
野球は日本が劇的な展開で優勝したね。論文の執筆もそっちのけで喉が枯れるまで応援させてもらいました。折角の機会なんで、野球に関する心理学の紹介。
その日の打率が良かった人は、ボールも大きく見えた、という研究結果のニュース。
昔から、ボールがどのくらい大きく見えるかと打者の成績は関係があると言われてきた。
ミッキー・マントル(Mickey mantle)が172メートル(565フィート)の超特大ホームランを打った時、彼は「ボールがグレープフルーツくらいに大きく見えた」と語った。
ジョー”ダッキー”メドウィック(Joe Ducky Medwick)は打撃不振の時、「アスピリンの錠剤を打とうとしているみたいだ」と語った。
今回の研究では、ソフトボールを趣味でする人たち47人を使った。1、2試合を終了したところで、紙に書いた球の大きさからどれが本物の球の大きさかを当ててもらった。ちなみに本物の球は10cmで、紙に書いたのは9cmから11.8cmまでの8種類。
すると、その日の打率が高い人ほど大きい球の絵を選んだ。つまり、実際のソフトボールを大きい球だと知覚していた。相関関数のrは0.29だった。
面白い研究だな。0.29の関係なら何かしらの因果関係があるんだろうな。でもやっぱり相関関数がまだ低いんで、打率には他の要素が大きく関係しているんだよね、当然のことながら。例えば視力とか腕の筋肉の正確な動きとか。そういう要素も入れて、回帰分析なんかしたら面白そう。
または実験方法を変えて、実際の打席に立ってボールがホームプレートを通過する瞬間で視界をさえぎり、「さてボールはどこを通過したでしょう?」なんて聞けば、より打者としての資質がわかるかも。
野球は選手への年棒の一割でも心理学に使えば、すごい大きな効果を生みそうな業種だな。
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元のニュース
See The Ball, Hit The Ball: Study Correlates Perceived Ball Size With Batting Average
元の論文
Apparent Ball Size Is Correlated With Batting Average
Jessica K. Witt1 and Dennis R. Proffitt1

車を運転しながら携帯電話を使用すると事故を起こす確率が非常に高くなる。それはなぜだろうか、という研究のニュース。
ユタ大学の110人の大学生を被験者として使用。擬似運転の機械(ドライビング・シミュレーター)で運転をさせ、被験者には時にはハンズフリー携帯電話(つまり手に持たないで使うタイプ)を使用してもらった。
==過去の実験で見つけたこと==
1.携帯電話を使用中は事故に繋がるような運転になった。
2.携帯は手に持つタイプでも手放しで使うタイプでも運転に同等の悪影響を与えた。
3.携帯の会話は運転に悪影響だが、ラジオを聴いて理解することや同乗者と会話することは運転に差しさわりが無かった。
==今回の実験で見つけたこと==
4.運転に専念する者に比べて、携帯電話(ハンズフリー)を使用中の運転者は前走している車にぶつかる(オカマを掘る)、ブレーキの動作が遅れる、またはそれを防ぐために車間距離をより多くとる、などの行動が見られた。
5.運転に専念する者に比べて、携帯電話(ハンズフリー)を使用中の運転者は道端の広告看板の記憶が悪かった。
6.尚、上記について、携帯電話(ハンズフリー)を使用している者も使用しない者も同等の時間だけ目線を広告看板に向けていた。なのでこれは記憶(の記銘、保持、想起など、または物の認識)の問題だ。
この研究者はこれを「注意不足型の盲目」(inattention blindness)と呼んでいる。
まとめると携帯電話で会話している運転者は運転能力がいろいろな面で劣る。目に映ったものを認識していない時があるので、赤信号や歩行者に気づかない時もあるし、反応速度も遅くなるので前走する車にぶつかる時もある。こういった要素のため、携帯電話中の運転は事故率が4倍という結果に繋がるのだろう。
随分と用意周到な実験だな。一研究者として単純に尊敬するよ。特に項目の5から6に掛けてしっかりと研究しているのが良くできていると思う。広告看板に目を向けていてもそれを(おそらく)記憶記銘せずに見過ごしている(厳密に言うと見てはいるか)というのが面白いね。これが広告看板でなく交通標識などでも見過ごしちゃうのかな。それは危険だな。
心理学がこういった原因を究明するのに役立つのは嬉しい。これが更に運転する人を啓蒙したり法律の改正(運転中の携帯電話使用の一部規制)などに繋がって、交通事故が減っていくと良いね。
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元のニュース:Cell Phone Users Drive 'Blind'
Study Explains Why Hands-Free Phones Just as Bad as Hand-held
論文(PDF)cell phone-induced failures of visual attention during simulated driving
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関連する過去の記事
ハンズ・フリーでも運転中の携帯は事故率4倍(しんりの手)
検索キーワード:心理学、David Strayer, Frank Drews, William A. Johnston, cell phone, drive, driving, hand-held, hands-free, inattention blindness, University of utah, ユタ大学、inattentional blindness, 非注意性盲目、二重課題、多重課題、認知心理学、短期記憶、長期記憶、作動記憶、作業メモリ、

アメリカではまだ人種差別が根強く残っている。今回、500人の黒人(アフリカ系アメリカ人)にアンケートをとったところ、34%は「白人は黒人の数を減らしたいと思っている」にYesと答え、14%は「政府はコンドームの使用を勧めることで黒人の数を抑えようとしている」と思っている、と答えた。
日本人の僕から観ると、そんなのはかなり現実から逸脱した妄想だと思ってしまうんだけれど、根拠があるらしい。この記事によると、政府による黒人の断種政策は1970年代まで続いたそうだ。つい最近じゃないか。アメリカも怖い国だな。
うーん、これは難しい問題だ。アメリカに住む者として、黒人が多い地域は犯罪が多い、というのは生活から来る実感だ。なのでアンケートの結果は実情を示しているとも言えるだろう。かと言って、黒人を減らすことが犯罪を減らしたり、世の中を平和にするとは思わない。それとも、近年の黒人の白人に対する比率が増えていることに対しての危惧を表しているアンケート結果なのかな。
まぁなんにしろ、こういう入り乱れた社会感情の誤解(または理解の仕方)がコンドームの使用状況にも影響を与えて、それがエイズなどの蔓延に繋がるのかと思うと、こういう問題に取り組む社会心理学とかの今後の課題は大きいなぁと感じるよ。
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元の記事の一つ:Conspiracy Theories Affect Birth Control Use by Black Men and Women
検索キーワード:社会心理学、偏見、人種差別、アフリカン・アメリカン、african american, race, racism, bias, prejudice, Sheryl Thorburn, Oregon State University, Laura m. Bogart, Rand corporation, 避妊、政府の陰謀、

精子の提供者が2000年以降減っている。これは法律が変わって、精子提供者が匿名ではなくなってしまったせいだという。
精子提供者の横顔が書かれている。あれ?日本語でも横顔って言うよね?英語のprofileにはプロフィールの他に横顔って意味もあるんだけど、これじゃ英語の直訳じゃん。
88%は36歳以下
過半数は恋人のいない学生
85%は未婚で4分の3は子無し。
3分の1は提供センターに来る途中で引き返してしまう。
3分の2は拒否される。うち85%は精子の質が合格点に達しないため。
こういった厳密な関門をくぐり、精子提供者となれるのはたったの4%以下だ。
検査厳しいんだな。こういう低い確率を見ると闘志がメラメラと湧いてくるよ。金にも困っているし条件はばっちり。今度試してみようかな。僕は精子提供には賛成。僕の遺伝子を継ぐものがどこかで生きてくれるなんて素晴らしい案だ。でも生物学的な親になるよりも育ての部分にも関わりたいから普通に家庭を持ちたいね。
それにしてもこの統計は驚き。既婚でも精子を提供すんのかよ。金のためか?そんなことしてないで嫁さんを孕ましておけよ。あと、大学生は貧乏だから精子で金を手に入れるのは常套。僕の友達もやっている。
傾向としては、精子提供者の数は激減している。今回アンケートに答えた1994年から2003年に精子を提供した1100人の中で、1994年に提供したのは175人だったのに2003年に提供したのは25人にとどまった。あーそうなの。困ったら僕にも声を掛けてくれていいよ。身元の特定も気にしないよ。でも養育費は払えないけどね。
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元のニュース:Sperm donor crisis in the UK
関連するブログ:
15歳、匿名精子提供者の「父」を探し出す(旬のイギリスさん)
もともと匿名性なんて怪しいもんなんだな。今回の匿名性を取っ払う方は現実に即しているとも言えるか。

アメリカはハロウィーンの季節なんでホラーものが流行っている。そんな時節に乗り、夕べは友達とホーンティド・ハウスに行って来たよ。要するにお化け屋敷だね。
僕はホラー映画とか遊園地のアトラクションを人の5倍は楽しむ人間だ。別の言い方をすれば、驚きやすく、絶叫する頻度が人の5倍。絶叫する声の大きさも5倍。ホラー映画なんかで、ドン!なんて大きな効果音を聞く度に椅子から飛び上がる。ジェットコースターなんかで取られる写真を見ると、両手を上げて目をひん剥いて絶叫している僕と、僕の叫び声に失笑している周りの客、というのがデフォルトだ。
まぁ、そんな驚きのスペシャリストであり、更に心理学も学んでいる俺様が、怖いとは何かを語ってみたいと思いますよ。
お化け屋敷とかでの恐怖というのは一般的な恐怖感(fear)で、これは恐怖症(phobia)などの病的なものとは区別される。恐怖感は基本的には身の危険に迫るものの察知から起きる。
感覚器官的なものだと、突然の大きい音というのは人間は生まれたときからずっと嫌いなままだ。眼前に急激に迫ってくるものと同様、突然の大きな音というのも自身への危険を示す場合がほとんどで、それが恐怖につながる。
未知の生物、奇妙な生物(人間)というのも行動の予測ができないので身への危険がある。それが恐怖につながる。
こういった恐怖は、安全だと予想できるだけの時間を与えてしまうと、それは恐怖ではなくなってしまう。なので、これらの心理学的な要素を考慮すると、お化け屋敷で恐怖を感じさせるには、①正体を掴めない物が急に身に近づいてくる。②感覚器官への急激な刺激。というのが基本だろう。
これに別の心理学的な理論を応用してみる。例えば、安全だと思っていた明らかに作り物に見えた死骸が突然動く。人は感情などを相対的に感じる傾向があるので、安全から恐怖へのギャップが大きいほど恐怖感は増大する。
または、安全だと判断するのに使う脳を別のことで占有してしまうと、安全かどうかの判断ができなくなり恐怖が増大する。例えば音と映像の刺激が同時に起こると、人間は処理速度が遅くなる。また、ある特定の刺激の後は、考えが一瞬ストップしてしまったりする、というのもある。
心理学を応用するとお化け屋敷なんかはもっと怖くなるはず。
夕べのホーンティド・ハウスは十分怖く、これ以上怖くならないことを望むけどね。一緒に行ったコの手を引いてあげるよ、という名目で彼女を何が後ろから迫るか分からない最後尾に配置して、僕は自らの安全を確保。それでも僕の叫び声で、別の客である8歳児くらいは笑いまくってたけどね。更に僕の絶叫で、お化けを5匹くらい逆に怖がらせ返しました。以上、報告。
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検索キーワード:心理学、知覚心理学、認知心理学、社会心理学、性格心理学、多重課題、multiple task, dual task, fear, phobia, haunted house, ghost, haloween,

リベリオン -反逆者-
映画の多くは至るところに心理学の応用が使われている。例えばこの映画「反逆者」(原題 Equilibrium)では白い服を着たり、黒い服を着たりしている。白い服は善玉の象徴で、黒い服は悪玉の象徴だ、という一般的な心理を使うことにより、観客は意識しなくてもストーリーに引き込まれていってしまう。
白は一般的に善玉の象徴、と書いたが、これは本当だろうか?というのをこの研究者は調べた。その結果、白や明るさというのは良い意味の言葉との繋がりが強く、黒や暗さというのは悪い意味の言葉との繋がりが強かった。
50の良い意味の言葉(例えばgentle優しい)と、50の悪い意味の言葉(例えばdevil悪魔)を一つ一つ順番に、白か黒で表示した。169人の被験者はその単語の意味を判断し2つのうちの1つのキーを押した:悪い意味は「1」キー、良い意味は「9」キー。そしてその反応速度と正確さを調べた。実験的にはこの記事の「潜在的な連想の試験」と同じだな。
その結果、良い意味の言葉と白の関連が強く、また悪い意味の言葉と黒の関連が強かった。
これは当然の結果だよな。聖書とか映画で繰り返し明るさや白を正義の印として聞かされてくれば、そういう認識が脳に作られるよな。この論文によると、スター・ウォーズ、オズの魔法使いなどがこの隠喩法を使っているそうだ。
僕の興味は、それが聖書などの文化から来るものなのか、それとも西欧文化以外でも通じる人間の生来の反応なのか、という点だ。だれか未開のアフリカとかに行って実験してくれないかな。
ところでこの論文ではヴェイランス(valence)という単語が使われている。よく見る単語なんだけど未だに意味がよく分からないんだよね、恥ずかしながら。こんな風に使われてます。
Valence (positive or negative) x Color (white or black). とか
The Valence of the words and the brightness of the letters were varied orthogonally.
この「valence」は「意味」とかって覚えておけば良いですか?辞書(英日、英英)にはこの訳は載ってないけど。
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元の論文:Brian P. Meier, Michael D. Robinson, and Gerald l. Clore. (2004) Why good guys wear white. Psychological Science. vol.15(2). p.82.
検索キーワード:心理学、認知心理学、感情、affect, ストループ効果、stroop effect,

気温と収入がその国の人の幸福感に影響するかを調べたところ、収入の高い国では、暖かい又は寒い国の幸福度が高かった。逆に、収入の低い国では、暖かい又は寒い国の幸福度は低かった(上の図を参照)。
この研究者は国の気温(気温標準偏差値)、国の豊かさ(national wealth)、個人主義の度合い(過去の別の研究者の値を使用)、幸福度(幸福標準偏差値、過去の別の研究者の値を使用)、公民権、利他主義の度合い、などの相関関係を調べた。その結果、2次方程式のような2本のカーブ(上の図)を見出した。
裕福な国でみてみる。寒いアイスランドと暖かいシンガポールは幸福だ。しかし普通の気温のイタリアは幸福ではない。
貧乏な国でみてみる。同じくらいの中程度の貧乏でも、寒い東ドイツと暖かいパナマは不幸せだ。しかし普通の気温のメキシコは不幸せではない。
うん、まぁ面白い研究だよね。ただ国単位で比較するというのは混同要素が多過ぎるんで、こういう研究はいくらやっても心理学ではあまり重要な研究とはみなされない場合が多いんだよね。かわいそうだが。
この場合の混同要素とは、国が違えば文化も言葉も宗教も違うので幸福度だけを単純に抽出するのが難しいということ。例えば日本人が日本語で「私は幸せです」なんて言うと、この人宗教の人かな、なんて見られちゃいがちだ。でもアメリカ人が英語で「アイム・ハッピー」と言うのは日常。なので幸福度というのを国単位で比べるのは難しい。(今回の幸福度として使われたエド・ディーナー博士の論文は読んでいないのでどんな測定方法かは知らないが。)
「マズローの動機や欲求の階層説」に似た話だな。マズローは生活の条件がまず満たされるように行動するのが人間だとしていて、今回の研究は、幸福度を上げるには、生活できるある程度の金と、生活できうる気温が必要だ、と解釈することもできる。ただし、このマズローの階層説も証明することが難しいなどの理由で、心理学界では受け入れられていない学説だ。
さて、今回の研究で日本は、というと、気温は普通、収入は高い、幸福度は中程度に不幸せ。んー、なんで日本人て幸せじゃないんだろうな。
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元の論文:Evert Van de vliert, Xu huang, Philip M Parker. (2004) Do colder and hotter climates make richer societies more, but poorer societies less, happy and altruistic? journal of Environmental psychology. v.24(1). p.17-30.
過去の関連記事:
○幸せを感じるメキシコ人(しんりの手アメブロ)
○幸せには生活最低限の金。その後は?(しんりの手アメブロ)
○個人主義の白人アメリカ人(しんりの手アメブロ)
検索キーワード:心理学、性格心理学、社会心理学、maslow, 欲求段階説、individualism, civil rights, happiness, altruism, temperature,気温、温度、

(上)画像2
(下)画像3


SAT(高校生が受ける大学進学適正試験)と知能指数は繋がりが強く、相関関係を示す数値が非常に大きかった(r=0.82)。
この研究者は、軍隊の名簿で軍隊用の知能指数(ASVAB = Armed Services Vocational Aptitude Battery)と大学進学適正試験(SAT)の両方の記録のある900人のデータを分析した。その結果、SATと軍隊用の知能指数の相関関係は直線回帰分析方法だとr=0.82(上の画像a)
とかなり高かった。非直線回帰分析方法だとr=0.87(画像b)だった。
ふーん、この2つの試験てこんなにかぶってるんだな。基本的には理解できる結果だ。知能指数が高ければ、学業でもよくやれるだろう。
ただ、ちょっとrの数値が高すぎて疑ってしまうよ。知能指数はどちらかというと生まれ持った能力を測る傾向があって、SATなどの学力試験は、学校でどのくらい学んだか、知識をどのくらい持っているか、問題を解く解法をどのくらい知っているかのような後生的な獲得を測る傾向がある。そのように性質の違う2つの試験がここまで密接に関連しているのは面白い。研究が信頼できるものなら面白いけれど、今のところは僕は、研究の穴を探している状況だ。
穴の一つと思われるのは、軍隊用の知能指数試験の結果を使っているところ。軍隊用の試験は一般の知能試験と違い、もう少しSATに近い形のものを使っている国が多い。知能試験であれば一桁の足し算とかも使うけれど、軍隊用の試験だと2桁の掛け算とかのように高度になる。文の読解も、軍隊用では、法律ではどう定義している、というような、学力試験に近いものが使われる傾向がある。
そんな穴を差し引いても面白い研究だね。
あと、これだけ面白そうな研究なのに、かなり多くの人が、統計用語を知らないためにこの論文を読むのを諦めてしまっている。もったいない。中級以上の統計に関しては しんりの手アメブロにてそのうちに解説をしていこう。例えばr、分散分析、非直線回帰分析など。
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元の論文:Meredith C. Frey and Douglas K. Detterman. (2004) Scholastic Assessment or g? The relationship between the scholstic assessment test and general cognitive ability. Psychological Science. 2004. Vol.15(6). 373-378.
検索キーワード:心理学、職業適性、scholastic achievement test、学力検査、学業成績達成テスト、全国標準テスト、Scholastic Aptitude Test、Scholastic Assessment Test、trend analysis, linear regression, non-linear regression, correlation, general intelligence g, IQ, Case Western Reserve University.

心理学は世の中のいたるところに使われている。その中でも、えっ、こんなことにも使われているの、という隠れた心理学で反応時間というのがある。
反応時間とは読んで字のごとく、刺激に対して、人が反応を返す時間だ。例えば、ウェブ上であなたは20歳以上ですか(Y/N)?という質問が刺激のひとつで、はい、と答える意味でキーボードのYキーを叩くまでが反応時間だ。
通常、2択の問題でYかNかを押すだけだと、そこから分かる情報は1ビット(YかNか)だけだと思われがちだが、反応するまでの時間が付加的な情報を送信している。普通ならば1秒で返ってくる返事が、3秒掛かっているとこの人は嘘を付いているのかな?とか、判断に迷うようなあいまいな答えなのかな、などを予測することができる。
この理論がおそらく使われているだろうウェブがここ。
人工知能研究所
名詞を思い浮かべて、質問に答えていくと、大抵は質問20回以内にその名詞を当てるというもの。これで「はい」「いいえ」などとクリックするのに、僕の勝手な予想では反応時間も測られて、考慮されていると思う。もしまだなら、考慮すれば正答率を上げられるだろう。
もう一つの反応時間がおそらく使われているであろうウェブはここ。
「潜在的な連想の試験」(the Implicit Association Test)
ここでは例えば、若い人、老人、良い、悪い、を個人個人がどのくらい関連させているかを調べられる。例えば「wonderful(素晴らしい)」は「良い」意味なので、「良い」のキー(IかE)を押す。これを「老人、素晴らしい」と表記された時と、「若い人、素晴らしい」と表記された時との反応時間の差を比べる。これにより人の偏見度などを調べている。
ま、心理学はこうやって隠れたところで、人の性格(偏見度とか)を診断したり、どのくらい迷った答えかを判断したり、そんな役に立っているんだよ。
ちなみに人工知能のほうでは「プランジャー」を当てられたのには僕の負けを認めるよ。あと、潜在的な連想の試験では、僕は、老人を悪いものだと思っている、との結果が出た。あまり認めたくない。
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関連記事:「反応時間」ダンカン・ルース(しんりの手アメブロ)
検索キーワード:心理学、反応時間、response time, reaction time,

先週、未婚の母は結婚できたとしてもかなり年上の相手になってしまうという記事を書いた。これってつまり子持ちは結婚する相手としての価値が下がるし、年齢が上がると結婚する相手としての価値が下がるので、釣り合うって訳だな。
そう考えると、年を取っても、若い人と結婚できる人ってそれだけ魅力的なんだろうな。最近だとビリー・ジョエルが30歳くらい年下のコ(22歳くらい)と結婚したよな。これは財力的な魅力か。ちなみにその時のビリー・ジョエルの実の娘は21歳くらいだった。これは娘としてはキツいな。
デミ・ムーア(写真)は40過ぎで子持ちなのにアシュトン・カッチャー(多分若い俳優ではもっとも人気が高い)と結婚したよな。デミ・ムーアは確かにかなりホットだもんな。
個人的に許せないのは谷村有美がマッキントッシュ社の日本社長と結婚したこと。あんなオヤジのどこが良いんだよ?というのが一ファンの気持ちなんだが、年齢をカバーするだけの何かがあるんでしょう。または谷村有美くらいの上昇志向女を扱えるのはあそこまで年と経験を積んでいないと無理だったのかな。
皆さん、お幸せに。
検索キーワード:ピアノを弾ける女、頭のいい女、ホットな女、金持ち男、ピアノ男、piano man, Billy Joel, Demi Moore, Ashton Kutcher,

精神的な腸過敏の医学的な名称は過敏性腸症候群(IBS)と言って、ストレスが下痢などを引き起こす状態が何年も続くことを言う。ある研究者が催眠療法を施したところ、成功率が70%と非常に高かったという。
この研究者は、過敏性腸症候群の患者250人に21時間の催眠療法を施した。催眠療法中に患者は、どうしたら消化器官の反応をコントロールできるかを学ぶ。その結果、70%が症状を改善できた。ただし、誰にでも効くわけではなかった。特に効果が現れたのは女性だった。
この結果はありえるな。催眠療法というのは精神的なものには効くとされている。そして、効く人にはとても効くが、効かない人には全く効かないと言われている。更に、女性にはより効きやすいとされている。なので今回の結果は催眠療法の概念に合致している。でも成功率70%は一般の催眠療法の結果よりもはるかに高いな。何をもって成功としたのかの規準を読んでみないと分からないけどね。
結果の有効性は吟味するまで分からないけど、患者の方にとっては症状が改善する望みがあるというのは良いね。
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元のニュース:Hypnotherapy an effective treatment for irritable bowel syndrome
検索キーワード:心理学、催眠、催眠療法、hypnosis, hypnotherapy, irritable bowel syndrome, 腸弱会、University of Manchester, Peter Whorwell,

患者が処方された薬を飲み続けるかは複数の要因が関係している。今回の研究では4つの要因を調べた。医者への信頼、薬の金額、患者の精神状態、年収がそれぞれ薬を飲む行動への影響があった。
912人の糖尿病の患者を調べた。彼らの大部分は年収が低く2万5千ドル以下(300万円以下)だった。
影響が大きかったのが医師への信頼と薬の金額の複合条件だった。つまり薬の代金が月に100ドル(1万円)を超える場合で、担当の医師を信頼しているかどうかの違いだ。信頼している患者は薬代が高くてもほぼ薬を飲み続け、たった11%が飲むのをやめた。対して、担当の医師を信頼していない患者は薬代が高いと30%もが薬を飲むのをやめてしまった。
影響が大きい他の複合条件は、薬代と精神状態だ。同じ薬代が高い条件でも、鬱と鬱でないのとでは、鬱の症候が出ている患者のほうが2倍もの確率で薬を飲むのをやめてしまった。
更に悪いことには、大部分(3分の2)の患者は薬代が高くてもその苦情を医師に言わずに黙って薬を飲むのをやめてしまう。
以上がニュースの概略。これは難しい問題だよね。まず、薬代って本当に高いよ。資本主義のシステムの中では薬代が高くなるのは当然だろう。国は資本主義を選ぶからには資本主義で必然的に生まれる問題を国が何かしらの形で援助をする必要があると思う。この点はそのうちに詳しく語りたい。
次に信頼関係も、やはり難しい。信頼関係って医師がちゃんとしていれば作られるものではなくて、患者との相互関係だ。今回の結果でも分かるように、医師がしっかりとしていたとしても患者が鬱だったらそれでその患者は薬を飲むのをやめてしまう可能性がぐんと高くなってしまう。
ま、医師の人にとってはつらいニュースかもしれないけれど、結局はできる範囲のことをするしかないよな。話しやすい雰囲気をかもし出す、対等に見えるように振舞う、担当医師以外の第二者(例えば看護婦)が患者の話を聞いてあげる、患者の財務状況を事前に聞いて対応する、などだろうか。
それから僕も医者からもらう薬って本当に効くのか怪しいなぁと思う時があるんで、薬開発時の統計結果を添付するなんて良いかもね。統計の効果量などを見れば、患者も納得して医師をより信頼するかも。
あと心理学の見地から僕が考えるのは、意思疎通がこれだけ多くの社会場面で問題になるのなら、学校の科目として教えてしまっても良いと思うよ、いっそのこと。悲しい現実だけどね。
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元のニュース:UMHS Press: Why don’t some patients take their medicines?
検索キーワード:心理学、意思決定、diabetes, depression, John Piette, University of Michigan, Archives of internal Medicine, 医療心理学、コミュニケーション、意思疎通、医師患者関係、統計エフェクト・サイズ、effect size,

未婚で子供を産んでしまった女性は、その後に結婚する可能性が低い上に、結婚できたとしてもかなり妥協した結婚相手になる、というニュース。
独身女性で、子持ちと子無しを比べると、子持ちの女性は30%も結婚に至る確率が少なかった。また仮に結婚できたとしても、その結婚相手は釣り合っていない相手で、年齢が明らかに高かったり、教育が劣っていた。
結果には納得。男として、コブ付きは敬遠するよな。進化心理学の人たちはこれを自分の遺伝子を受け継ぐものに100%の力を注ぎたいからと説明する。まぁそれも本当かもしれないけれど、子供を育てる楽しみは一から経験してこそ、その子に愛情をより注げると僕は思う。それに最初から扶養家族が一人付いてくるのもきついし。
社会学の研究ではこうやって現状の状況を確認するのが多いよね。昨日、紹介したニュースも現状の確認だったな。それだと結果に納得するだけで自分の生活にどう活用して良いのか分かりづらい。今回の結果を無理に活用しようとすれば、孕んでしまったら、結婚しておくべきだ、って感じだろうか。これだと未婚の母になっってしまった後での対応は全く分からない。
心理学はその点、生活に活用するにはどうするかを主眼に置いた研究が多い。社会心理学や地域心理学(コミュニティー心理学)なら、今回のデータを元に、未婚の母の中で釣り合った旦那にめぐり逢える人とめぐり逢えない人の違いはどんな要因か、なんてことを研究するだろう。例えばその結果で仮に、外交的で女友達との付き合いがよい人は立派な旦那がいる相関関係が強い、などの結果が出ればそれは自分の生活に活用しやすいだろう。社会学はその元になる土台のデータを研究してくれているので相互協力関係はもちろんあるけれど。
より良い社会を作るのに直接貢献できている、と素直に感じられる点で、僕は心理学が好きだ。僕が心理学を研究しているので偏見があるのかもしれない。社会学を勉強している人とちゃんと話し合ってみたいな。反論など匿名でもお待ちしています。
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元のニュース:Ohio State Unviersity: UNWED MOTHERS HAVE DIFFICULTY FINDING 'GOOD' HUSBANDS, STUDY FINDS
検索キーワード:心理学、social psychology, community psychology, sociology, unwed, single mom, evolutionary psychology, evolution, シングル・マム、できちゃった婚、できちゃった結婚、shotgun marriage, 強制結婚、妊娠結婚、片親、Zhenchao Qian,

社会科学の研究者と自然科学の研究者を比べると、社会科学のほうがより神を信じ、教会などの宗教的活動に参加していた。
自然科学とは物理学、化学、生物学などの物と物の反応を論理的に見る学問だ。それに対し、社会科学とは政治学、経済学、歴史学、教育学などの人と人の関係を見る学問だ。もちろん社会科学でも論理的な思考は大事だが、どちらかと言えば人がどう反応するかが要なので、人間味のスキルが大切な学問だ。ちなみに心理学は両方に跨っているが、どちらかと言えば社会科学よりだ。
1646人の大学教員を調べた。15ドルの謝礼を添付し、36の質問に答えてもらった。自然科学者の38%もが神を否定したのに対し、社会科学者は31%しか神を否定しなかった。
細かく見ると、自然科学の中でも目立ったのは生物学者で41%が神を否定した。これは納得。進化論と神が一致しない案だと考える人は多いもんな。それとは対照的に社会科学の中で目立ったのは政治学者で、27%しか神を否定しなかった。
ガリレオ・ガリレイは天文学者だったので自然科学者と括れる。彼の有名な言葉「それでも地球は回っている」に代表されるように、自然事象を研究すればするほど、従来神が整えていたとされる事象が自然科学の事象だと気付くのは当然だろう。ただそれが直接的に神を否定することに繋がる訳ではないと思うが。
研究の結果自体には驚かないけれど、この研究者がこの研究のために研究助成金を3千万円(28万ドル)も獲得したのが驚きだ。自然科学と社会科学で宗教心が多少違うのが分かったところでそれが世の中のなんの役に立つのだろうか?という疑問を覆すだけの説得力ある助成金願いを書いたに違いない。この研究者がどんな文章を書くのかすごい興味が沸いてきた。
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元のニュース:Natural scientists are less likely to believe in God than are social scientists
検索キーワード:Elaine Howard Ecklund, Rice university, Galileo Galilei And yet the earth still moves!

ビデオゲームをすることにより、手術の腕前が上がるかもしれないという実験報告。
腹腔鏡手術というのがあって、これは患者の腹に穴を開けてカメラと手術機器を腹の中に入れて、手術はカメラ映像を見ながら行う(上の画像)。つまりこの手術はテレビゲームに似通っている。
テレビゲームとこの手術の類似点を見つけたこの研究者は、テレビゲームをする事が手術の腕前を上げるのではないかと考えた。10人の大学生を集めた。彼らは腹腔鏡手術の経験は無く、テレビゲームの経験も少ない。5人ずつ2つの群であるAとBに分ける。2つの群とも腹腔鏡擬似手術(シミュレーター)を一週間の間隔を開けて2回行う。ただ一つの違いは群Bだけはその一週間の間、一日1時間テレビゲームをする。ゲームはジェームス・ボンド007:ゴールデン・アイだ。銃を向けたりする仕草は腹腔鏡手術に近いとも言えるね?

結果、ゲームをした群Bの方が2回目の手術でより進歩が見られた。更に、群Bの中でもゲームでうまくプレーした者の方が2回目の手術でもよりうまく手術ができ、その相関指数rは0.72と高かった。
ただし引き続き行われた実験で医学研修生を使った実験では必ずしもゲームが手術技術の向上には繋がらなかった。この研究者は今後、ビデオゲームの種類の違いで手術の腕前の上達に違いが出るかを見ていくという。
心理学って、こうやって人の訓練とかにも役立ってるんだよな。で、結果はある程度当然かなとも思うよ。どちらも目で見たものを手で表現するんだから似た作業だし。僕は基本的にはテレビゲームは人間を悪い方向に導く影響の方が強いと思っているけれど、こういう役立つ方法もあることをゲーム業界の人はもっと宣伝すればゲームへの非難が少なくて済むかもね。
あと患者との人付き合いとかの関係とかも興味あるな。手術担当医に「任せてください。ビデオゲームで鍛えてますから。」なんて言われたら固まるよ。
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元の論文:Sara L. Waxberg , Steven D. Schwaitzberg *, Caroline G.L. Cao. (2005) EFFECTS OF VIDEOGAME EXPERIENCE ON LAPAROSCOPIC SKILL ACQUISITION. HFES.
この論文は書き慣れてない人が書いているらしく、ところどころに幼稚な英語が滲み出ている(といってもネイティブの英語だと思うが)。しかしそれが逆に文を平易にして読みやすくしている。英語で論文を書く身としては、こういう例にも学ぶことがあるな、と思ったよ。
検索キーワード:心理学、訓練移行、認知心理学、hand-eye coordination, 視覚と手の協調運動、 training transfer,
画像の引用元:http://www.gfmer.ch/Medical_education_En/project_laparoscopy.htm

車を運転中に携帯電話で話すと事故を起こす確率が4倍あがる。これは携帯を手に持っていても、ハンズフリーで手に持たないでもほぼ同じ事故の危険確率だった。
西オーストラリアに住む特定の人450人にアンケートを行った。この特定のアンケート協力者は、車の所有者で、携帯の持ち主で、過去に車の事故を起こしたことのある人。このアンケートの方法がとても使いやすい理由は、携帯を使用すると通話履歴が分単位で残るので、車の事故と携帯の使用との関係を見つけやすいからだ。
この結果、携帯を使用していないときに比べて、携帯使用中は事故を起こす確率が4.1倍だった。細かく見ると、手に持つタイプの携帯では4.9倍も事故を起こしやすく、手に持たずに使えるタイプの携帯でも3.9倍だった。なので2者間は大差はないが、どちらも携帯を使わない場合に比べて事故を起こしやすかった。
現在、手に持つタイプの携帯電話だけを運転中に禁止している国や地域は多い。その地域は、EU(ヨーロッパ共同体)、オーストラリア、それと一部のアメリカやカナダの州。この実験結果は以前から出ている実験結果と一致するので、信頼性が高い。これらの地域は法律の書き直しを検討することになるだろう。
元のニュース:
University of Sydney "Hands-free car phones no safer"
関連する過去の記事:しんりの手(アメブロ)「車運転中の携帯電話は事故が4倍 その1」
検索キーワード:心理学、 認知心理学、車 運転手、携帯電話、hands-free mobile, driving, cell phone, accident, drivers,British Medical Journal, hand-held mobile phone, Graham Chalker, Australian Mobile Telecommunications Association, Suzanne McEvoy and colleagues, Mobile phones increase risk of having a road crash,

ハリケーン「カトリーナ」の被災者を助けるために精神的なケアができる人が求められている。
今日、アメリカン・レッド・クロスからうちの大学院に連絡が来た。心の健康を支えられる人が必要だ、と。人員が不足しているらしく、無資格の者でもとにかく助けてほしい。大学院生でも、心理学部在籍でない人でも精神的に被災者を助けられるボランティアが必要だ、とのこと。9・11のテロの時でもこんなに心理関係の人間が求められなかったのに。被災者の人数が膨大なためなのだろうけれど、本当にボランティアが不足しているんだろうな。
僕は金銭的に小額ながら寄付をさせてもらいました。
アメリカン・レッド・クロス
ボランティア、寄付などの情報

テレビを見る子供は体に良い食品と悪い食品の区別が付かなかった。これは子供が悪いと言うよりも、テレビ広告などが誤った印象を植え込んでいるようだ。
テレビのCMでは「ダイエット・コーク」や「ファット・フリー(脂肪無し)」などの言葉に好印象を持たせて何度も何度も視聴者に刷り込んでいる。こういった食品は実際には害を減らしているに過ぎない。しかし学の少ない者にとっては、これらは通常の食品よりも健康的な食品に聞こえるらしい。
子供達は健康的な食品(ほうれん草、レタス、オレンジ・ジュース)などよりも宣伝文句付きの食品(ダイエット・コーク、脂肪無しアイスクリーム)などの方をより健康的な食品だと評価してしまった。またこの誤認識はテレビを見ている子の方が強かった。
まさにアメリカの生活そのまま。子供とか広告とかそんな小さな問題じゃなく、アメリカ全体がこういう道を選んでるように見えるよ。見た目が良くなる食品、痩せれば健康じゃなくてもいい、でもおいしい味覚は味わいたい、そんなアメリカの生活がそのまま子供にまで影響している印象を受けるね。こんな極楽至上主義は世代毎に強まっていっていつかは破綻するのかな。そこに心理学がどうやって関わっていけるかとても興味のある話題だよ。
元のニュース:http://thestressoflife.com/tv_confuses_children_about_which.htm
検索キーワード:心理学 理解 広告 テレビ TV speech communication Kristen Harrison, University of Illinois at Urbana-Champaign, diet Coke fat-free

酒の消費を抑えるには、地域全体の酒の価格を上げることが一番効果的だという。
現在、先進国で飲まれている酒(アルコール全般)の量は明らかに多過ぎる、と言うのがこの記事の論調だ。少量の酒は社会的に認められているが、多くの人は社交的を通り越して、飲み過ぎているという。例えばアメリカでは一年間にアルコールの関わる交通事故で1万5千人が死亡している(2002年)。
そこである研究者はどうやったら酒量が減らせるかを調べた。この研究者は32通りの酒購入を抑止する方法を比較した。この32通りの方法は、例えば、酒の価格(税金)を上げること、学校で酒の害を教育すること、酒の広告の規制をすること、酒の販売時間を規制すること、酔払い運転の基準を厳しくすること、酒の販売店の数を減らすこと、あと記事には書いていないけれど酔払い運転の罰則を厳しくすること等もだろう。
その結果、酒の価格を上げることが最も酒の消費量を減らすのに効果を示した。そして政権にこれを具申した。しかし英国のトニー・ブレア政権はこれを実行することを拒否。その理由として、酒のニーズ(要求)はこういった手法で制御するには複雑すぎるためとした。この研究者たちは今後、別の手法で酒量を減らすことを模索することになる。
広告とか教育とかそういう心理的な攻め方では効果が薄く、結局は買えるほど安いかどうかという商業的なことになってしまうんだな。心理学を学んでいるものとしては寂しい。
さて、酒に悪い側面があるのは認めるけれど、飲む人全てが悪いわけではない。楽しい方向に酒を使える人もいる。なんで全面的に酒を否定したり、飲む人全員を対象とするような政策は受け入れにくそうだな。その点を考慮した提案にすれば、もう少し政権に受け入れられやすくなるかもね。
元の記事:New Scientist. 21 August 2004.
検索キーワード:心理学 消費者心理学 説得 酒 ドラッグ intemperate society policies consumers tony blair spillover effect alcohol

数千人規模の追跡調査の結果、体重を減らすことが裕福な暮らしに繋がるという傾向が見られたという。
肥満度指数BMI(ボディ・マス・インデックス)は標準が18.5~25。体重超過が25以上。肥満は30以上と言われている。この研究者が7300人を追跡調査したところ、劇的な体重減と資産増の密接な関係が見られたという。特にこの効果は白人女性に顕著だった。
劇的な体重の減少とはBMIにして5~10。つまり体重超過や肥満の人が標準体重になることを意味している。BMIが10ポイント下がることによって、白人女性では11,880㌦(およそ130万円)の資産が増加。白人男性で12,720㌦(およそ140万円)、黒人女性で4,480㌦(およそ50万円)。黒人男性にはこの傾向は見られなかった。また白人男性が資産増加額が一番高いが、相関関係の密接度は白人女性が一番高かったようだ。
またそれぞれの群において、資産が最高になるBMI値というのが見られた。白人女性で資産が最高になるのはBMIが20。白人男性で24。黒人女性も24。黒人男性で32だった。
尚、因果関係の方向はこの研究ではハッキリとはわからない。つまり痩せたから裕福になったのか、裕福になったから痩せたのかは不明。ただしこの研究者は前者、つまり痩せたから裕福になったのではないかと推察する理由を挙げている。
大筋では歓迎できる研究結果だな。肥満になってると稼げるべき資産を失っていて、標準体重に戻ることによって、資産を増やすことができる。ニュースには書かれていないが多分、女性の場合は痩せることにで、より資産のある男性を獲得し、女性の資産が上がるのだろう。
懸念されるのは、BMIだけを重視して体重だけを減らそうとする人が出るかもしれないこと。更にこれを助長しているのが、痩せた女を好意的に受け止める社会と男だろう。まずはその辺から変えていかないとな。僕に言わせれば、痩せて筋肉のない女は全く魅力的じゃない。筋肉がある女は体重があってもかなり魅力的だ。世の男はもっと健康的な体を欲っしていると表明しよう!
BMI計算機(例:身長1.78、体重85、→BMI26.8)
元のニュース:Ohio State Research News: DIETING LINKED TO INCREASED WEALTH, STUDY FINDS
検索キーワード:心理学、性格心理学、異常心理学、拒食症 anorexia nervosa 過食症、多食症、Bulimia 体型、理想、プロポーション、body mass index, Ohio State university Jay L. Zagorsky, Health and wealth: The late-20th century obesity epidemic in the U.S., journal economics and human biology, 男性の理想体型、女性の理想体型、white women men black women,

以前から音楽とその視聴者の行動の関係は研究されてきていた。今回の研究者が例に取っているものだと、まずはテンポ(音楽の速さ)。
遅い音楽(テンポ60-73)と速い音楽(テンポ93-110)での消費者の行動の変化が確認されている。遅い音楽だとスーパーマーケットの客はあまり店内を歩き回らなくなった。しかし買う量は増えた。
レストランでも、遅い音楽は客を長居させるものの、客単価の売上は伸びた。レストランでの遅い音楽は飲み物の売上も伸びたし、食べ物の売上も伸びた。
他に音量の実験だと、スーパーマーケットでの音楽の音量が大きかった場合、客は著しく短い時間しか買い物をしなかった。しかし買う量は音楽の音量が普通の時と同じだった。
こういった過去の心理学実験を踏まえて、今回の研究者は音楽の音量とバーの客の飲む量の関係を調べた。
大きな音量(88db)と小さな音量(72db)を比べた場合、大きな音量の時の方が飲む量が著しく多かった。大きな音量で一人平均3.7杯に対して、小さな音量で2.6杯の飲み物が消費された。この効果は男でも女でも都会でも田舎でも確認された。
この研究者はこの結果を覚醒仮説(arousal hypothesis)として説明している。つまり不快になる手前の強い刺激は人間をより活動的にさせ、消費意欲などを喚起する、とのこと。例えば速いテンポの音楽が一分間当たりの咀嚼回数を増やすように。
この結果は面白いね。こういう直接的に役に立つ研究は大好き。これはフランスでの実験だな。フランスは知らないけど、アメリカとかのバーでは立ってテーブルを囲んだり、店中を歩き回りながら知らない人と気軽に話すんで、音楽の音量が大きくても特に問題はないんだよね。日本では話し込む呑み人たちが多い気がするんで、音量が大きいと次回訪問に繋がらないかもね。
元の論文:Nicolas Gueguen, Le Guellec Helene & Celine Jacob (2004). Sound level of background music and alcohol consumption: An empirical evaluation. Perceptual and Motor Skills, 99, 34-38.
検索キーワード:心理学 音楽心理学 消費者心理学 ビジネス心理学 居酒屋 酔っぱらい 呑み 酒量 ビール BGM 背景音楽 店内音楽 サブリミナル 無意識 意識下 subliminal unconscious

肥満であること、または喫煙していることは年を取るのをより早めるという研究結果が発表された。
以前、テロメアという寿命を示唆する遺伝子の話を紹介した。この研究者はテロメアの長さと生活習慣を調べて、ある生活習慣がどのくらいテロメアの長さに影響を与えていたかをみた。
1122人のイギリスの女性(18歳~76歳)のうち約一割(120人)が肥満だった。彼女達のテロメアは短く、寿命に換算すると8.8年分短かった。喫煙者(203人)と過去に喫煙していた者は4.6年分短かった。つまり喫煙者は遺伝子的に4年以上も余計に年を取っていた。
興味深いけれど、ちょっと不親切なニュース(または研究)だな。もっと細かく伝えてくれれば良いのに。現在も喫煙している人と過去に喫煙していた人では違いは無いのか?
それはともかく、こういう数値がハッキリしたニュースは良いね。煙草は害があると言われてきていても、じゃあどうなるのかを説明しにくかった。数値で寿命が平均で4~5年縮むんだよ、と言えれば説得力が増すだろう。これで禁煙の効果も数値で出せれば、人をもっと禁煙の方向に導けるかと思う。
元のニュース:BBC News: Smoking and obesity 'age people'
研究者:Tim Spector (St Thomas' Hospital, London)
検索キーワード:心理学 双子 煙草 タバコ たばこ 染色体 twin telomere DNA smoker ex-smoker

その日に運動した分しかテレビの電源が入らない、そんな装置が開発された。
テレビの弊害はよく言われている。肥満になる、目が悪くなる、受身的な志向になる、勉強時間が減る、将来暴力的になる、などなど。しかし現実にテレビを見ないようにするのは難しいし、子供にテレビを見せないようにするのも難しい。
そこで開発されたのが万歩計連動テレビ電源。歩数を数える装置は靴の中敷に組み込まれていて、その歩数データをテレビ電源に送ることによりテレビを視聴できる。100歩で1分の視聴に値する。
女の子は一日12000歩、男子は15000歩を最低は歩くのが良いとされている。そしてテレビは一日2時間以内しか見るべきでないとされている。それら両方の基準を充たすべく設定された数値。100歩で1分。
コロンブスの卵的な発想だね。誰でも考えられそうな合併案。運動した分だけテレビが見れる。でも何故かいままでそんな商品は発売されてなかった。健康的な人が増えるのならこういう規制は大歓迎。ただし、これはデザイン科の生徒が作った装置で、それの効果を示す心理学的データなどはまだ取られていないし、今後も多分取られないだろう。
ところで何千歩ってどう発音しますか?1000Po(ポ),2000Po、3000Po、4000Ho,5000Po,6000Po,7000Ho,8000Po,9000Ho。なんで語尾が変わるんだろう?大抵はPoで良いのに4千だけはPoに違和感がある。それに7千と9千はHoの方が語呂が良い。ルールを見つけられない。くやしいな、こういう規則を見つけるのは得意なはずなんだけどな。
元のニュース:BBC News: Shoe kick-starts active lifestyle
検索キーワード: 心理学 肥満 obese obesity 運動 テレビ カウチ・ポテト

音楽は気分を落ち着けるのに役立つと言われているが、心臓手術の際の気持ちを鎮めるのにも役立ったと言う。
この研究者は100人の患者に対して、音楽が手術時の鎮静剤(麻酔)の量に変化を及ぼすかを調べた。医療の事はよく分からないけれど、少ない麻酔の量で感覚消失状態になれば、それはより落ち着いていたと言う事になるのだろう。
この実験によると、好きな音楽をヘッドホンで聴いていた時には麻酔の量が少なくてすんだ。手術室の音をじかに聴いていた時を基準にすると、ヘッドホンからホワイトノイズ(白色雑音:他の音を聴こえなくする効果がある、つまり手術室の緊張した音を聞こえなくする)を聞かせた時には麻酔の量は変わりが無かった。よって、好きな音楽を聴いたことが麻酔の量を減らしたのだろう。
こういう世の中に役立つ研究は良いね。目的もハッキリしているし。次はどんな種類の音楽が気持ちを鎮めるか。または手術以外のどんな用途で音楽が役立つか。例えば眠るのに最適の音楽は、なんてことが研究されると面白そうだな。
元のニュース:Science Daily: Study finds music helps surgery patients
研究者:Zeev Kain (Yale School of Medicine)
検索キーワード: 心理学 音楽心理学

アメリカでの喫煙率が2年連続で低下している。2001年に22.8%の大人が煙草を吸っていたが、2002年には22.5%に低下。更に2003年には21.6%にまで低下した。
嬉しいニュースだね。最近の喫煙率が減っている理由はいろいろある。喫煙の害の広告の成果、喫煙できる場所が少なくなっている、喫煙する人は好かれない(たしか心理学のデータが手元にあったような)、など多々の理由が効果を表しているのはとても歓迎できる。
喫煙以外にもこういった社会的な制限による体調管理というのは広がって良いと思う。例えばゲームやテレビの制限。肥満の過食の制限なども社会的にできる時代が来ないかな。
元のニュース:MediLexicon: Smoking among US adults down to 21.6 per cent, from 22.5 per cent