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多重課題は一つ一つ処理される
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同時に複数の事をすることを「多重課題」(または二重課題)と言う。人間にとって多重課題というのは難しい作業で、大抵は2つの課題を同時にこなすことはできない。それでも一見、多重課題が成功しているように見える時がある。その成功例を説明する2つの理論がある。

(A)受身的な順番待ち理論(passive queuing)では、課題が脳によって処理される順番を待ち、順番が来ると一つ一つ処理される。これは、厳密には多重課題を同時に処理していないけれど、高速で行われれば、見た目では多重課題を処理してるように見える。
(B)積極的に監視理論(active monitoring)では、脳が複数の課題を同時に把握し、同時に処理できる。
これら2つの理論は今まではどちらがより正しいのかの証拠があまりなかったが、今回の研究は(A)の「受身的な順番待ち理論」を支持する証拠だ。

実験はこうだ。視覚課題の組み合わせの二重課題を使った。例えば見た図の形を報告するのとほぼ同時に、見たアルファベットを報告する。ここからの実験方法がとても賢い。2つの課題を交互にやるように強制し(これは多分、画面を交互に表示)、課題を入れ替える間隔を1.5秒と0.1秒で比べた。

すると0.1秒間隔で2つの課題を入れ替えた時の成績は悪く、1.5秒間隔に比べて2倍の時間を要した。もしも脳が2つの課題を同時に把握しているのなら、0.1秒間隔でも交互に2つの課題を処理できるはずだ。しかし、処理の時間が2倍かかってしまったということは、脳はこの2つの課題を同時に処理できずに、一つ一つ別々に処理したのだろう。というのがこの実験結果の解釈なんだと思う。元のニュースにははっきり書いていないけどね。

この実験方法はとても好きだけど、混同要素がまだあるね。多重課題の処理では作動記憶の中央実行部の処理能力が研究の対象物になるべきなんだろうけれど、この実験方法では視覚情報の知覚と認知を測っているとも言えるんじゃない?僕はニュースしか読んでないけれど、論文ではどうやって解説しているのかに興味がある。けどそこまで読む時間が今は無い。

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元のニュース
We Weren't Made To Multitask

Yuhong Jiang, Rebecca Sawa, Nancy Kanwisher, MIT, multitask, passive queuing, active monitoring, psychological science, multitasking dual task, central executive, 心理学、短期記憶、作動記憶、
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【記憶】海馬は空間記憶、尾状核は習慣記憶。
packardmaze.jpg


記憶には少なくとも2系統があるようだ。空間認知の記憶と、習慣から覚える記憶。

海馬系統(hippocampal system)は空間認知に関わる記憶に重要な部位だ。空間認知は場所を覚える記憶とも言える。例えば上の迷路でネズミ(rats)を使って実験する。食べ物が場所「A」にあることを覚えさせれば、「B」から迷路を始めても「D」からでも、ゴール「A」をそのネズミは覚えている。これが空間認知の記憶だ。

海馬と空間認知の記憶の関係には裏付けがいくつかある。海馬に特殊な薬(glutamate)を注射すると空間認知の成績が良くなる。また、海馬に損傷を与えると空間的な学習に支障をきたす。


尾状核(caudate nucleus)は習慣から覚える記憶に重要な部位だ。上の迷路で言うと、「D」から迷路を始めて餌が「A」にあることをネズミに学習させる。餌を求めて左に曲がる習慣を覚えるので、「B」から始めさせるとやはり左に曲がって「C」に行ってしまう。これが習慣記憶だ。

尾状核に薬(glutamate)を注射すると習慣記憶の成績が良くなる。また、尾状核に損傷を与えると習慣記憶も損なわれる。そしてここに損傷があると、ネズミは別の記憶回路(海馬の空間記憶)に頼るようになる。つまり曲がり方を覚えるのではなく、ゴール地点を覚えるようになる。

面白いことに習慣学習の能力を比べると、海馬系統に損傷のあるネズミ(rats)の成績が普通よりも良い。これはつまり海馬は時に記憶(特に習慣学習)を邪魔していることを指し示している。


この研究者はさらに感情と記憶の関係も調べ始めている。普通の環境(ストレス無し)ではネズミは空間学習をまず使い、そして習慣学習へと移行する。それが、ストレス下では最初から習慣学習しか使わない。ちなみにストレスは不安を誘発する薬をヘントウ体(amygdalas)に注射して作り出した。

この結果から見るとこんな可能性が見える。不安性の患者たち(強迫神経症、obsessive-compulsive disorder)は習慣学習ばかり使うかもしれない。まだネズミの実験の段階なので応用の実用性には疑問が残るが。


というのがこのニュースの内容なんだけど、とても面白いです。記憶はすべてが海馬によって同じように処理されるのかと思っていたけれど、記憶の内容によって海馬に深く関わったり浅く関わったりするんだな。そしてもうひとつの重要な部位「尾状核」というのも覚えておこう。

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関連する過去の記事:
海馬は記憶の形成と再生に使われる(しんりの手

新しい記憶を覚えられなくても習慣は覚えられる(しんりの手

海馬を切除しててんかんも直って、学習もできる(しんりの手

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関連するウェブ:
マインドマップなどの視覚系情報処理が有用な理由(技術士(化学部門)CANのブログ)ここでは海馬についてもう少し詳しく説明されている。

引用元:雑誌「Monitor on Psychology」October 2004, p.40-41.

検索キーワード:心理学、認知心理学、Mark Packard, Texas A&M University, 短期記憶、長期記憶、作動記憶、生物心理学、比較心理学、
短期記憶、中期記憶?、長期記憶
fruitflys.gif

記憶が脳に書き込まれる過程は、現在の心理学の一般的な理論では2段階だ。つまり、短期記憶(数秒から数十秒)で覚えたものが長期記憶に入れば、その記憶は半永久的に脳に残る。今回の学説から考えると、少なくとももう一段階あるのかもしれない。

ハエ(Drosophila, fruit flies)を使い、物事を記憶する時に脳がどう変化するかを調べた。ある匂いを嗅ぐと電気ショックが来ることを古典的条件付け(パブロフの犬式の関連付け)を使って記憶させた。

すると、記憶してから最初の5~7分間は脳のうちの匂いに関する部分(insect's antennal lobe)の神経細胞が活動していた。しかしその活動は7分程度で治まり、そして次には別の部位が活動する。DPM神経細胞は記憶後の30分から2時間に活動が見られた。

この研究を僕なりに解釈すると、記憶は長期記憶として半永久的に脳に定着する前に、別の過程を経るという見方もできるだろう。これは先週の記事「練習の後はしっかり休む」とも一致する。先週の記事の場合は筋肉の記憶だったけどね。匂いの記憶でも筋肉の記憶でも短期記憶と長期記憶の間の過程があるのが面白いね。

しかしひとつのことが分かる(または仮定されると)と疑問が山ほど出る。他の感覚から入ってくる情報ではどうなんだろうか?中期記憶があるとしたら記憶は3段階だけなのだろうか?もっと多くの段階に分けられるのだろうか?それは一つの道筋なんだろうか?それとも短期記憶から一部は長期記憶に直接行くのだろうか?長期記憶が活動するまでの30分(ハエの場合)は記憶はどこを辿っているのだろうか?人ではこの時間はもっと長いのだろうか?

その辺は情報を見つけ次第追っていきたいです。

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関連する過去の記事:
同じ研究者の昨年の研究「記憶の過程を顕微鏡で見る」(しんりの手)
記憶の仕組みに新理論。記憶は複製、消去されている。(しんりの手)
思い出した直後は忘れやすい(しんりの手)
練習の後はしっかり休む(しんりの手)

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検索キーワード:心理学、認知心理学、short term memory, STM, long term memory, LTM, working memory, cognitive psychology, 神経科学、認知神経心理学、生物学、分子生物学、細胞生物学、dorsal paired medial (DPM) neurons、感覚記憶、
練習の後はしっかり休む
Bill20Evans1.jpg

筋肉記憶(motor memory)というのがある。運動の記憶と訳されている場合もある。これは筋肉の特定の動きを覚える記憶で、技術の記憶とも言える。自転車の乗り方などがこの筋肉記憶の一例だ。

今回の研究では、新しい筋肉記憶を覚えようとした時の神経細胞の動きを追うことで、記憶の定着度を見ようとしている。

これによると新しい筋肉の動きの練習をした後の6時間は、この筋肉の動きが記憶として脳にまだ定着していない。なので筋肉の別の動きを学習すると、一つ目の筋肉記憶は薄れたり忘れられたりしてしまう。
これが6時間を越えると筋肉記憶は定着し、10年経ってもその記憶を再現できるという。

ふーん、これは応用価値が高くて面白い研究だな。

まず記憶の定着について。記憶した後に睡眠をとると覚えられる、という研究があるけれど、あれは睡眠自体が良いという理由の他に、単に惑わす別の記憶を仕入れないで時間を置くことが良いのかもね。

それとこの研究は運動部の練習に応用できそうだな。例えば柔道の投げ技とかを覚える時には一日に一つの技だけを練習する。練習時間の一番最後に新しい技を覚えて、その後は別の投げの動作を行わない、とかね。または変な癖が付く前に、別の動作を教えてその変な癖を記憶に定着させないとか。

上の応用例はちょっと飛躍してる気が自分でもする。今回のような基本的な研究からはこの応用の効果には疑問があるけれど、いろいろと将来が楽しみな研究分野。ピアノの稽古とか野球の練習とか。野球とかに企業は年間に何十億円も払ってるけど、こういう研究にもお金を注いでくれないかな。と、さりげなく自分の将来の就職先を増幅させる発言をしておく。

学期末で未だに激務なんでコメントやメールの返事はもう少し待ってください。皆さんコメント、メールありがとうございます。

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元のニュース:Practice makes perfect, but so does taking breaks

検索キーワード:心理学、運動、知覚心理学、認知心理学、運動心理学、スポーツ心理学、skill-based performance, Henry Holcomb, University of Maryland, PET, positron emission tomography,
海馬は記憶の形成と再生に使われる
Hippocampusw.png

この研究者はサル(monkeys)を使って、記憶を使う時の海馬(hippocampus)の反応を調べた。海馬は記憶を形成するのに使われる部分として知られているが、この研究によると記憶を思い起こす(retrieve)時にも海馬は同様の反応をした。このため、海馬は記憶を形成する時のみならず、記憶を思い起こすのにも使われているようだ。

うーん、わからない。こういった新しい研究(この研究は2004年)でも海馬は記憶の形成に使われるって解釈だよな。じゃあ先月紹介した海馬を除去しても学習できる人は何なんだろう?今回の研究を素直に信じれば、海馬を取っ払ったら新しいことの学習や昔の記憶の再生に支障が出ることになるんじゃないのか?

ちなみに僕のこの解釈は、脳の局在化(localization, phrenology)という考え方で、脳の部分部分は特定の機能を持っている、という考え方。しかしこの脳の局在化という考え方は最近は否定され始めてきている。この件に関してはとても面白い本(下記)をいま読んでいるので、近いうちに紹介予定。今年読んだ数百冊の本の中でも一番か二番に面白い本。関連する記事(しんりの手アメブロ

ところで今回の研究者はNYU(ニューヨーク大学)の人なんだけど、NYUとかのしっかりした心理学部の研究者ならきっちり最新の動向(海馬は無くても記憶ができるかもしれないということ)を抑えて言及しておいて欲しいな、というのが個人的な気持ちだ。



William R. Uttal

The New Phrenology: The Limits of Localizing Cognitive Processes in the Brain (Life and Mind: Philosophical Issues in Biology and Psychology Series)

ユータル「新・脳の局在化」

さて、今は学期末で本当に忙しいんで、もうへろへろです。僕が学部にいた時は学期末は授業に追われている感じだった。あの頃は英語もろくに分かんなかったんで授業に付いていくのが精一杯って感じだった。

それに比べて院生になると学期末は楽しみが増えて困るんだよね。この2週間くらいで10頁くらいのペーパーを6個ほど書くんだけれど、ペーパーの内容(=授業で習った内容)が興味深すぎて、つい関連のある論文を読み込んでしまう。授業から少し脱線したそういう心理学の読み物の方が自分の研究に関わりが深くて面白いんで、時間を奪われまくってます。

他の留学生の人たちはどうなんだろう。僕は学問を楽しむまでには語学的に何年も掛かったけれど、それでも心理学はやはり英語の文献が最先端だと思うんで、英語で学んできて良かったなぁと最近しみじみと感じているよ。

今は記事を書くのに手一杯ですが、コメントには時間ができた時に答えさせていただきます。皆さんいろいろなコメントをありがとうございます。

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関連する過去の記事:
「加齢と記憶」ラーズ・バックマン(2001年)
記憶の種類とその衰え方の差について。

海馬を切除しててんかんも直って、学習もできる

新しい記憶を覚えられなくても習慣は覚えられる

不必要な情報を無視する能力を測る
短期記憶の容量は少なく、視覚の情報を蓄えるのなら3つか4つしか覚えて置けないと言われている(過去記事:人は魔法の数7±2ほど短期記憶できない)。
短期記憶のこの限界のために、人は無関係の物事を無視する能力が必要になる。逆に言えば、関係ある情報を選択する能力(注意を向ける対象を見極める能力)だ。自分にとって大事な情報を選択するというこの能力には個人差がある。そしてこの能力は、記憶の能力の中でも特定のものの容量によってかなり予測できた、というのがこの論文の内容。

これは是非とも読んでみたい論文。今は学期末で忙しくて読む時間が無いけど。

学校の成績が良いとか悪いとか言うのは、何に集中して聞くべきかが分かる能力なのかもしれない。この研究を元に将来は、然るべき物に注意を向けやすいように教育を変えていくことで人がより学びやすい環境なんてできると嬉しいな。

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関連する本:


Susan Gathercole

Short-Term and Working Memory


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元のニュース:
Nature 438, 500-503 (24 November 2005) | doi:10.1038/nature04171Neural measures reveal individual differences in controlling access to working memory
Edward K. Vogel, Andrew W. McCollough and Maro G. Machizawa

3人目の研究者の名前はこの分野で偶に見るけど、日本の人なんだな。
彼のウェブ:
Maro G. Machizawa
雑誌ネイチャーに論文が掲載されるなんてすごい実績。臨床心理学から認知心理学に移った人なのかな。今後も追ってチェックさせてもらいます。

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過去の関連する記事;
心理学の実験。集中力を測る。(しんりの手

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検索キーワード:インパクト・ファクター、impact factor, 認知心理学、作動記憶、working memory, attention, inattention, inhibition, 教育心理学、知覚心理学、注意、注意抑制、
容器から溢れ出ている方が多いと感じる
icecream.jpg

人間の知覚というのはいい加減なもんで絶対的な量を比べるのには向いていない。人間はどちらかというと相対的な比較を常にしている。

例えば200グラムと250グラムのアイスクリームがあれば250グラムの方が多いというのは明瞭だ。しかしこれが見せ方によって、人の知覚を狂わせてしまう。一方は150グラム用のコーンから溢れ出ている200グラムのアイスクリーム。もう一方は300グラム用のコーンに余裕を持って収まっている250グラムのアイスクリーム。

こういう見せ方をすると、人間は溢れ出ているほうが多いと知覚してしまう。まぁ2者を並べて見せればばれてしまうらしいけれど。

この心理的な錯覚は飲食店とかでも使っている店が多いよね。大きい皿によそうよりも、普通の皿に溢れてよそわれている方が客としては幸せになる。そういや昔は日吉駅の近くの超大盛りカレー(500円)をよく食いに行ったな。量は僕としては大したこと無いんだけど、あのビジュアルをみると幸せになるんだよ。溢れそう(というか実際にこぼれている)ルウと、その下にうずたかく詰まっているご飯。あー書いているだけで腹減ってきた。

ビジネスなどに応用の広い心理学だ。あとニュースには詳しいことは書いていないけれど、実際の論文の方にはサラリーと満足度の関係なんかも書かれている。

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元のニュース:More is not always better

検索キーワード:心理学、知覚心理学、認知心理学、decision making, Christopher hsee, business, 商業心理学、ビジネス心理学、意思決定、東急東横線、
睡眠不足の児童は授業に集中できない
sleepinclass.jpg

睡眠時間が8時間以下の児童は、教師から見て授業に集中していないと評価された。

6歳から12歳の児童74人を対象に、睡眠時間と授業での態度の関係が調べられた。児童の授業態度は教師によって評価され、そのとき教師は児童の睡眠時間を知らなかった。つまりブラインド・テスト形式で行われた。

この研究の間、それぞれの児童は3週間の異なった睡眠時間を経験した(多分、順不同で)。睡眠不足の一週間(1年生,2年生は8時間以下、3年生以上は6時間半以下)、睡眠がちょうど良い長さの一週間、睡眠過多の一週間(10時間以上)。

その結果、睡眠時間が8時間以下の児童は概して学習能力の低下が見られた。問題があった点は、習ったことを思い出すこと、新しいことを覚える作業、集中力を要する作業などだった。

概略は面白い研究だね。確かに睡眠時間が減ると児童の学習能力は落ちると思う。この分野の研究にありがちな相関関係だけの研究で終わっていないところが良い。相関関係だけだと、睡眠時間が少ないから学習能力が低いのか、学習能力の低い子が睡眠時間を少なくしか取れないのかが分からないから。この研究は、ちゃんと条件を制御(コントロール)しているので、因果関係ははっきりしている。

難点を挙げれば、睡眠時間を一週間という短い期間で次の条件に変えていったことだな。睡眠時間は慣れの問題というところが大きいので、大変なのは最初の5日間くらいだけ。それが癖になれば、6日目ぐらいからは、その短い睡眠時間に対応できるようになる人が多い。なので、この実験のように睡眠時間を減らされれば最初の一週間はそれが成績に現れるのは当然。むしろ2週間目のデータだけを調べた方が良かっただろう。

それと児童の学習能力の測り方も客観的ではない。教師は児童の睡眠時間を知らなかったのでブラインド・テストではあるのだが、それでも教師が正確に学習能力を測れている訳ではない。欠伸をする生徒はたとえ成績が良くても駄目な生徒だと見られがちだ。なので、客観的に学習能力を測りたいのなら別の測定方法が良いだろう。

その点を差し引いても面白い研究なので、次回の研究にとても期待しているよ。って言うか研究ってこんなもんだよな。人の研究の批判は簡単にできるけど、自分の研究を隙の無いものにするのは大変なんだよ。ほんとに。

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元のニュース:Less sleep impacts directly of children's performance at school

検索キーワード:心理学、教育心理学、認知心理学、注意、Gahan Fallone, attention, blind test,
新しい記憶を覚えられなくても習慣は覚えられる
海馬(hippocampus)が壊れると新しい記憶を覚えられなくなってしまうと言われている。しかし、そんな患者でも何回も繰り返し学習を行うことで、新たな記憶を植えつけることができたという。この研究者はこれを習慣学習(habit learning)と呼んでいる。

新しい記憶を覚えられなくなる症状(amnesia)の患者2人を使い、二つの図形のうちの特定の一方の図形を覚えるという作業を数週間繰り返した。数週間繰り返しても、記憶を形成できないので2人ともこの試験をやるのは初めてだと毎回思っていた。しかし結果は違った。数週間後に正答率は2人それぞれ95%と100%にまで上がってしまった。なので新しい記憶を覚えられないというのは一概に言えることではなく、記憶の種類によって覚えられるものと覚えられないものがあるようだ。

mirror_drawing.jpg


この研究と似たことは前から示されているね。鏡に映した絵をなぞる練習(上の画像)で、記憶障害者は練習した事実を毎回忘れていたけれど、技だけは進歩していった。その時は、技能の記憶というのは事実の記憶とは別の回路を使っているので、事実を記憶できなくても技術は新たに記憶できていた、という説明がされていた。

今回は技術の記憶よりもよっぽど事実の記憶に近いものだ。図形を覚えていたのだから。このニュースから僕が勝手に理由付けをしてみる。

僕の解釈では、覚えられた経験というのは単純な画像の情報だ。覚えられなかった経験というのは2つあって、この画像を見たという記憶と、この練習をしたという記憶だ。なので新しい記憶を覚えられるというのは、新しく入ってきた情報にタグ付けをして整理する技術なのではないだろうか。図形の情報は単純なのでタグを付けなくても繰り返し経験すれば記憶に残るだろう。画像を見たという記憶や練習したという記憶は複雑なのでタグを付けないと記憶に残らない。ま、論文を読んだわけでもないんで、かなり適当に語ってるんだけどね。

記憶なんて普段は全く意識しないけど、記憶の種類によって事象に差があるのってすごく不思議だよ。

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過去に書いた関連する記事:
「加齢と記憶」ラーズ・バックマン(2001年)
記憶の種類とその衰え方の差について。

海馬を切除しててんかんも直って、学習もできる
この辺は僕が読んでいた教科書の何年も先を行っている。脳の理解の進み具合って速いんだなぁ。


19年間の昏睡から目覚め、話し始める
ここにも新しいことを覚えられない患者が一人。

元のニュース:Habit Leads To Learning, New VA/UCSD Study Shows
作業負荷をリアルタイムで測る
人間が作業をしている時にどのくらい余裕があるかを示す一つの目安が、作業負荷だ。作業負荷が高ければ他のことをする余裕もないし、だいたい今やっている作業でもエラーが起きる可能性が高い。

作業負荷はコンピューターのCPU使用量とほぼ同じ案と言える。ウィンドウズXPであれば、CTR + ALT + DELを押して、パフォーマンスのタブを開くとCPU使用量がリアルタイムで見れる。

今回の研究は人の作業負荷をリアルタイムで見ようと試みたもの。

この研究者は12個の様々なリアルタイム測定値が作業負荷をどのくらい予測できるかを調べた。下のグラフのX軸が12の測定項目で、Y軸の高さが高いほどその測定項目が作業負荷を予測できる。3人の被験者、1,2,3、を使った実験だったが、この実験では個人差が大きく、3人とも一致した項目(例えば項目3)もあれば、3人ばらばらの項目(例えば項目7)などもあった。

GUHE.jpg


X軸の項目1は心拍数だ。被験者1の場合は心拍数が非常に高い確率(0.9)で作業負荷を予想していた。しかし被験者2と被験者3では心拍数は低い確率(0.25程度)でしか作業負荷を予想しなかった。

面白い結果としては、測定項目3のマウスを握る時の指の力の入れ具合が作業負荷を如実に予測しており、3人の被験者とも0.85以上の予測関係を示した。

個人差が大きいものの一般的な結果として、作業負荷が高くなるほど、まばたきが減り(項目5)、頭を動かす回数が減り(項目11)、口を開ける回数が減り(項目10)、心拍数が上がった(項目1)。

応用性が高く、即実用できそうな面白い研究だな。例えば車を運転してる時にハンドルにセンサーを仕込んだりして上記の幾つかの項目を測る。で作業負荷が高いと判断されたら運転者はそれ以上の物事を処理できない状態だと思われるので、車は自動的に速度を落として安全を確保する。とか、教育の現場なら生徒の反応をリアルタイムで見て、作業負荷が高くなれば、教師は授業の速度を落として生徒が付いて来られるようにする。とか、人と打ち合わせをしてる時に、口の開け方や目の反応を見て相手の作業負荷具合を見極める、とかね。

この研究を見ると、ポリグラフ(嘘発見器)の研究を思い出すな。原理は似たもので、体の反応から人の脳の活動を見るもの。ただし嘘発見は正確性が低い。その話はまたの機会に。

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元の論文:Markus Guhe et al. (2005) Non-intrusive measurement of workload in real-time. Proceedings of the human factors and ergonomics society.

検索キーワード:心理学、認知心理学、2-BACK TASK, nasa-tlx, multiple resource theory, c. wickens 1992. cognitive workload, task load, ACT-R, Bayesian Network modeling,
短期記憶の容量は(7±2)の3倍
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ミラーは1956年に短期記憶の容量は7個程度だとした。例えば無意味なアルファベットを短期記憶で覚えるのなら7文字くらいが限度。最近はその案が否定されてきていて、容量は4個程度ではないかと言う論文が数多く発表されている。(過去の記事参照「人は魔法の数7±2ほど短期記憶できない」)

今日、紹介する論文は逆の話。短期記憶は7±2どころではなく、その3倍に当る20個程度までの情報を保持できたと言う。

ミラーが一つのモーダル(感覚器官)だけを使ったのに対し、今回の研究者は複合モーダルを使った。しかも6個のモーダルを同時にだ。あー、気が狂いそうな実験だな。よくIRB(倫理委員会査定)通ったな。こんなのの被験者になったら、僕はその日一日、ストレスに苛まされるよ。

6個のモーダルは、言葉の記憶(アルファベット)、視覚記憶(アラビア文字を目で覚える)、位置記憶(光る枡の順番を記憶していく)、動作記憶(人の体の動きの動画を記憶)、触覚記憶(体のどこを触られるかを記憶)、音程記憶(ピッチの高さ構えの音と同じか記憶)だった。

この実験はすごいよ。なんと言うか有無を言わせぬ強引な推し進め方。こんな6つのモーダルを同時に与えて、どの刺激を記憶できたかを測ったんだって。一つの刺激につき、6個のアイテムが連続で提示されるので、可能な得点は36点だ(6アイテムx6モーダル)。

その結果、12人の被験者の平均得点は19.75点だった。36点満点だから、こんなストレスフルな環境で半分以上の刺激を覚えていたことになる。みんな頑張ったっちゃったね。まぁそういう訳で、ミラーの短期記憶容量7個説を大幅に上回る約20個の刺激を記憶できたということになるな。

これは目の付けどころがシャープだよ。ミラーのモデルは確かに単体モーダルの試験だった。で、その記憶容量の限界がモーダルの限界なのか、記憶メカニズムの容量の限界なのかは知られていなかった。でもっ今回の研究によると、記憶メカニズムの容量は7よりもずっと大きくて、モーダルごとの限界が一般的に言われる記憶容量の限界だったと言うことだな。

穴の多い研究で、正直言ってこの研究者はあまり最近の文献を読んでいないと僕は思う。引用している文献もたったの9つだ。しかも最も新しい引用文献が90年代のもので3件だけ。なのでつつこうと思えばいくらでも埃の出てくる論文なんだけれど、アイディアが最高に面白いよ。

応用例が広いところも良いね。例えば電話番号とかを覚えるんなら、最初の4桁を言葉で覚えて、後の4桁を目で覚えるとかね。また楽しみな研究が世に出てきたよ。心理学って本当に果てしなく研究されていくんだろうなぁ。

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元の論文:Shatha Samman et al. (2004) Multimodal interaction: multi-capacity processing beyond 7 +/- 2. Proceedings of the human factors and ergonomics society 48th annual meeting 2004. p.386.

検索キーワード:Baddeley, A. D. & Hitch, G. J. 1974. working memory. Miller, G. A. 1956. The magical number seven plus or minus two.
心理学の実験。集中力を測る。
illinoisvisualcoglab1.jpg


今日はちょっと指向を変えて、心理学の実験を紹介するよ。

集中力を測る実験です。まずはここでビデオをダウンロード(7MB)します。
イリノイ大学の視覚認知ラボ

やり方を読むまで再生ボタンは押さないでください。
ビデオでは、バスケット・ボールで遊ぶ人が何人かいますが、あなたの課題は白いTシャツを着た人たちがパスをする回数を数えることです。これはきちんと数えられる人があまりいないと言われています。数えるのは白いシャツのパスの回数で、黒いシャツのパスは関係ありません。ビデオは緑の再生ボタンを押すと始まります。
では再生してください。

さぁ、数えましたか?

この実験の主旨は下記。(ネタバレあり)

10

9

8

7

6

5

4

3

2

1


パスの回数の数は13回?はっきり言ってこれは関係なし。白いものに集中すると黒いものが見えなくなるんだけれど、ビデオの途中で全く関係ないものが出てくるのには気付いたかな?心理学の実験の結果を見ると半数くらいが気付かないようだ。気付かなかった人はもう一度ビデオを見てみると、白に集中しなければ明らかに気付くはずの事象に驚くはず。僕も気付かなかった人の一人です。

ちなみに表題にある、集中力を測る実験というのはあながち全くの嘘ではなく、集中力の高い人のほうがある課題に集中している時に他の物が見えなくなる傾向が強い。反対に、ADHD(多動性障害)など注意力散漫な人はある課題に集中するように言われていても、周り物への注意力が高く、いろいろな物が目に見えている傾向が強い。ただし、これは一般論で、このビデオの結果と個人の集中力の関係はまだ示されていない。

人は条件次第でいろんなものが見えなくなってしまうんだよね。今回はある一つの色に集中した時に別の色の物が見えにくくなる現象。この研究では色だけが原因ではないことも示されている。
他の実験では、瞬きのような一瞬の画像情報の戸切れを境に映像が変わっても人はそれを認知しにくいというのもある。これはこちらの記事を参照。
変化には気付くけれども何が変わったかは指摘できない(しんりの手 fc2)

こういう心理学の実験てテレビCMや映画やアトラクションに活用されたら面白そうだな。昨日も似たことを書いたけれど。

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関連ウェブ:目の前にゴリラ(医学都市伝説さん)
この実験についてより詳しく説明されている。

検索キーワード:心理学、知覚心理学、認知心理学、注意、attention, inhibition, inattentional blindness, Daniel Simons, Christopher Chabris, Harvard University, cognition, perception, gorillas, ゴリラ、錯覚、illusion, 非注意性盲目、
変化には気付くけれども何が変わったかは指摘できない
Airplane.jpg

視界の中で例えば信号の色が変わったとする。何かが変わった、ということには気付くのだが、視界の中の何が変わったかを指摘するのは難しい作業らしい。

「変化に気付かない現象」(Change Blindness)という現象がある。間違い探しのような2枚のほとんど同じ画像を交互に何回も見せられても、2枚の画像の何が違うのかを探すのには何十秒も掛かってしまう現象だ。

この研究者は、この現象を研究して、車の運転手が信号の変化などをより受け止めやすいように考えていたらしい。しかし、その実験の中で奇妙な別の現象を発見したという。

その奇妙なこととは、2枚の画像に違いがある、と分かっても、その違いがどこなのかを指摘するのには更に数秒間を要したという。つまり、2枚の画像の異なる点を意識的に理解する数秒前に、何かが違うということだけは理解できるらしい。

この研究者が取った実験方法は、2枚の画像を交互に見せ、違いがあると感じた時点でスペース・キーを1回押す。ちなみに2枚の画像が違う可能性は50%だった。残りの50%は2枚とも同じ画像なので、その場合はスペース・キーを押さずにじっと待つ。違いがあると感じた後に、画像のどの部分が2枚の画像で違うのかが分かったらスペース・キーをもう一度押す。

被験者の7割がたは1回目と2回目のキーを押すタイミングがほぼ同じだったことから、彼らは違いを発見すると同時にどこが違うのかも発見していたらしい。しかし、残りの3割の人は、その差が5秒ほどあった。これは2つの課題に違いがあることを示している。

まぁ、試してみよう。
まずは「変化に気付かない現象」を経験してみる。この実験ページに行き、2枚の画像が交互に表示されるので、違いを探してみる。条件が難しいほど、気付かない可能性が高いので設定を難しくしてみよう。画像を右クリックして「gap」を「250 msec gap」に。飛行機の画像で違いを見つけたら、右クリックで他の画像も試してみよう。

一度、違いに気付くとその違いの大きさになんでさっきまで気付かなかったのか馬鹿らしくなる。それが、この実験のポイントで、注意を払わない点というのは、人は本当に気付かないものなんだな。

次に、違いを感じてから違いを指摘するまでの時間的な隔たりを意識してみる。僕にとってはこの画像(ドル札)が最も顕著だった。何かが変わっているというのは分かるんだけど、何が変わっているのかを分かるには更に20秒くらい掛かってしまったよ。

この実験は日常ではまず起こらない現象なだけに、日常の生活に直接的に応用することは難しいだろう。でも人の認知能力を測るのにはとても応用性があって面白い分野だと思う。注意能力も測れるし、視覚的な短期記憶の容量も測れるかもしれない。この分野はまた追って別の研究を紹介するよ。

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元のニュース:University of British Columbia: Mapping the Sixth Sense: Psychology's Ron Rensink discovers visual sensing without seeing.

ニュースのタイトルになっている「第6感」という言い方は無いよな。明らかに視覚(5感に含まれる)からの情報じゃん。
更に英語の「without seeing」という表現も日本人には分からないよな。英和辞典によると「seeは映像を受身的に目で捉えることと、意図的に認知することの両義がある」(小学館プログレッシプ英和中辞典)とある。この第2義の意味なんだろうけれど、こんな用法は今まで知らなかったよ。だから英語話者にとってはこれは第6感になるのかな?

検索キーワード:心理学、認知心理学、attention, inhibition, vision, cognition, 知覚心理学、
人は魔法の数7±2ほど短期記憶できない
50年前には人が短期記憶できるチャンクの数は5~9個だと言われた。これをミラー(1956年)は魔法の数7プラスマイナス2と呼んだ。これが近年、4±1に減り、いま新たに、この研究者は1~4に減らそうとしている。

人が短期記憶できるチャンクは4つ以下だ、と聞くとすごく衰えた気分になってしまう。自分も学部では7±2と習っていたので、そこから能力が落ちたように感じてしまうが、人は元からこんな能力だったのだろう。

この研究者が言うにはチャンクの数だけが問題ではなく、情報負荷との兼ね合いだという。例えばアメリカ人にとってはアルファベットは情報負荷が軽い(簡単に覚えられる)ので、平均で3.7文字ほど短期記憶で処理できる。しかし彼らにとって中国の文字は情報負荷が重い(覚えにくい)ので平均2.8文字しか短期記憶で処理できない。
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この研究者が使った図形は上の6群で36図だった。一番、情報負荷が大きかったのは陰付きの立方体で、短期記憶に一度に貯蔵できたのはたったの1.6個だった。情報負荷が軽かったのは色のついた四角で4.4個だった。

今回は最大でも0.85秒しか図形を表示しなかったので、狭義の意味での短期記憶を測ったといえるだろう。この辺がミラーの実験(1956年)とは違うのかな。読み返してみよう。
表示時間が短いと、視野も狭くなる。なので短期記憶以前に物体を認識したのかも怪しい。その辺は実験の改良の余地がありそうだ。

ちなみに今回計ったのは視覚的な短期記憶。音声的な短期記憶は違うのかもしれない。

あと、チャンクというのは情報をまとめた時の一単位。例えばアルファベットを覚えるのに、Q,M,W、と一つ筒覚えればこれは3文字なので3チャンク。これが、FBI,CIA,USA,WHO,と覚えやすい塊にまとめて覚えれば、4単語なので4チャンク。ただし、この例では、FBIとCIAが意味的に似た単語なので、提示時間を長めれば長期記憶を使ってまとめて覚える人も出てきてしまうし、人によっては1チャンクとしてFBI、CIAを括ってしまう人もいるだろう。

兎にも角にも、短期記憶のチャンクが考えられていたより少ないということは、文を書く時とか絵を配置する時には、読者は少ない情報しか結び付けて考えていけない、ということを書き手は常に考えるべきだろう。具体的に言えば、文を短くすることが分かり易い文として理解される場合が多い。

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元の論文:G.A. Alvarez and P. Cavanagh. Harvard University. (2004) The capacity of visual short term memory is set both by visual information load and by number of objects. Psychological Science. vol.15(2). p.106.

検索キーワード:心理学、記憶、長期記憶、短期記憶、認知心理学、George Armitage miller, TOTE system, shrt term memory, long term memory, working memory, rehearsal, The magical number seven, plus or minus two, some limits on our capacity for processing information, psychological review, v.63, p.81.
携帯やiPodで聴覚障害になる危険性
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携帯電話や携帯音楽プレイヤーが若年層の耳を悪くしている一因かもしれない。

この研究者によると、最近の10代、または20代の若い成人に聴力障害が増えているという。その症状はまさに加齢により耳が遠くなるのとそっくりだという。これは、彼らが一日中ずっと耳を使っているので消耗が早く、若いのにすでに中年の耳を持ってしまっているのだろう、としている。この一日中耳を使うというのは、携帯電話やiPodに代表されるような携帯音楽プレイヤーの普及によるものが一因だろうという。

まず、この研究には同感。聴覚障害になるのは2つの因子からなる関数だ。その2つの因子は音の大きさであるデシベルとその騒音にさらされる時間。例えば電話の着信音は85デシベルと言われていて、このレベルの騒音を一日に8時間も聞き続けるとそのうちに聴覚障害になる。別の例だと、ゴミ収集トラックが100デシベルで、一日15分で聴覚障害の危険性。

このニュースでは携帯音楽プレイヤーの音量は書いていない。使う人のボリューム設定により大幅に変わるので一概に言えないのかな?それでも、僕の感覚から予想すると携帯音楽プレイヤーの音量は電話の着信音(85デシベル)と同じくらいだろう。なのでこれを一日8時間、聞き続けると難聴になる危険性があると解釈して良いと思う。ゴミ収集トラック並(100デシベル)の音量で聴いている人は一日15分の使用で聴覚障害になる危険性。皆さん、耳は消耗品なんで大事に使いましょう。

ところで、聴覚の研究っていつも似た研究ばかりで目新しいものが無いね。もっと生活に生かせるような新しい研究を誰かやってくれないのかな。例えば、騒音の中で携帯電話の会話をより聞き取りやすくする方法とかね。

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元のニュース:Hearing loss among college students becoming more common

検索キーワード:心理学、認知心理学、Purdue University, audiologist, 聴覚学、聴覚科学、 hearing loss in young adults, 聴力損失、難聴、聴覚障害、Robert Novak, tinnitus, 耳鳴り、
遺伝子が決めるあなたの記憶保持能力
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作動記憶(ワーキング・メモリー)の一つの能力は、記憶を一時的に保持することで、言わばパソコンのメモリ容量のようなものだ。作業記憶の記憶保持能力が低いと一度に少しの量しか覚えて置けない、または一度に少しの量しか情報を処理できない。

この研究によると、作動記憶の記憶保持能力の個人差は遺伝子によってあらかじめ、ある程度決められてしまっているらしい。

作動記憶の能力を決めるものの一つは前頭前野のドーパミンだという。そのドーパミンに作用する遺伝子の違いで作動記憶の能力に差があるかをこの研究者は実験で測った。具体的に言うと第9染色体上にあるG444AだかDBH遺伝子(ドーパミン・ベータ・ヒドロキシラーゼ遺伝子)だかの違いを調べたらしい。この辺の単語はまだ僕が勉強してない分野なんでこれから勉強していかないとなぁ。

この遺伝子の組み合わせは3種類あってAAかAGかGGだそうなんだが、これが綺麗に作動記憶の結果に現れている。図に示した通り、GGのタイプの遺伝子を持つ人たちの作動記憶の結果が突出して良かった。(緑とオレンジの結果に限る。)

実験を細かく見る。103人の健康な人の遺伝子を見た。G444Aの遺伝子型はAAが17人、AGが39人、GGが47人だった。実験はコンピューター画面の点の位置の記憶保持を使って行われた。
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図が示すように、被験者は画面2のように3つのドットを見る。その後、画面4のように1つのドットを見て、このドットが画面2のドットの一つであるか、全く違う位置のドットかを答える。難易度(メモリー・ロード)が3段階あり簡単なのは画面2のドットが1つだけ。これが2つ、3つとなるにつれ難しくなる。

ドットが一つの場合(青い線)は結果に差はない。どの遺伝子型でも正答率が高い。しかしドットが2つの場合(オレンジの線:難易度は中くらい)とドットが3つの場合(緑の線:難易度は高い)はGG遺伝子型の結果が最も良く、AG型はまあまあで、AA型の結果は悪い。

この結果からこの研究者はこの特定の遺伝子が作動記憶の記憶保持に影響を与えていると結論している。尚、作動記憶に影響を与える要因は数多くあり、遺伝的なものと育ち(または教育)などがある。この研究者は遺伝的なものの一つを特定したことになるが、今後、他の遺伝子が作動記憶に与える影響も研究していくそうだ。

非常に面白い結果だね。心理学者というのは事象を見るのが主たる研究だ。事象というのは人がどのくらいの能力があるかなど。それを遺伝子と結びつけるのは新しい研究分野で、実際にこうして相関関係が示されているのには驚きだ。統計的有意さは0.05以下なものの、エフェクト・サイズは0.25とまだ小さい。今後に他の要因を見つけていって、回帰分析などしていくともっと説得力が高まるだろう。もし僕が今、大学に入学して一から学ぶとしたらこの分野を選ぶだろうな、と思うくらい興味深い分野だよ。

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パラスラマン博士が共著した本。SDTの項目は詳細ですばらしい。

D. Davies

The Psychology of Vigilance



元の論文:Raja Parasuraman,1 Pamela M. Greenwood,1 Reshma Kumar,1 and John Fossella. George Mason University and 2Weill Medical College. (2005) Beyond Heritability. Neurotransmitter Genes Differentially Modulate Visuospatial Attention and Working Memory. PSYCHOLOGICAL SCIENCE. 2005. March. Volume 16. Number 3. p.200-207. (PDF)

検索キーワード:心理学 生物心理学 神経心理学 神経科学 genotype phenotype、cognitive neuroscience, 認知神経科学、NeuroErgonomics, regression analysis, working memory, p, probalibity, effect size, f-test, 認知心理学、ワーキング・メモリー、ラジャ・パラスラマン、
笑いが立体感認知を壊す
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僕らが目に映すものを脳は常に勝手に理解する訳ではない。時には見える図形をある程度の注意を払ってその図形として頭に描き続けなければ、脳は図形を認識するのを止めてしまう時がある。 上の図形は「ネッカー立方体」と呼ばれる図形で、見る者の意識の仕方により、左下の四角が前面に出ているようにも見えるし、右上の四角が前面に出ているようにも見える。 しかし一度笑ってしまうと、その意識は中断されて、立体感は失われてしまう。 ふーん、興味深い発見だな。この研究者は「面白い発見でしょ?」くらいにしか語っていないようだけれど、今後の心理学に重大な影響を与える第一歩かもしれないと僕は思う。 今までは感情と視覚認知というのは接点の少ない別の心理学だと思われてきている。しかしこの実験結果が本当だとすると、視覚認知に使う脳の部位は感情に支配されてしまうのかもしれない。もしかしてどちらの活動も脳の同じ部位を使って処理しているのかもしれない。そしてその部位は一度に一つの感情、または一つの意識しか通過させられないのかもしれない。 一度に一つの感情しか人間は処理できない、という考え方が心理学にはあって、例えば「この人のことは好きでもあるけど嫌いでもある」と思ったとしても、それは2つの感情を一つ一つ高速に処理しているとも考えられる。 感情を処理する部位と同じ部位を視覚処理も使うと考えるとワクワクするよ。今までの心理学が全く踏み込んだことの無い分野。これを元に人の感情と認知活動がもっと研究されると良いね。 元のニュース:Laughter plays tricks with your eyes 検索キーワード:心理学 認知心理学 Necker cube, binocular rivalry, Jack Pettigrew, University of Queenlsland, Journal Clinical and Experimental Optometry, banal phenomenon, Kanizsa cube, optical illusion, visual ambiguity, uncertainty, inexactness of meaning,
スパコンで新皮質のモデル作りの企画が始動
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IBMのスーパー・コンピューターを使って、人間の脳の新皮質がどのように働いているのかのモデルを作る計画が始まった。

この企画はコンピューター会社のIBMとスイスのローザンヌ工科大学が2年間の研究期間の予定で行われる。新皮質というのは脳の考える部分を担当する部位と言われており、言語、学習、記憶、複雑な思考などの機能があると考えられている。大脳皮質の9割程度が新皮質という部分。

IBMのスーパー・コンピューターであるブルー・ジーンは世界最速のコンピューターで、1秒間に22兆回の計算ができるらしい。この辺は専門外なんではっきり言って全然分かりません。ははは。

しかしこの企画はカッコいいね。脳がどう働くかのモデルって今まではほとんど作られていないんだよね。生物学的にどの部位がどこと繋がっている、という原始的な研究の他は推論でモデルが作られている程度。結果が楽しみだな。

元のニュース:IBM and EPFL Join Forces to Uncover the Secrets of Cognitive Intelligence

検索キーワード:心理学 生物心理学 認知心理学 知覚心理学 Hanry Markram EPFL Ecole Polytechnique Federale de Lausanne, Tilak Agerwala, IBM, neocortex, Blue Gene,
否定的な感情の語彙が5割
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人は否定的な感情に対する語彙がよりあるという。

この研究者は感情に関する単語を思い浮かぶだけ書くように被験者に指示した。すると否定的な感情の単語が多かった。割合にすると、否定的な感情の単語が50%、肯定的な単語が30%、中性の単語が20%だった。この結果は年齢や言語を通して一緒だった。メキシコ・シティでスペイン語を喋る20歳も65歳も、シカゴで英語を喋る20歳も65歳も同じ割合で感情の単語を書いた。

この理由の推察が挙げられている。肯定的な感情を抱く時は物事がすんなりうまくいっているので、意に留めない。しかし否定的な感情を抱く時には何かまずいことが起きている。なので脳は物事をゆっくりと慎重に処理するので、否定的な感情を心に留めやすい。更に、今現在悪い物事を改善させるために原因を突き止めるなどの細かい区別が必要なので、否定的な単語が多いのだろうとしている。

確かにそうかもね。機械の取扱説明書でもトラブル・シューティングなどの情報はあるけど、うまくいっている時の解説なんて無いもんな。でも英語とスペイン語を比べてもあまり意味が無いんじゃないの?どっちもヨーロッパ語源群なんだから単語が似た比率になるのはそのせいだと言われちゃうでしょう。英語と日本語とか全く異なる組み合わせで比べれば良いのに。研究者の名前がメキシコ系(ジュリア・サンチェス)だから、英語とスペイン語のバイリンガルなんだろうけど、自分のいるグループの違いは大きく見える、ていうあの心理学効果(名前は失念)が思いっきり出ているよ。

元のニュース: Penn State University: Linguistics may be clue to emotions, according to Penn State research

検索キーワード:心理学 認知心理学 言語心理学 Robert Schrauf, Julia Sanchez Mexico city Chicago, negative emotion positive emotion, neutral, journal of Multilingual and Multicultural Development, Spanish, English
無意識で好む味覚
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味覚を感じられない人でも食塩水より砂糖水の方を好んだという。つまり食品の嗜好というのは意識で好きだと分かる物の他に何か別の要素があるのだろう。

この実験では、何年も前から脳の損傷を負っている患者Bという人を使って行われている。患者Bは味覚を感じられず、そして記憶障害になっているという。映画「メメントー」(Memento)のように40秒くらいの記憶しか覚えておけない。なので見慣れた顔も認識できないし、味も何の味だかは40秒を越えて覚えていられない。つまりこの患者Bは、長期記憶の中でもエピソード記憶を引き出せない状態になっている。他の長期記憶である手続き記憶、知覚表象システム、意味記憶は問題ない。よって言葉も普通に喋れる。

そんな患者Bに砂糖水と食塩水を飲んでもらった。味が分からないのなら好き嫌いも無いだろうという予想通り、患者Bはどちらも好んで飲んだ。

しかしもっと飲むように促したところ、患者Bは砂糖水の方を好んで飲み続けた。

このことから、この研究者は人が甘いものが好きだというのは味覚だけではなく、生来の何かがあるのだろうとしている。ソフト・ドリンクが甘いのもこの特性のせいで人々に支持されているのかもしれない。

この結果は面白いね。甘味というのは原始的に最も好まれる味だ。4大味覚のうちの他の3つは毒になりうる。苦味、酸味、塩分は時に体の毒になるので、動物は敏感に察知して、食べられるのかどうかをよく調べる。なので砂糖水をより受け入れたのは、脳のどこかで甘味を察知しているのかもしれない。意識や長期記憶では感じられなくても。将来、味を無意識でどこまで感知できるかなんて研究が進むと面白そうだね。

研究者の一人はダマシオ博士なんだな。ダマシオ博士に付いては小枝さんが幾つか本を紹介している。

研究者:Ralph Adolphs (California Institute of Technology), Daniel Tranel (University of Iowa), Michael Koenigs, Antonio R. Damasio,

元のニュース:Caltech: Preferring a Taste and Recognizing It May Involve Separate Brain Areas, Study Shows

検索キーワード:心理学 認知心理学 タルヴィング Tulving 1995 手続き記憶 procedural memory 知覚表象システム perceptual representation system 意味記憶 semantic memory 一時記憶 primary memory エピソード記憶 episodic memory 長期記憶 短期記憶 作動記憶 working memory herpes brain infection 味覚 旨み umami MSG 無意識 サブリミナル 
運転中の携帯は視界が狭くなる
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携帯電話での会話は運転に悪影響を与える。特に視界が狭くなるので、周りへの注意が払われなくなるという。

この実験では頭を使う別の活動(認識活動)をしていると、運転の精度に変化があるかを調べた。この別の活動は、単語を覚えたり、算数の計算をしたり、携帯電話で話すなどの活動。

これによると、こういった頭を使う別の活動は運転に悪影響を及ぼした。特にトンネル・ビジョンと言う現象が起こった。トンネル・ビジョンとは視界が狭くなり、まるでトンネルの中を運転しているかのように視界の中心にしか神経が行き届かなくなり、それよりも周りにある物に何かの変化が起こっても気付かない現象。

このトンネル・ビジョン現状は携帯電話での会話が終わった後もしばらく続いていたと言う。この研究者は、携帯電話の会話の後も、人は会話内容について思案するので、それがトンネル・ビジョン現象の継続として表れ、運転に悪影響を及ぼすのだろうとしている。

この実験結果を踏まえてこの研究者は、携帯電話禁止区域を作ることを提案している。つまり、比較的に安全な道路ではトンネル・ビジョンで視界が狭くなっても事故は起こりにくい。なので携帯電話を使っても問題は小さい。しかし交通量が激しい道路ではトンネル・ビジョンは事故に繋がりやすいので、携帯電話も禁止されるべきだろう、と。

基本的にはこの実験も、提案もとても良いと思う。携帯で話している時は他のことに注意を継続して払ってなんかいられないもんな。でも疑問は、携帯の会話で思案することがトンネル・ビジョンを引き起こすのなら、普通の会話で思案しても同じ問題が起きるはずだよな。そうすると、同乗者との会話も事故率を上げるのだろうか?その辺を知りたいね。

元のニュース(2002年):URI study on cell phone use attracts national attention

検索キーワード:心理学 認知心理学 university of rhode island tunnel vision manbir sodhi jerry cohen eye-tracking

ノード物で関連物を知る
今日はコリン・ブランストーンを検索していて音楽地図(music-map)なるものを見つけたよ。これは面白いね。
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この音楽地図というのは、似た傾向の音楽を教えてくれるもの。例えば「U2」と入力してみると、ギター系の音楽、つまりポリス、スティング、インエクサス、パール・ジャム等がずらっと並ぶわけだな。ちょっとパンクの傾向でREM、もっとヘビーなギターでメタリカなども名を連ねているね。

これを使うことによって自分の好きなミュージシャンに近い音を探せるという寸法だな。

それぞれのミュージシャンを線で結びつけてくれるともっと面白くなりそう。つまり検索した音楽家からの放射線だけでなく、横の線もあると良いと思うよ。そうすれば誰と誰がより似た音楽かがわかるのにな。

最近こういうノード物(線で結びつける系のもの)が流行ってんのかな。セソーラス(同義語辞書)のノード物もあるね。

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このノード型同義語辞書はより洗練されていて、系統別に分けられて、線で結ばれている。例えば「English」と入力すると、言語としての英語群、英国群、科目としての英語群、がそれぞれ分けられているので視覚的に分かりやすい。

2つのノード物を紹介したけれど、これらは心理学的な見地から見ても理に適っている。記憶というのは物事を結びつけることだと考えられているので、それを目で見える形に表すのは記憶の助けになりやすい。これからは心理学がこういう形でどんどん実用の役に立つようになっていくんだろうな。楽しみ楽しみ。

関連過去記事:理解度を地図として表す

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コリン・ブランストーンを視聴:有名な曲だと
Caroline Goodbye
I Don't Believe In Miracles などかな。

検索キーワード:Colin Blunstone zombies u2 police sting inxs pearl jam R.E.M. metalica visual thesaurus cognitive psychology collins & Loftus 1975 意味記憶モデル a spreading activation theory of semantic processing psychological review 82,
成人後からでも外国語の音を聞き分けられる
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このニュースによると、大人になってからでも外国語の紛らわしい発音を聞き分けるように訓練することが可能だったという。

この研究者は日本人63人を使ってLとRの音の区別の訓練を行った。日本人なら体験から知っているように、僕らにとってはLとRの発音は聞き分けづらい。このニュースでは18%の成績向上が見られて、それはつまり例えば正答率60%→78%のような効果だそうだ。

うーん、まず、%の使い方が紛らわしい。18%向上と言ったら60%x1.18=70.8%だよな。NHKとかでは「18ポイント伸びる」とか表現するんだよね。英語でも科学的な文献だと「improve 18 percentage points」とか書いてある場合が多い。

ニュースでは「成人後の外国語聞き分けの難しさは経験から来るものだ。母国語に関係のない音を無視することにより、重要な音に意識を集中させられる。」と書いてある。それならこの研究は、母国語には関係のない音にいかに注意を払えるようにする訓練かと思いきや、ニュースを読む限りではどうやら単に英語を聞かせるだけの訓練のようだ。

これはあまり実りのない研究に見えるな。肝心な部分が研究されていないように見える。僕が思う重要な点はここだ。今まで無視してきた音でも外国語では重要な音がある。そこにいかに注意を向けられるかが訓練のポイントだろう。外国語に曝すだけで、その注意向けは各自で汲み取ってください、というのでは片手落ちだろう。音声学の研究者のようだからもともと注意喚起とかは範疇じゃないのかな。

金(スポンサー)があればそういう訓練プログラムを作りたいなぁ。

元のニュース:Medical News Today: Adults can be retrained to learn second languages more easily, says UCL scientist

関連する過去の記事:英語学習法の検証 ATR

検索キーワード:心理学 言語心理学 認知心理学 第2言語 英語 日本語 Paul Iverson University College London Valerie Hazan Phonetics and Linguistics plasticity in speech perception 2005 human communication
男の子を妊娠している方が記憶力が良い
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胎児の性別によって妊婦の認知脳力に差があるかを調べたところ、男の子を身篭っている方が記憶力が顕著に良かったという。バンクーバー在住の39人の妊婦を調べた結果。

記憶力とかっていろんなところから影響を受けるんだな。胎児の性別が記憶力に影響しているなんて考えつかないけれど、言われてみれば確かにホルモンの差が生まれるんだから、妊婦さんの認知能力や気性に影響を与えても不思議ではないよな。まさに心理学、って感じの研究結果だよ。

元のニュース:MSNBC: Moms pregnant with boys less forgetful?

検索キーワード:心理学 認知心理学 記憶 長期記憶 Neil Watson, Simon Fraser University Psychology
識字障害はノイズが邪魔
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識字障害(dyslexia)とはつまり文字を読むのに難があること。トム・クルーズ(写真)も識字障害があると言われている。どうやって台本を読んだり台詞を覚えるんだろうね。

識字障害のメカニズムは従来、文字を素早く認識するのに障害があるために文字を読めないと言われてきた。しかしこの研究によると、文字を読みやすい環境下では識字障害者も視覚認識を滞りなく行えたと言う。

文字を読みやすい環境とは①視覚ノイズが無い(文字だけが表示される)、それと②明暗感度がハッキリしている(過去記事参照)。

上記の条件の整った文字を読みやすい環境下で、ある視覚パターンを認識する実験を行った。すると、文字認識の成績は識字障害者も健常者も同じ成績であった。対照的に、文字が読みにくい環境(つまり視覚ノイズがあって文字が際立っていない環境)では識字障害が表面化して、識字障害者は視覚パターンを認識する成績が悪かった。

このことからこの研究者は識字障害の理由を、視覚ノイズを無視できないからだ、としている。

こういう研究は大好き。障害やハンディキャップの原因を解明して、それにより克服法を示唆している。つまり読みやすい環境を整えれば識字障害があっても普通に読める可能性がある。例えばRSVP(高速連続表示法RAPID SERIAL VISUAL PRESENTATION:つまりコンピューター上で文を読む際に、一単語ずつを高速で順番に表示する読み方)とかなら視覚ノイズの要素が少ないので読みやすいかもしれない。楽しみな研究分野です。

元のニュース:Anne Sperling (University of South California)

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