共同作業ではあったけれども、もう英語の作文は暫くは勘弁して欲しいね。細かい言い回しの違いなんか僕には理解不能。affectとhave an effect onとinfluenceの違いなんか分からんよ。そんな修正作業を20頁もやると気が狂いそう。
それと論文を書くのは本当に手間の掛かる作業。何百もの論文を読んで、その中から参照させてもらった論文の数が120。それらを組み合わせて僕らの解釈した見解を作る。苦労した分、学ぶことの多かった作業だったな。疲労感と達成感をしみじみ感じている。
そんな余韻に浸る間も無く、今日はポスト・ドク(大学院博士号取得後の研究員)になる友達のパーティー。それと僕らの論文の脱稿祝い。秋学期ももう始まっているので、その準備なんかに追われる日々になる予定。
最後に、今回の論文を書くのにはこのブログで紹介したニュースや論文なんかを多数使いました。ブログを更新することが自分の研究に役立つのはとても嬉しいことです。読者の方からのメールやコメントが新しいことに気付かせてくれたりするのには本当に感謝しています。今後もそういった相互関係を築けると良いな、と思ってます。本当にありがとう。

僕らが目に映すものを脳は常に勝手に理解する訳ではない。時には見える図形をある程度の注意を払ってその図形として頭に描き続けなければ、脳は図形を認識するのを止めてしまう時がある。 上の図形は「ネッカー立方体」と呼ばれる図形で、見る者の意識の仕方により、左下の四角が前面に出ているようにも見えるし、右上の四角が前面に出ているようにも見える。 しかし一度笑ってしまうと、その意識は中断されて、立体感は失われてしまう。 ふーん、興味深い発見だな。この研究者は「面白い発見でしょ?」くらいにしか語っていないようだけれど、今後の心理学に重大な影響を与える第一歩かもしれないと僕は思う。 今までは感情と視覚認知というのは接点の少ない別の心理学だと思われてきている。しかしこの実験結果が本当だとすると、視覚認知に使う脳の部位は感情に支配されてしまうのかもしれない。もしかしてどちらの活動も脳の同じ部位を使って処理しているのかもしれない。そしてその部位は一度に一つの感情、または一つの意識しか通過させられないのかもしれない。 一度に一つの感情しか人間は処理できない、という考え方が心理学にはあって、例えば「この人のことは好きでもあるけど嫌いでもある」と思ったとしても、それは2つの感情を一つ一つ高速に処理しているとも考えられる。 感情を処理する部位と同じ部位を視覚処理も使うと考えるとワクワクするよ。今までの心理学が全く踏み込んだことの無い分野。これを元に人の感情と認知活動がもっと研究されると良いね。 元のニュース:Laughter plays tricks with your eyes 検索キーワード:心理学 認知心理学 Necker cube, binocular rivalry, Jack Pettigrew, University of Queenlsland, Journal Clinical and Experimental Optometry, banal phenomenon, Kanizsa cube, optical illusion, visual ambiguity, uncertainty, inexactness of meaning,

小学校低学年では「誕生日効果」が見られたという。誕生日効果、つまり生まれが早い方が良くできて、より遅く生まれた生徒の方が問題が多かった。
多くの国では授業は一年ごとに区切られる。つまり同じ勉強を最大365日近い誕生日差で受けることになる。その誕生日の差が学業に影響を及ぼすかをこの研究者は調べた。
カナダのオンタリオ州の子供552人を被験者とした。男390人。女162人。学年幅は園児から高校生まで。カナダでは年度の分かれ目の誕生日は12月31日と1月1日だそうだ。統計をやりやすくするために誕生日を2ヶ月毎の6群に分ける。
これによると、誕生日効果があったのは低学年(園児から小学3年生まで)だけだった。しかも遅れを見せたのは9~12月生まれだけ。1~8月までは問題行動を示した数は平坦だった(平均38の問題行動)のに対し、9、10月生まれは問題行動数が52に増え、11、12月生まれは更に問題行動が増え66。ちなみに統計の差を表すカイ二乗試験ではΧ二乗=19.8。p<0.01という有意の差を示した。
問題行動の内訳を見ると、誕生日と関係があったのは学業の問題だった。遅くに生まれた方が学業により問題が有ったのに対し、品行の問題は誕生日とは関係が無かった。
尚、主に誕生日効果があったのは男児で、女児は誕生日と学業問題の相関がほとんど無かった。これは、男児はこのくらいの小さい頃だと成長が遅いため差が顕著に出るのだろう、とこの研究者は説明している。
また小学校高学年(4年生以上)、中学生高校生では誕生日効果は無かった(カイ二乗=6.25と3.69でp>0.50)。
結果は理解できるね。誕生日の差は、小学生でも感じられたよな。僕の感覚では、中学生や高校の入試でも誕生日の差が感じられたんだけど、それはこの研究結果とは違っているんだな。日本では年度が4月から始まるからその辺もカナダの研究(1月で区切る)とは違ってくるのかもね。
それとこの研究は学業問題と品行問題の数で調べているけれど、学力テストの点数とかで比較すると面白そうだな。研究が古い(1980年)んで、そんな研究ももう有るのかしらん。
元の論文:Glenn W. DiPasquale, Allan D. Moule, Robert W. Flewelling. 1980. The birthdate effect. Journal of Learning Disabilities. volume 13. Number 5. May 1980.
検索キーワード:心理学、教育心理学、発達心理学、男女差、成長、

IBMのスーパー・コンピューターを使って、人間の脳の新皮質がどのように働いているのかのモデルを作る計画が始まった。
この企画はコンピューター会社のIBMとスイスのローザンヌ工科大学が2年間の研究期間の予定で行われる。新皮質というのは脳の考える部分を担当する部位と言われており、言語、学習、記憶、複雑な思考などの機能があると考えられている。大脳皮質の9割程度が新皮質という部分。
IBMのスーパー・コンピューターであるブルー・ジーンは世界最速のコンピューターで、1秒間に22兆回の計算ができるらしい。この辺は専門外なんではっきり言って全然分かりません。ははは。
しかしこの企画はカッコいいね。脳がどう働くかのモデルって今まではほとんど作られていないんだよね。生物学的にどの部位がどこと繋がっている、という原始的な研究の他は推論でモデルが作られている程度。結果が楽しみだな。
元のニュース:IBM and EPFL Join Forces to Uncover the Secrets of Cognitive Intelligence
検索キーワード:心理学 生物心理学 認知心理学 知覚心理学 Hanry Markram EPFL Ecole Polytechnique Federale de Lausanne, Tilak Agerwala, IBM, neocortex, Blue Gene,

アメリカでは細かい買い物でもカード(クレジット・カード又はデビット・カード)で行う。たった1ドルの物に対しても普通にカードで決算する。なので、どの個人が何をいつ買ったかがコンピューターに記録しやすい。
自分の情報を管理されるというのは実は結構おいしいことだ。一顧客がなにかの行動を取れば、それを店舗側が把握してくれるからだ。
先日、ラム・アンド・コークを作ろうと思い、中規模スーパーDでコーク12缶を買ったらそれが4ドル50セント(500円くらい)もした。通常の2倍近い。12缶を2セット買えば5ドルって書いてあったのは読めたんだけど、1セットだけでも同等の値段すんのかよ、と少し頭に来る。レジの女の子に値段を確認してしまったよ。
そこで早速、翌日にEメール。「高いよ。2セットの値段を大々的に表示して、1セットの値段を小さく書いているせいで、勝手に1セットでも安いんだと思い込んでしまった。騙された気分だ。」
そしてその日からこの中規模スーパーDに行くのを止めてみる。行っても現金を使うことで、僕が行ったという情報を残さない。
そして1ヵ月後に、この中規模スーパーDのマネージャーから電話が掛かってきた。「Eメール読みました。コメントありがとうございます。価格表示の方法が騙したみたいな気にさせてしまったみたいですね。そしてその後、来店してくださってませんね。価格設定の件を説明したいんですが、聞いていただけませんか?」
とても紳士的な話し方と対応。そして、コーク12缶を無料でくれるというサービスを提案してくれた。僕の一方的な勘違いと、無茶なクレームに対しても大人の対応。よくできた会社だな、と思うよ。そんな訳で、それ以来この中規模スーパーDを贔屓にさせてもらってます。
今回の件はスーパーDが中規模だったので、僕の抗議をすぐに把握したけど、ウォルマートはそんなことしないよな。ウォル・マートは顧客情報集めても、商品の供給に活かすだけ。安いのは認めるけど。
ちなみにウォル・マートは世界最大の日常品店。その顧客管理するコンピューターは世界で2番目に大きいコンピューター・システムだそうだ(世界一のコンピューターシステムは米国防総省のだったかな)。
最後に話を無理矢理に心理学に関連付けてみると、顧客管理のコンピューターってのは人間の脳がやっている作業に似ている。顧客管理では何月何日の何曜日の何時に天気が晴れだとある商品が良く売れる、という統計情報を記録し、次回の似た状況にその商品を補充したり目立つようにする。脳では、例えば言葉を学ぶ時に、ある音韻は特定の音韻の後に来ることが多く、それはどんな場面で使われる、なんていう気の遠くなる統計を覚えていて、それにより言葉を学んでいくと言われている。その話は又の機会に。
検索キーワード:顧客管理 顧客満足 Walmart 顧客情報 customer usage information 心理学 認知心理学 言語心理学 確率

人は否定的な感情に対する語彙がよりあるという。
この研究者は感情に関する単語を思い浮かぶだけ書くように被験者に指示した。すると否定的な感情の単語が多かった。割合にすると、否定的な感情の単語が50%、肯定的な単語が30%、中性の単語が20%だった。この結果は年齢や言語を通して一緒だった。メキシコ・シティでスペイン語を喋る20歳も65歳も、シカゴで英語を喋る20歳も65歳も同じ割合で感情の単語を書いた。
この理由の推察が挙げられている。肯定的な感情を抱く時は物事がすんなりうまくいっているので、意に留めない。しかし否定的な感情を抱く時には何かまずいことが起きている。なので脳は物事をゆっくりと慎重に処理するので、否定的な感情を心に留めやすい。更に、今現在悪い物事を改善させるために原因を突き止めるなどの細かい区別が必要なので、否定的な単語が多いのだろうとしている。
確かにそうかもね。機械の取扱説明書でもトラブル・シューティングなどの情報はあるけど、うまくいっている時の解説なんて無いもんな。でも英語とスペイン語を比べてもあまり意味が無いんじゃないの?どっちもヨーロッパ語源群なんだから単語が似た比率になるのはそのせいだと言われちゃうでしょう。英語と日本語とか全く異なる組み合わせで比べれば良いのに。研究者の名前がメキシコ系(ジュリア・サンチェス)だから、英語とスペイン語のバイリンガルなんだろうけど、自分のいるグループの違いは大きく見える、ていうあの心理学効果(名前は失念)が思いっきり出ているよ。
元のニュース: Penn State University: Linguistics may be clue to emotions, according to Penn State research
検索キーワード:心理学 認知心理学 言語心理学 Robert Schrauf, Julia Sanchez Mexico city Chicago, negative emotion positive emotion, neutral, journal of Multilingual and Multicultural Development, Spanish, English

味覚を感じられない人でも食塩水より砂糖水の方を好んだという。つまり食品の嗜好というのは意識で好きだと分かる物の他に何か別の要素があるのだろう。
この実験では、何年も前から脳の損傷を負っている患者Bという人を使って行われている。患者Bは味覚を感じられず、そして記憶障害になっているという。映画「メメントー」(Memento)のように40秒くらいの記憶しか覚えておけない。なので見慣れた顔も認識できないし、味も何の味だかは40秒を越えて覚えていられない。つまりこの患者Bは、長期記憶の中でもエピソード記憶を引き出せない状態になっている。他の長期記憶である手続き記憶、知覚表象システム、意味記憶は問題ない。よって言葉も普通に喋れる。
そんな患者Bに砂糖水と食塩水を飲んでもらった。味が分からないのなら好き嫌いも無いだろうという予想通り、患者Bはどちらも好んで飲んだ。
しかしもっと飲むように促したところ、患者Bは砂糖水の方を好んで飲み続けた。
このことから、この研究者は人が甘いものが好きだというのは味覚だけではなく、生来の何かがあるのだろうとしている。ソフト・ドリンクが甘いのもこの特性のせいで人々に支持されているのかもしれない。
この結果は面白いね。甘味というのは原始的に最も好まれる味だ。4大味覚のうちの他の3つは毒になりうる。苦味、酸味、塩分は時に体の毒になるので、動物は敏感に察知して、食べられるのかどうかをよく調べる。なので砂糖水をより受け入れたのは、脳のどこかで甘味を察知しているのかもしれない。意識や長期記憶では感じられなくても。将来、味を無意識でどこまで感知できるかなんて研究が進むと面白そうだね。
研究者の一人はダマシオ博士なんだな。ダマシオ博士に付いては小枝さんが幾つか本を紹介している。
研究者:Ralph Adolphs (California Institute of Technology), Daniel Tranel (University of Iowa), Michael Koenigs, Antonio R. Damasio,
元のニュース:Caltech: Preferring a Taste and Recognizing It May Involve Separate Brain Areas, Study Shows
検索キーワード:心理学 認知心理学 タルヴィング Tulving 1995 手続き記憶 procedural memory 知覚表象システム perceptual representation system 意味記憶 semantic memory 一時記憶 primary memory エピソード記憶 episodic memory 長期記憶 短期記憶 作動記憶 working memory herpes brain infection 味覚 旨み umami MSG 無意識 サブリミナル
グーグルで例えば「ベースボール、カード」などと検索すると、その結果は図のように2列のカラム(行)で表示される。左側のカラムにはインターネットを検索した結果が表示され、右側のカラムには広告料を払っているスポンサーの中で検索文字に関連するウェブが表示される。

この研究者は検索エンジンの利用者が左側のカラムと右側のカラムをどんな比率で利用しているのかを調べた。56人の被験者に検索結果ページを6回使ってもらった。つまり総計330回の検索結果ページが表示された。そのうちの80%は左側のカラムの中の結果を最初にクリックした。反対に右側のカラムを最初にクリックしたのはたったの6%だった。残りの14%はニュースには書いていないけれど何もクリックしなかったのだろう。
この330回の実験の中で、半分に当たる165回の検索結果は実は操作されていた。つまり左側と右側のカラムの内容を入れ替えていたのだ。それにも関わらず、利用者はやはり操作無しの場合と同様の行動を示した。つまり左側のカラムの結果をまずクリックした。
この実験結果よりこの研究者は、検索エンジンの利用者は広告主が関与している検索結果には猜疑的で、クリックには繋がらない、という考察をしている。
基本的には賛成。右側のカラムなんてほとんど見もしないもんな。これは横書き文字(左から右の横書き文字)を見る人間の習性で、目はまず左上を見て、そこから流れに沿って視線を移していくわけだな。検索結果の場合は視線は下に移動していくんで、右側には目が行かない。なんでグーグルが広告を本気で見せようと思うんなら、左側のカラムの中に広告検索結果を紛れ込ませるのが良いだろう。そうなると利用者離れがあるかもしれないけどね。
もう一つの問題は、6%という右側のカラムをクリックした比率の分析の仕方だな。インターネットの商売は、基本的に分母を増やして、その中の1%でも興味を持ってくれればオーケー、みたいなやり方をしている業者も多いよね。なんで右側カラムをクリックした人たちの集団の特徴や動向を知れると面白いだろうな、なんて思ったよ。
そんな人間の習性、統計の分析なんかの仕事を募集してます。
元のニュース:Penn State Live.Consumers suspicious of sponsored links
PDFで論文も読めるみたいだね。PDF
関連する過去記事:しんりの手.新しいアメブロのデザイン
記事中のリンク先:インターネット広告費、今後5年で3倍に(NETAFULLさん)
検索キーワード:心理学 認知心理学、ビジネス心理学、 インターネット・ユーザー google search engines Examining Searcher Perceptions of and Interactions with Sponsored Results Bernard J. Jansen Pennsylvania State University Marc Resnick Florida International University