見られちゃいがちだ。でもアメリカ人が英語で「アイム・ハッピー」と言うのは日常。なので幸福度というのを国単位で比べるのは難しい。(今回の幸福度として使われたエド・ディーナー博士の論文は読んでいないのでどんな測定方法かは知らないが。)

「マズローの動機や欲求の階層説」に似た話だな。マズローは生活の条件がまず満たされるように行動するのが人間だとしていて、今回の研究は、幸福度を上げるには、生活できるある程度の金と、生活できうる気温が必要だ、と解釈することもできる。ただし、このマズローの階層説も証明することが難しいなどの理由で、心理学界では受け入れられていない学説だ。

さて、今回の研究で日本は、というと、気温は普通、収入は高い、幸福度は中程度に不幸せ。んー、なんで日本人て幸せじゃないんだろうな。

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元の論文:Evert Van de vliert, Xu huang, Philip M Parker. (2004) Do colder and hotter climates make richer societies more, but poorer societies less, happy and altruistic? journal of Environmental psychology. v.24(1). p.17-30.

過去の関連記事:
○幸せを感じるメキシコ人(しんりの手アメブロ)

○幸せには生活最低限の金。その後は?(しんりの手アメブロ)

○個人主義の白人アメリカ人(しんりの手アメブロ)

検索キーワード:心理学、性格心理学、社会心理学、maslow, 欲求段階説、individualism, civil rights, happiness, altruism, temperature,気温、温度、

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(上)画像2

(下)画像3
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SATと知能指数の間に密接な相関関係r=0.82
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SAT(高校生が受ける大学進学適正試験)と知能指数は繋がりが強く、相関関係を示す数値が非常に大きかった(r=0.82)。

この研究者は、軍隊の名簿で軍隊用の知能指数(ASVAB = Armed Services Vocational Aptitude Battery)と大学進学適正試験(SAT)の両方の記録のある900人のデータを分析した。その結果、SATと軍隊用の知能指数の相関関係は直線回帰分析方法だとr=0.82(上の画像a)
とかなり高かった。非直線回帰分析方法だとr=0.87(画像b)だった。

ふーん、この2つの試験てこんなにかぶってるんだな。基本的には理解できる結果だ。知能指数が高ければ、学業でもよくやれるだろう。

ただ、ちょっとrの数値が高すぎて疑ってしまうよ。知能指数はどちらかというと生まれ持った能力を測る傾向があって、SATなどの学力試験は、学校でどのくらい学んだか、知識をどのくらい持っているか、問題を解く解法をどのくらい知っているかのような後生的な獲得を測る傾向がある。そのように性質の違う2つの試験がここまで密接に関連しているのは面白い。研究が信頼できるものなら面白いけれど、今のところは僕は、研究の穴を探している状況だ。

穴の一つと思われるのは、軍隊用の知能指数試験の結果を使っているところ。軍隊用の試験は一般の知能試験と違い、もう少しSATに近い形のものを使っている国が多い。知能試験であれば一桁の足し算とかも使うけれど、軍隊用の試験だと2桁の掛け算とかのように高度になる。文の読解も、軍隊用では、法律ではどう定義している、というような、学力試験に近いものが使われる傾向がある。

そんな穴を差し引いても面白い研究だね。

あと、これだけ面白そうな研究なのに、かなり多くの人が、統計用語を知らないためにこの論文を読むのを諦めてしまっている。もったいない。中級以上の統計に関しては しんりの手アメブロにてそのうちに解説をしていこう。例えばr、分散分析、非直線回帰分析など。

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元の論文:Meredith C. Frey and Douglas K. Detterman. (2004) Scholastic Assessment or g? The relationship between the scholstic assessment test and general cognitive ability. Psychological Science. 2004. Vol.15(6). 373-378.

検索キーワード:心理学、職業適性、scholastic achievement test、学力検査、学業成績達成テスト、全国標準テスト、Scholastic Aptitude Test、Scholastic Assessment Test、trend analysis, linear regression, non-linear regression, correlation, general intelligence g, IQ, Case Western Reserve University.

世の中で使われている心理学1:反応時間
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心理学は世の中のいたるところに使われている。その中でも、えっ、こんなことにも使われているの、という隠れた心理学で反応時間というのがある。

反応時間とは読んで字のごとく、刺激に対して、人が反応を返す時間だ。例えば、ウェブ上であなたは20歳以上ですか(Y/N)?という質問が刺激のひとつで、はい、と答える意味でキーボードのYキーを叩くまでが反応時間だ。

通常、2択の問題でYかNかを押すだけだと、そこから分かる情報は1ビット(YかNか)だけだと思われがちだが、反応するまでの時間が付加的な情報を送信している。普通ならば1秒で返ってくる返事が、3秒掛かっているとこの人は嘘を付いているのかな?とか、判断に迷うようなあいまいな答えなのかな、などを予測することができる。

この理論がおそらく使われているだろうウェブがここ。
人工知能研究所
名詞を思い浮かべて、質問に答えていくと、大抵は質問20回以内にその名詞を当てるというもの。これで「はい」「いいえ」などとクリックするのに、僕の勝手な予想では反応時間も測られて、考慮されていると思う。もしまだなら、考慮すれば正答率を上げられるだろう。

もう一つの反応時間がおそらく使われているであろうウェブはここ。
潜在的な連想の試験」(the Implicit Association Test
ここでは例えば、若い人、老人、良い、悪い、を個人個人がどのくらい関連させているかを調べられる。例えば「wonderful(素晴らしい)」は「良い」意味なので、「良い」のキー(IかE)を押す。これを「老人、素晴らしい」と表記された時と、「若い人、素晴らしい」と表記された時との反応時間の差を比べる。これにより人の偏見度などを調べている。

ま、心理学はこうやって隠れたところで、人の性格(偏見度とか)を診断したり、どのくらい迷った答えかを判断したり、そんな役に立っているんだよ。

ちなみに人工知能のほうでは「プランジャー」を当てられたのには僕の負けを認めるよ。あと、潜在的な連想の試験では、僕は、老人を悪いものだと思っている、との結果が出た。あまり認めたくない。

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関連記事:「反応時間」ダンカン・ルース(しんりの手アメブロ

検索キーワード:心理学、反応時間、response time, reaction time,


反社会的な行動は遺伝が大きい
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幼少期から発生する反社会的な行動は遺伝によるところが大きい、という研究結果。僕はあんまり信じないけどね。

子供が反社会的な行動を示すのには2通りがある。精神病的な気質(つまり思いやりに欠けていたり、反省する気持ちが欠けていたりなど)を伴う場合と、伴わない場合だ。

この研究者は反社会的な行動の中でも幼少期から発生する事例を、3600組の7歳児の双子を使って調べた。その結果、精神病的な気質(思いやり欠如、反省欠如)を伴う反社会性は主に遺伝的要素によるもので、精神病的な気質なしの反社会性は主に環境によるものだった。

ここまでがニュースの内容なんだけれど、うーん、いろいろと突っ込みどころが。まず「精神病的な気質」(psychopathic tendencies)という名称は止めてほしい。思いやりが無いことと精神病がまるで関係があるみたいだ。
それと双子を使った研究の落とし穴。一卵性の双子ペアの遺伝子は100%同じではない(過去記事)。

更に、一卵性双生児と二卵性双生児の差を全て遺伝子の差とすることもできない。一卵性の双子で見た目が瓜二つのために起きる社会的な反応というのがあって、見た目が似たものはより同じ環境を与えられやすい。つまりそれは遺伝が同じために生じる双子の性格ではないかもれしない。瓜二つの双子を使ったドラマっていろいろあるけれど、見た目が同じってのはその双子に与える影響が大きいよな。

まぁ、そんな点を疑問に思うわけだが、それでもこのニュースには興味がある。性悪で生まれてくる子がいるというのは、十分にありうるよ。
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元のニュース:Twin study discovers origins of anti-social behaviour
検索キーワード:心理学、発達心理学、性格心理学、社会心理学、モンスター、浦澤直樹、Journal of Child Psychology and Psychiatry, Dr. Essi Viding, genetic, King's College Londond, abnormal psychology, personality psychology, 児童心理学、clinical psychology,
かなり年下と結婚できる能力
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先週、未婚の母は結婚できたとしてもかなり年上の相手になってしまうという記事を書いた。これってつまり子持ちは結婚する相手としての価値が下がるし、年齢が上がると結婚する相手としての価値が下がるので、釣り合うって訳だな。

そう考えると、年を取っても、若い人と結婚できる人ってそれだけ魅力的なんだろうな。最近だとビリー・ジョエルが30歳くらい年下のコ(22歳くらい)と結婚したよな。これは財力的な魅力か。ちなみにその時のビリー・ジョエルの実の娘は21歳くらいだった。これは娘としてはキツいな。
デミ・ムーア(写真)は40過ぎで子持ちなのにアシュトン・カッチャー(多分若い俳優ではもっとも人気が高い)と結婚したよな。デミ・ムーアは確かにかなりホットだもんな。
個人的に許せないのは谷村有美がマッキントッシュ社の日本社長と結婚したこと。あんなオヤジのどこが良いんだよ?というのが一ファンの気持ちなんだが、年齢をカバーするだけの何かがあるんでしょう。または谷村有美くらいの上昇志向女を扱えるのはあそこまで年と経験を積んでいないと無理だったのかな。
皆さん、お幸せに。

検索キーワード:ピアノを弾ける女、頭のいい女、ホットな女、金持ち男、ピアノ男、piano man, Billy Joel, Demi Moore, Ashton Kutcher,
腸過敏には催眠療法が効く
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精神的な腸過敏の医学的な名称は過敏性腸症候群(IBS)と言って、ストレスが下痢などを引き起こす状態が何年も続くことを言う。ある研究者が催眠療法を施したところ、成功率が70%と非常に高かったという。

この研究者は、過敏性腸症候群の患者250人に21時間の催眠療法を施した。催眠療法中に患者は、どうしたら消化器官の反応をコントロールできるかを学ぶ。その結果、70%が症状を改善できた。ただし、誰にでも効くわけではなかった。特に効果が現れたのは女性だった。

この結果はありえるな。催眠療法というのは精神的なものには効くとされている。そして、効く人にはとても効くが、効かない人には全く効かないと言われている。更に、女性にはより効きやすいとされている。なので今回の結果は催眠療法の概念に合致している。でも成功率70%は一般の催眠療法の結果よりもはるかに高いな。何をもって成功としたのかの規準を読んでみないと分からないけどね。

結果の有効性は吟味するまで分からないけど、患者の方にとっては症状が改善する望みがあるというのは良いね。

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元のニュース:Hypnotherapy an effective treatment for irritable bowel syndrome

検索キーワード:心理学、催眠、催眠療法、hypnosis, hypnotherapy, irritable bowel syndrome, 腸弱会、University of Manchester, Peter Whorwell,
バナー広告見えない現象
バナー広告は無視されやすい。心理学ではこの現象を「バナー広告見えない現象」(banner blindness)という。

バナー広告とはウェブ上の広告で、例えばサンスポのホームページなどの大きなスペースに表示される広告などの総称だ。これだけ大きな公告ではあるが、それが人目に付きやすいとは一概に言えないようだ。

この研究者はバナー広告のように大きなスペースをとって大きな文字で書かれているものがどのくらい無視されるかを調べた。20代と30代の6人の被験者に協力してもらった。下記のようなホテルのウェブで、24の情報を調べる。例えばホテルの電子メール・アドレスを調べるなど。24の情報のうち、20の情報は青い文字をクリックすれば目的にたどり着ける。残りの4つの情報は赤い四角の中の文字をクリックしなければ目的の情報にたどり着けなかった。

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結果、青文字から情報へ行くのの成功率は94%だったのに対し、赤い四角から情報へ行く方の成功率はたったの58%だった。被験者の数名は赤い四角の中の文字を全く読みもせず、情報の獲得に失敗していた。

この例は、赤い巨大な四角の中の大きな文字は見過ごされやすいことを示している。この現象はこの特定の状況に限らず、巨大な文字では往々に起こることらしい。他の色にするなど、条件を変えても。

これをバナー広告に見立てて、バナー広告は無視されやすい、というのが結論だ。この研究者は、大きい文字などは大概が広告だ、ということを人は学習してしまっているので無視するのが一つの要因だとしている。こういった学習的な無視の他にも、大きい文字が無視されやすい特性があるのかもしれないとしている。

大き過ぎる物って目に入らないよな。僕の体験では、ソフトウェアをどのサイズでインストールかを選ぶ時などのでっかいボタン(下の画像みたいの)が最初は見つけられなかったよ。ボタンが大き過ぎる。あと文字もクリックができるようにしてくれれば良いのに。この辺はメンタル・モデルを考慮するのが大事だな。
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あとウェブ上の広告の場合は、母数(見る人の数)が大きいんで、半数くらいが広告に気付かなくても、それでも宣伝効果は十分に大きい。ウェブの広告に関しては、今後、その宣伝効果、ポップ・アップ広告、フローティング広告(記事上に埋め込まれた広告)、それらをアニメーションにした時の効果などを紹介していくつもりです。

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元の記事:Banner Blindness: Web Searchers Often Miss "Obvious" Links

検索キーワード:心理学、認知心理学、ウェブ・デザイン心理学、ウェブ心理学、ソフトウェア心理学、Jan Panero Benway, David M. Lane , Rice University、pop-up ad, banner ad, floating ad, advertisement,

携帯やiPodで聴覚障害になる危険性
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携帯電話や携帯音楽プレイヤーが若年層の耳を悪くしている一因かもしれない。

この研究者によると、最近の10代、または20代の若い成人に聴力障害が増えているという。その症状はまさに加齢により耳が遠くなるのとそっくりだという。これは、彼らが一日中ずっと耳を使っているので消耗が早く、若いのにすでに中年の耳を持ってしまっているのだろう、としている。この一日中耳を使うというのは、携帯電話やiPodに代表されるような携帯音楽プレイヤーの普及によるものが一因だろうという。

まず、この研究には同感。聴覚障害になるのは2つの因子からなる関数だ。その2つの因子は音の大きさであるデシベルとその騒音にさらされる時間。例えば電話の着信音は85デシベルと言われていて、このレベルの騒音を一日に8時間も聞き続けるとそのうちに聴覚障害になる。別の例だと、ゴミ収集トラックが100デシベルで、一日15分で聴覚障害の危険性。

このニュースでは携帯音楽プレイヤーの音量は書いていない。使う人のボリューム設定により大幅に変わるので一概に言えないのかな?それでも、僕の感覚から予想すると携帯音楽プレイヤーの音量は電話の着信音(85デシベル)と同じくらいだろう。なのでこれを一日8時間、聞き続けると難聴になる危険性があると解釈して良いと思う。ゴミ収集トラック並(100デシベル)の音量で聴いている人は一日15分の使用で聴覚障害になる危険性。皆さん、耳は消耗品なんで大事に使いましょう。

ところで、聴覚の研究っていつも似た研究ばかりで目新しいものが無いね。もっと生活に生かせるような新しい研究を誰かやってくれないのかな。例えば、騒音の中で携帯電話の会話をより聞き取りやすくする方法とかね。

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元のニュース:Hearing loss among college students becoming more common

検索キーワード:心理学、認知心理学、Purdue University, audiologist, 聴覚学、聴覚科学、 hearing loss in young adults, 聴力損失、難聴、聴覚障害、Robert Novak, tinnitus, 耳鳴り、
医者を信頼していない患者は薬を飲むのを止める
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患者が処方された薬を飲み続けるかは複数の要因が関係している。今回の研究では4つの要因を調べた。医者への信頼、薬の金額、患者の精神状態、年収がそれぞれ薬を飲む行動への影響があった。

912人の糖尿病の患者を調べた。彼らの大部分は年収が低く2万5千ドル以下(300万円以下)だった。

影響が大きかったのが医師への信頼と薬の金額の複合条件だった。つまり薬の代金が月に100ドル(1万円)を超える場合で、担当の医師を信頼しているかどうかの違いだ。信頼している患者は薬代が高くてもほぼ薬を飲み続け、たった11%が飲むのをやめた。対して、担当の医師を信頼していない患者は薬代が高いと30%もが薬を飲むのをやめてしまった。

影響が大きい他の複合条件は、薬代と精神状態だ。同じ薬代が高い条件でも、鬱と鬱でないのとでは、鬱の症候が出ている患者のほうが2倍もの確率で薬を飲むのをやめてしまった。

更に悪いことには、大部分(3分の2)の患者は薬代が高くてもその苦情を医師に言わずに黙って薬を飲むのをやめてしまう。

以上がニュースの概略。これは難しい問題だよね。まず、薬代って本当に高いよ。資本主義のシステムの中では薬代が高くなるのは当然だろう。国は資本主義を選ぶからには資本主義で必然的に生まれる問題を国が何かしらの形で援助をする必要があると思う。この点はそのうちに詳しく語りたい。

次に信頼関係も、やはり難しい。信頼関係って医師がちゃんとしていれば作られるものではなくて、患者との相互関係だ。今回の結果でも分かるように、医師がしっかりとしていたとしても患者が鬱だったらそれでその患者は薬を飲むのをやめてしまう可能性がぐんと高くなってしまう。

ま、医師の人にとってはつらいニュースかもしれないけれど、結局はできる範囲のことをするしかないよな。話しやすい雰囲気をかもし出す、対等に見えるように振舞う、担当医師以外の第二者(例えば看護婦)が患者の話を聞いてあげる、患者の財務状況を事前に聞いて対応する、などだろうか。

それから僕も医者からもらう薬って本当に効くのか怪しいなぁと思う時があるんで、薬開発時の統計結果を添付するなんて良いかもね。統計の効果量などを見れば、患者も納得して医師をより信頼するかも。

あと心理学の見地から僕が考えるのは、意思疎通がこれだけ多くの社会場面で問題になるのなら、学校の科目として教えてしまっても良いと思うよ、いっそのこと。悲しい現実だけどね。

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元のニュース:UMHS Press: Why don’t some patients take their medicines?

検索キーワード:心理学、意思決定、diabetes, depression, John Piette, University of Michigan, Archives of internal Medicine, 医療心理学、コミュニケーション、意思疎通、医師患者関係、統計エフェクト・サイズ、effect size,
未婚の母の結婚相手探しは困難
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未婚で子供を産んでしまった女性は、その後に結婚する可能性が低い上に、結婚できたとしてもかなり妥協した結婚相手になる、というニュース。

独身女性で、子持ちと子無しを比べると、子持ちの女性は30%も結婚に至る確率が少なかった。また仮に結婚できたとしても、その結婚相手は釣り合っていない相手で、年齢が明らかに高かったり、教育が劣っていた。

結果には納得。男として、コブ付きは敬遠するよな。進化心理学の人たちはこれを自分の遺伝子を受け継ぐものに100%の力を注ぎたいからと説明する。まぁそれも本当かもしれないけれど、子供を育てる楽しみは一から経験してこそ、その子に愛情をより注げると僕は思う。それに最初から扶養家族が一人付いてくるのもきついし。

社会学の研究ではこうやって現状の状況を確認するのが多いよね。昨日、紹介したニュースも現状の確認だったな。それだと結果に納得するだけで自分の生活にどう活用して良いのか分かりづらい。今回の結果を無理に活用しようとすれば、孕んでしまったら、結婚しておくべきだ、って感じだろうか。これだと未婚の母になっってしまった後での対応は全く分からない。

心理学はその点、生活に活用するにはどうするかを主眼に置いた研究が多い。社会心理学や地域心理学(コミュニティー心理学)なら、今回のデータを元に、未婚の母の中で釣り合った旦那にめぐり逢える人とめぐり逢えない人の違いはどんな要因か、なんてことを研究するだろう。例えばその結果で仮に、外交的で女友達との付き合いがよい人は立派な旦那がいる相関関係が強い、などの結果が出ればそれは自分の生活に活用しやすいだろう。社会学はその元になる土台のデータを研究してくれているので相互協力関係はもちろんあるけれど。

より良い社会を作るのに直接貢献できている、と素直に感じられる点で、僕は心理学が好きだ。僕が心理学を研究しているので偏見があるのかもしれない。社会学を勉強している人とちゃんと話し合ってみたいな。反論など匿名でもお待ちしています。

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元のニュース:Ohio State Unviersity: UNWED MOTHERS HAVE DIFFICULTY FINDING 'GOOD' HUSBANDS, STUDY FINDS

検索キーワード:心理学、social psychology, community psychology, sociology, unwed, single mom, evolutionary psychology, evolution, シングル・マム、できちゃった婚、できちゃった結婚、shotgun marriage, 強制結婚、妊娠結婚、片親、Zhenchao Qian,
自然科学の研究者は宗教に関心が薄い
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社会科学の研究者と自然科学の研究者を比べると、社会科学のほうがより神を信じ、教会などの宗教的活動に参加していた。

自然科学とは物理学、化学、生物学などの物と物の反応を論理的に見る学問だ。それに対し、社会科学とは政治学、経済学、歴史学、教育学などの人と人の関係を見る学問だ。もちろん社会科学でも論理的な思考は大事だが、どちらかと言えば人がどう反応するかが要なので、人間味のスキルが大切な学問だ。ちなみに心理学は両方に跨っているが、どちらかと言えば社会科学よりだ。

1646人の大学教員を調べた。15ドルの謝礼を添付し、36の質問に答えてもらった。自然科学者の38%もが神を否定したのに対し、社会科学者は31%しか神を否定しなかった。

細かく見ると、自然科学の中でも目立ったのは生物学者で41%が神を否定した。これは納得。進化論と神が一致しない案だと考える人は多いもんな。それとは対照的に社会科学の中で目立ったのは政治学者で、27%しか神を否定しなかった。

ガリレオ・ガリレイは天文学者だったので自然科学者と括れる。彼の有名な言葉「それでも地球は回っている」に代表されるように、自然事象を研究すればするほど、従来神が整えていたとされる事象が自然科学の事象だと気付くのは当然だろう。ただそれが直接的に神を否定することに繋がる訳ではないと思うが。

研究の結果自体には驚かないけれど、この研究者がこの研究のために研究助成金を3千万円(28万ドル)も獲得したのが驚きだ。自然科学と社会科学で宗教心が多少違うのが分かったところでそれが世の中のなんの役に立つのだろうか?という疑問を覆すだけの説得力ある助成金願いを書いたに違いない。この研究者がどんな文章を書くのかすごい興味が沸いてきた。

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元のニュース:Natural scientists are less likely to believe in God than are social scientists

検索キーワード:Elaine Howard Ecklund, Rice university, Galileo Galilei And yet the earth still moves!
ビデオゲームで手術の腕を磨く
laparoscopic

ビデオゲームをすることにより、手術の腕前が上がるかもしれないという実験報告。

腹腔鏡手術というのがあって、これは患者の腹に穴を開けてカメラと手術機器を腹の中に入れて、手術はカメラ映像を見ながら行う(上の画像)。つまりこの手術はテレビゲームに似通っている。

テレビゲームとこの手術の類似点を見つけたこの研究者は、テレビゲームをする事が手術の腕前を上げるのではないかと考えた。10人の大学生を集めた。彼らは腹腔鏡手術の経験は無く、テレビゲームの経験も少ない。5人ずつ2つの群であるAとBに分ける。2つの群とも腹腔鏡擬似手術(シミュレーター)を一週間の間隔を開けて2回行う。ただ一つの違いは群Bだけはその一週間の間、一日1時間テレビゲームをする。ゲームはジェームス・ボンド007:ゴールデン・アイだ。銃を向けたりする仕草は腹腔鏡手術に近いとも言えるね?
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結果、ゲームをした群Bの方が2回目の手術でより進歩が見られた。更に、群Bの中でもゲームでうまくプレーした者の方が2回目の手術でもよりうまく手術ができ、その相関指数rは0.72と高かった。

ただし引き続き行われた実験で医学研修生を使った実験では必ずしもゲームが手術技術の向上には繋がらなかった。この研究者は今後、ビデオゲームの種類の違いで手術の腕前の上達に違いが出るかを見ていくという。

心理学って、こうやって人の訓練とかにも役立ってるんだよな。で、結果はある程度当然かなとも思うよ。どちらも目で見たものを手で表現するんだから似た作業だし。僕は基本的にはテレビゲームは人間を悪い方向に導く影響の方が強いと思っているけれど、こういう役立つ方法もあることをゲーム業界の人はもっと宣伝すればゲームへの非難が少なくて済むかもね。

あと患者との人付き合いとかの関係とかも興味あるな。手術担当医に「任せてください。ビデオゲームで鍛えてますから。」なんて言われたら固まるよ。

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元の論文:Sara L. Waxberg , Steven D. Schwaitzberg *, Caroline G.L. Cao. (2005) EFFECTS OF VIDEOGAME EXPERIENCE ON LAPAROSCOPIC SKILL ACQUISITION. HFES. 
この論文は書き慣れてない人が書いているらしく、ところどころに幼稚な英語が滲み出ている(といってもネイティブの英語だと思うが)。しかしそれが逆に文を平易にして読みやすくしている。英語で論文を書く身としては、こういう例にも学ぶことがあるな、と思ったよ。

検索キーワード:心理学、訓練移行、認知心理学、hand-eye coordination, 視覚と手の協調運動、 training transfer,

画像の引用元:http://www.gfmer.ch/Medical_education_En/project_laparoscopy.htm
遺伝子が決めるあなたの記憶保持能力
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作動記憶(ワーキング・メモリー)の一つの能力は、記憶を一時的に保持することで、言わばパソコンのメモリ容量のようなものだ。作業記憶の記憶保持能力が低いと一度に少しの量しか覚えて置けない、または一度に少しの量しか情報を処理できない。

この研究によると、作動記憶の記憶保持能力の個人差は遺伝子によってあらかじめ、ある程度決められてしまっているらしい。

作動記憶の能力を決めるものの一つは前頭前野のドーパミンだという。そのドーパミンに作用する遺伝子の違いで作動記憶の能力に差があるかをこの研究者は実験で測った。具体的に言うと第9染色体上にあるG444AだかDBH遺伝子(ドーパミン・ベータ・ヒドロキシラーゼ遺伝子)だかの違いを調べたらしい。この辺の単語はまだ僕が勉強してない分野なんでこれから勉強していかないとなぁ。

この遺伝子の組み合わせは3種類あってAAかAGかGGだそうなんだが、これが綺麗に作動記憶の結果に現れている。図に示した通り、GGのタイプの遺伝子を持つ人たちの作動記憶の結果が突出して良かった。(緑とオレンジの結果に限る。)

実験を細かく見る。103人の健康な人の遺伝子を見た。G444Aの遺伝子型はAAが17人、AGが39人、GGが47人だった。実験はコンピューター画面の点の位置の記憶保持を使って行われた。
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図が示すように、被験者は画面2のように3つのドットを見る。その後、画面4のように1つのドットを見て、このドットが画面2のドットの一つであるか、全く違う位置のドットかを答える。難易度(メモリー・ロード)が3段階あり簡単なのは画面2のドットが1つだけ。これが2つ、3つとなるにつれ難しくなる。

ドットが一つの場合(青い線)は結果に差はない。どの遺伝子型でも正答率が高い。しかしドットが2つの場合(オレンジの線:難易度は中くらい)とドットが3つの場合(緑の線:難易度は高い)はGG遺伝子型の結果が最も良く、AG型はまあまあで、AA型の結果は悪い。

この結果からこの研究者はこの特定の遺伝子が作動記憶の記憶保持に影響を与えていると結論している。尚、作動記憶に影響を与える要因は数多くあり、遺伝的なものと育ち(または教育)などがある。この研究者は遺伝的なものの一つを特定したことになるが、今後、他の遺伝子が作動記憶に与える影響も研究していくそうだ。

非常に面白い結果だね。心理学者というのは事象を見るのが主たる研究だ。事象というのは人がどのくらいの能力があるかなど。それを遺伝子と結びつけるのは新しい研究分野で、実際にこうして相関関係が示されているのには驚きだ。統計的有意さは0.05以下なものの、エフェクト・サイズは0.25とまだ小さい。今後に他の要因を見つけていって、回帰分析などしていくともっと説得力が高まるだろう。もし僕が今、大学に入学して一から学ぶとしたらこの分野を選ぶだろうな、と思うくらい興味深い分野だよ。

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パラスラマン博士が共著した本。SDTの項目は詳細ですばらしい。

D. Davies

The Psychology of Vigilance



元の論文:Raja Parasuraman,1 Pamela M. Greenwood,1 Reshma Kumar,1 and John Fossella. George Mason University and 2Weill Medical College. (2005) Beyond Heritability. Neurotransmitter Genes Differentially Modulate Visuospatial Attention and Working Memory. PSYCHOLOGICAL SCIENCE. 2005. March. Volume 16. Number 3. p.200-207. (PDF)

検索キーワード:心理学 生物心理学 神経心理学 神経科学 genotype phenotype、cognitive neuroscience, 認知神経科学、NeuroErgonomics, regression analysis, working memory, p, probalibity, effect size, f-test, 認知心理学、ワーキング・メモリー、ラジャ・パラスラマン、
一卵性双生児でも遺伝子は違う
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遺伝子は人が生きていく中で変わっていっている。生まれた時のままではない。そしてこの変化には個人差がある。例え一卵性双生児同士であったとしても。

一卵性の双子40組を調べた。3歳から74歳までの双子同士で比べると、年齢が低いほどその組のゲノム(遺伝子情報)が同じで、年齢が高くなるほどその双子の組の中でのゲノムの違いが大きかった。更にこの研究者は生活習慣(喫煙、飲酒、食生活、運動など)のアンケートも同時に行っており、どの生活習慣が違いを生むのかを調べているらしい。でもニュースには詳しいことが書いてない。

この違いは、生まれた後でのゲノムの違いなので「後成的遺伝」、またはエピ・ゲノムとかエピ・ジェネティックスと呼ばれる。この変化は、DNAの塩基配列は変化せずに、遺伝子情報だけが変化するという考え方だ。

他の研究者で、もっと過激な考え方をしている人もいる。生活環境や行動が与える影響はもっと大きいとする考え方で、生物の行動はゲノムだけではなくDNA配列までも変えてしまう、という案だ。この論文はそのうちに紹介。

どちらにしても最近の説では、遺伝子とその生物の行動は双方向で影響を与えてあっているというのが一般的だ。この分野は心理学の中でも急成長している分野で、遺伝子だけが人の性格を決めるのではなく、特定の環境や行動と遺伝子が相互作用して人の性格を決める、などの研究がされている。

あとこのニュースでは一卵性双生児の二人は生まれた時は同じ遺伝子を持っている、と書いているけれど、双子二人の後成的遺伝の違いは受精後すぐに始まるという研究もある。

ネイチャー(生まれ持った性質)とナーチャー(育ち)の両方が人の育成に関わってくるというのは大多数の研究者の一致した意見であった。しかしそれは2つの独立した要因だと考えられてきていた。今回のニュースをこの言葉に当てはめると、育ちは生まれ持った性質をも変える可能性があるというすごく面白いニュースだ。今後のこの分野のニュースに注目したいね。

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素のニュース:Ohio State Unviersity: IDENTICAL TWINS MAY HAVE MORE DIFFERENCES THAN MEET THE EYE
元の論文(PDF)

検索キーワード:心理学 生物心理学 神経科学 神経心理学 後成的遺伝学 エピゲノム エピジェネティックス epigenetics epigenome neuroscience neuropsychology biological psychology 表現型 遺伝子型 Christoph Plass, Ohio State University, Manel Esteller, methylation メチル化、Epigenetic differences arise during the lifetime
of monozygotic twins, www.pnas.orgcgidoi10.1073pnas.0500398102


学会に出席後ですごく興奮しているよ
conference

学会に出席してきました。世の中にはこんなにも面白い研究をしている人がこんなに沢山いるんだな。感動してしまったよ。その感動するほど面白い研究はおいおいこのブログで紹介するとして、とりあえずはこのブログをやっていて本当に良かったな、と思う学会だったよ。

ブログの更新や読者の方のご意見を読む過程で得た幅広い知識のお陰で、学会での人の発表が驚くほどすんなりと理解できました。このブログを通して心理学の様々なジャンルを理解できるだけの基礎知識が培われていたことを初めて実感。これはブログの読者の皆さんのおかげです。ありがとう。

更に、このブログで過去に紹介したニュースの研究者の数名にも会ってきました。彼らが学会に来るとは知らなかったけれど、以前から抱いていた疑問点を質問できて満足です。

それと自分と同じ研究分野の人とたくさん話ができたこともかなり刺激的だったな。これもこのブログのお陰なんだけど、幅広い知識を身に付けることで、人の研究をいろいろな角度から考察できるようになった気がするよ。

そんな至高体験を経てしまったのでブログの更新の大切さを痛感。今後はブログを真面目に更新しようかな、なんて息巻いてます。知識を使うはずの大学院生なのにほとんど体力勝負だな。今後もよろしく。

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